golden leaves
「大佐、散歩行きません?」
ソファーに寝そべって本を読んでいたらハボックがそう言った。言った言葉こそ疑問形だが二人分の上着を持っている
あたり、ハボックの中で散歩に行くことは、もう決定事項らしい。
久しぶりに二人そろっての休日、それなのに朝から掃除だの洗濯だの慌しく動き回ってちっともかまってくれないじゃ
ないかと、ちょっと面白くないと思っていたら、この為に朝から急いでいたのだと判って、少し嬉しくなった。でも、それを
そのままハボックに伝えるのもシャクなので、わざとぐずってみせる。
「散歩なんてめんどくさい。」
そう言ってハボックに背を向けた。ハボックが苦笑する気配がして上着を置くと近づいてくる。テーブルを回って後2歩
で肩に手が届くから。
「ほら、そんなジジくさいこと言ってないで。」
ハボックの手が自分の肩を掴み、振り向かせた。視線をあげれば綺麗な空色の瞳が優しく笑って見下ろしていた。
「いいとこ見つけたんスよ。ね?いきましょう。」
吸い込まれそうだとじっと目を見つめたまま動かない自分の体に手を回すと「よっ」と軽い掛け声と共に体を起こす。
起き上がった拍子に見えなくなった綺麗な空色を探して、ソファーに腰掛けたままハボックを見上げた。
「たいさ…」
そう言って手を差し出してくるから仕方なくその手をとる。そうすれば思いがけず強く引っ張られてハボックの腕の中に
飛び込んでしまった。あっと思う間もなく顎を掬い取られ唇を塞がれる。
「ん…っ」
からかう様に口中を弄って、ハボックは唇を離した。さっきより僅かに色の濃くなった瞳が見つめてくる。ずくん、と体の
中で何かが蠢いた気がしたがハボックに体を放されて、それが何かを確認することは出来なかった。
「もう、そんな顔しないでくださいよ。」
ハボックはそう言うと慌てて上着を拾い上げると自分を促した。
「さ、行きましょう。」
そう言って部屋を出て行くハボックの後について外へと出かけた。
ハボックが肩にかけてくれた上着を腕を通さずに引っ掛けまま、ハボックとならんで道を歩く。青い空は高く秋の雲が
ふわふわと浮んでいた。
「いい天気だな…」
改めて気づいてそう呟けば途端にハボックが自慢げに答えた。
「でしょでしょ、本なんて読んでたら勿体無いっスよ。」
「何を偉そうに…天気がいいのはお前のせいじゃないだろう。」
意地悪くそういえばハボックが笑った。
暫くぶらぶらと歩いていくとハボックが突然口を開く。
「大佐、こっち。」
そう言って、当たり前のように手をとるから、振り払うことも出来ずにハボックに手を引かれるまま歩き続けた。絡む
指先から伝わる体温のせいで頬が熱くなるような気がして、俯きながら歩く自分にハボックが話しかける。
「ほら、大佐、見て。」
言われて顔を上げれば目の前に広がるのは一面の金色。枝を飾る葉も、地面に降り積もった落ち葉も、全てが金色
に輝いて、青い空へと溶け込んでいた。
「すごい…」
思わず呟いて、ハボックから離れて歩く。かさりと乾いた音がして足元の金色が砕けた。
「たいさっ」
呼ぶ声に振り向くとハボックが両手いっぱいに抱えた落ち葉をこちらにむけてぱあっと放り投げる。
「うわっ」
たちまち金色の渦に巻き込まれて視界が塞がれた。ふと目を上げればその渦の中にハボックが消えてしまう気がして。
考える間もなく駆け出すと、ハボックに抱きついていた。
「わわっ」
不意をつかれたハボックが二人分の体重を支えきれずに後ろに倒れこむ。ざあっと金色の波が巻き起こって、二人の
体が落ち葉に埋もれた。
「どうしたんスか、たいさ?」
抱きついてくる腕を解かずに、ハボックの胸に顔を摺り寄せる自分の黒い髪を、ハボックは長い指でゆっくりと撫でて
くれる。
「なんでもない…。」
そう言って目を閉じれば安心する香りに混じってハボックの鼓動が聞こえた。
「あったかいな。」
陽の温もりを吸った落ち葉は温かく、寄り添うハボックの腕の中は優しい温もりに満ちている。ハボックに回した腕に
微かに力を込めれば優しく抱き返してくれるそれが嬉しくて。それ以上何も言わずに金色の褥に静かに身を任せた。
2006/9/7
紅葉っていいですよね。赤いのやら黄色いのやら、青空に映えて見てると幸せになるっていうか…。
秋企画テーマ「落ち葉」はハボロイ、ロイハボどっちもロイ→ハボ風味でお届け。「いっつもそうじゃん」って言われそうですが(苦笑)でも最近ハボへの愛を再認識しちゃったものでvvv