沈丁花


「あ、ここにあったのか。」
ハボックは住宅街を抜けたところにあった公園の中を、香りに引かれるままたどり着いた場所にあった花を見て
にっこりと笑った。陽が落ちて夕闇に包まれる中、色形よりも香りでその沈丁花の花は存在を主張している。
「ホント、遠くでもいい香りがするよなぁ。」
ハボックはそう言うと小さな花が寄り集まった枝先に顔を寄せた。沈丁花の甘い香りが体の中まで染み込む
ようで、ハボックは目を閉じる。その途端、ロイの姿が目蓋に浮んで、ハボックはうっすらと微笑んだ。
「大佐も、遠くからでも香るよな…」
たとえロイが離れた所にいても、ハボックにはロイの香りが判る。まさしく犬だと笑われそうだがそれは嗅覚に
くるものではなくて、心と体の奥底を、脳髄を揺さぶるものだ。遠くからでも感じることの出来るそれは、側に
寄れば尚一層ハボックの意識と体を縛りハボックを内側から蕩かしていく。その腕に封じ込まれればハボック
にはもう抗う術さえなくなってしまうのだ。
「…いい香り…」
そう呟いてハボックが沈丁花の香りを胸いっぱいに吸い込んだ時、その空色の瞳が僅かに見開かれた。
そうしてゆっくりと振り向くと幸せそうに微笑む。
「たいさ。」
木の陰から現れた黒髪の男は不敵な笑みを浮かべてハボックへと近づいてきた。
「こんな所にいたのか、ハボック。」
そう言うとハボックのすぐ後ろにある沈丁花の花に触れる。
「いい香りだな。」
「たいさもね。」
咄嗟にそう返してしまってハボックは慌てて口を噤んだ。そんなハボックの顎を掴むとロイは空色の瞳を覗き
込む。
「私が?コロンの香りか?」
「え…や、そうじゃなく…。」
目を逸らすハボックの顎をぐっと掴むとロイはハボックと視線を合わせた。
「ハボック…?」
低い声にぞくりと何かが背筋を這い上がる。ハボックはゆっくりと瞬くと答えた。
「コロンじゃなくて…アンタの香りっスよ…?」
呟くような声にロイは微かに笑う。
「シたいのか?」
「なっ…んなこと、言ってないじゃないっスかっ」
ハボックは顎を掴むロイの手を振り払うと数歩後ずさった。だが、伸びてきたロイの手に腕を掴まれると簡単に
引き戻されてしまう。
「たいさっ」
目尻を染めて詰るような声を上げるハボックにロイはうっとりと笑うと言った。
「お前が欲情するとな、甘い香りがするんだ。」
「なんスか、ソレっ」
「この花のような濃い甘い香りがな…。」
そう言ってロイはハボックの首筋をねっとりと舐め上げる。
「な、に言って…っ」
びくりと震える体を抱きしめてロイはハボックの耳の中へ舌を差し入れた。くちゅりと耳の中で響く音に、ハボック
はきゅっと唇を噛み締める。ロイの手がハボックの中心を服の上からするりと撫で上げ、ハボックは喉を仰け
反らせて甘い吐息を零した。
「あっ…あ…っ」
震える指で腕に縋りつくハボックにロイは囁く。
「シテほしいだろ…?」
「アンタ、ここどこだと思って…っ」
いくら日が落ちて薄暗いとは言え住宅街の公園の中だ。いつ誰が来るかも判らないところで煽ってくるロイを
ハボックは必死に押し返した。
「あ、煽んないでっ」
股間を這い回る手から逃れようとハボックは必死に身を捩る。そんなハボックを面白がるように見つめていた
ロイはハボックの耳元で囁いた。
「煽っているのはお前の方だろう、こんな甘い香りをさせて…」
「花の匂いでしょっ!」
「お前の香りだ。」
囁きとともに重なってくる唇にハボックはロイの襟元を握り締めた。
「ん…んふぅ…ふ…」
ぴちゃりと音がして舌が絡み合う。気がついたときにはハボックは地面に散った沈丁花の花びらの上に
横たわっていた。シャツを捲くり上げ、ロイはハボックの乳首に歯を立てる。
「あぅっ」
ぴくんと震えて仰け反るハボックの胸をロイは舌と指を使ってくりくりとこね回した。
「あ、やっ、たいさぁ…」
必死にロイの手を押さえようとして、だが力のないハボックの手はむしろ誘うように添えられているだけだった。
「や、だっ…こんなとこで…っ」
「すぐ何も判らなくしてやる…」
「バカ言って…あうっ」
いつの間にかズボンの中に入り込んだロイの手がハボック自身をきゅっと締め上げる。ハボックは熱い吐息
の零れる口元に手のひらを当てると必死に声を飲み込んだ。
「ん…くっ…くぅっ…」
くちくちと扱きあげられ零れる蜜を自身に擦りこまれて、ハボックの唇から甘い喘ぎが零れる。ズボンも下着
も取り払われ、大きく広げられた脚の間に熱く息づく自身を曝されて、ハボックはふるふると首を振った。
ロイの指が零れる蜜とともに奥へと差し込まれ、ハボックは体の中をぐちゅぐちゅとかき回されてそこから
湧き上がる快感に腰を揺らめかせる。だがロイの指は入り口の部分をかき乱すばかりで、それ以上の刺激
を与えてはくれなかった。
「たいさ…っ」
「なんだ…?」
見上げればうっすらと微笑んでロイの黒い瞳が見下ろしている。情欲に色濃く濡れた瞳をしていながらそれ以上
何もせずに自分を翻弄する男に、ハボックは唇を噛み締めると自分に埋め込まれたロイの指を強引に引き抜いた。
「んんっ…んあっ」
引き抜く時に入り口を擦られて、ハボックは甘い悲鳴を上げる。だが、ハボックはそのままロイを睨みあげると
片手で中心を扱きながらもう一方の手でぐちぐちと蕾をかき回した。
「あっ…んんんっ…んふ…っ」
自分に組み敷かれながら勝手に事を進めようとするハボックに、ロイは苦笑するとハボックの両手を引き剥がし
両手首を掴んで頭上に縫いとめる。
「やっ…はなせ、よっ」
「行儀が悪いぞ、ハボック…」
そう言って口付けるとぴちゃぴちゃと舌を絡ませた。組み敷いたハボック自身から香る甘い匂いと、2人の下で
香る沈丁花の甘ったるい香りが一緒になってロイの心を酩酊させていく。ロイはぐいとハボックの体を引き
起こすと地面に座り込んだ自分の上にハボックを跨らせ、下から一気に貫いた。
「アッアア―――――ッッ!!」
体を仰け反らせて逃れようとするハボックを深く穿ち、縫いとめてしまう。ハボックの頭に手を添えるとぐっと
引き寄せ唇を合わせた。
「んふっ…ぅんっ…はふ…」
ぐちゃぐちゃと下からきつく突き上げつつ、舌をきつく絡めあう。お互いの匂いと沈丁花の香りだけが官能を支配
する中、2人は何もかも忘れて互いを貪っていった。


2007/3/24

沈丁花って見えなくても凄くいい匂いがしますよね。とっても好きな花です。母曰く「お腹にいた頃にいつも沈丁花を見に行ってたからかしらね」
と言うことなのですが、生まれる前の記憶?匂いに関してなら結構ソレもありかも、ですね。秋企画でも香りネタをやったにもかかわらず、
性懲りもなくまたヤッてしまいました(汗)また、外でシてるし、この2人はっ!ともあれ、春はたくさん花がありますが、沈丁花、ダイスキです〜v