first anniversary  Roy×Havoc


「たいさ、あの、明後日のことなんスけど…」
執務室で書類に取り組むロイにコーヒーを差し出しながら、ハボックは言いにくそうに口を開く。ロイは書いていた
ペンを置くと愛しそうにハボックを見上げて答えた。
「ああ、明後日な。その日は2人でゆっくり過ごそう。」
そう言ってゆったりと笑うロイにハボックはウロウロと視線を彷徨わせる。だが、いい加減黙っているわけにも
いかず、ハボックは言いにくそうにあーだのうーだの言うと、ようやく口を開いた。
「オレ、その日、小隊のニール・アンダーソンの結婚式に行ってきますんで…。」
にこにこしてハボックの言うことを聞いていたロイは、ハボックの言ったことがすぐには理解できない。ようやく
ハボックの言葉が意味を成して脳みそにたどり着いた途端、ロイはガタンと椅子を蹴立てて立ち上がると
バンッと机に両手をついた。
「ちょっと待てっ!結婚式?!なんだソレはっ?!」
「仕方ないっしょ!オレに送ったはずの招待状、なんかの手違いで届いてなかったんスからっ!」
「お前、その日が何の日か判っていて言ってるんだろうな。」
「そりゃ…。」
両手を机について身を乗り出すようにして睨みつけてくるロイからハボックは視線を逸らしてもごもごと答える。
その日は2人がこうして付き合うようになってちょうど1年目となる節目の日だった。何の日か判っているも何も
ロイはひと月ほど前から記念日だと浮かれてカレンダーに印をつけ、しっかり2人とも休みになるようなシフトを
組んでいたのだ。そんな上司の姿を目の当たりにして忘れるも何もあったもんじゃない。ちなみにその記念日の
前の日は早番、翌日は遅番という念の入れようになっていることは言うまでもない。
「判っていてお前はその日、結婚式なんぞに行くって言うのか。」
「だってオレの隊のヤツだし、ソイツに一生に一度のことだからどうしても来てくれって言われたら断れないでしょうが。」
「付き合い始めて1周年記念日だって一生に一度しかないぞ。」
「そりゃそうっスけど…。」
ロイは困り果てるハボックにずいと顔を近づけると言った。
「今すぐ断って来い!」
「たいさっ」
「私のことが好きなら断ってくるんだ。」
「たいさ、ソレ、汚いっスよっ!」
目を細めて見上げてくるロイにハボックは一つため息をつくと言う。
「結婚式はガーデンパーティ式で2時から5時までの3時間です。終わったらすぐ帰ってきますから。」
たいさ?とほんの少し首を傾げて強請るように言われれば、つい頷きたくなってしまうのは惚れた弱みだろうか。
大体こんなデカイ男を可愛いと思ってしまうあたりで終わっているような気がする。ロイは目を伏せてため息を
つくとドサリと椅子に腰を下ろした。
「ホントにすぐ帰ってくるんだろうな。」
「はい、絶対。」
ロイの言葉にぱあっと顔を明るくするハボックに、ロイは血液の流れが速くなったように錯覚する。ちょいちょいと
指でハボックを呼びながらロイは言った。
「約束を。」
うっすらと微笑んでそう言うロイの意図を察してハボックは少し紅くなったが、それでも机を回るとロイの側に
立つ。椅子の背に手を乗せるとロイの顔に自分のソレを近づけていった。チュッと音を立てて合わせた唇を
ハボックが離そうとした時、ロイの手がするりと伸びてハボックの頭を引き寄せた。
「んっ?」
さっきは軽く合わされた唇が今度は深く交わる。ぐいと腰を引かれてハボックは堪らずロイの膝の上に乗り上げて
しまった。
「んっ…んふっ…ぅん」
含みきれない唾液がハボックの顎を伝って落ちていく。気がつけばロイの手がハボックのズボンの中へと忍び
込んでいた。
「んっんん―――っっ!!」
這い回る不埒な手に抗議してハボックがロイの背を拳で叩く。だがそんな行為はただ、ロイの熱を煽るだけだった。
「やっ、やだっ、たいさっ」
ようやく唇を離すと、ハボックはロイの手首を掴んでズボンの中から引き出そうとする。だが中心に纏わりついて
くる指にともすれば力がぬけてしまう手は、目的を果たすことが出来なかった。
「たいさっ」
「もうぬるぬるだな。」
くくっと笑いながらそう囁かれてハボックの顔が真っ赤に染まる。
「こ、のっ…エロオヤジっっ」
そう憎まれ口を叩けば先端をぐにぐにとこね回され、ハボックはロイの肩に顔を寄せると荒い息を零した。
「腰をあげて。」
囁く声にロイが次にどうしたいのかに気づいて、ハボックは慌てて執務室の扉を見た。とりあえず閉じられている
それは、だが鍵がかかっているわけでもなく誰かが入ってこようとすれば難なく入れてしまう。ふるふると首を
振るハボックにロイはにんまりと笑った。
「だがこのままではいられないだろう?」
そう言うと同時にキュッと握りこまれた自身は、既に固くそそり立っていてどうにもならないところまで来ている。
「誰のせい…っ」
「私だな。」
臆面もなくそう言ってのけるロイをハボックは睨みつけた。
「だから責任をとって面倒を見てやろうと言ってるんだろう。」
「…サイテー。」
ぼそりと呟くハボックに楽しそうに笑うとロイは可愛い恋人の名を呼ぶ。ハボックはどうしたらよいかオロオロと
視線を彷徨わせていたが、やがて唇を噛み締めると腰を上げた。ロイにされるがままに片脚だけズボンから
引き抜くと、ロイに背を預ける形で座らされ脚を大きく開かれる。執務室の扉からは机を挟んでいる為すぐには
見えないが、ロイの脚の上に座ったこの体勢を言い訳する術などハボックには思いつかなかった。
ロイはハンカチを取り出すとそそり立つハボック自身を包み込み、ゆっくりと扱き出す。
「んっ…んく…っ」
ハボックは零れそうになる声を軍服の袖を口に押し当てて必死に耐えている。涙のにじむ空色の瞳を肩越し
に覗き込んで、ロイはうっとりと笑った。ハボックの押し殺した喘ぎ声とくちゅくちゅという淫猥な水音が明るい
午後の光が満ちている執務室に流れている。ハボックは羞恥と誰かが入ってくるかも知れないという恐怖に
身を硬くしながらも異様に興奮している自分に気づいていた。自身に纏わりつくロイの指をいつもよりはっきりと
感じてしまう。瞬く間に登りつめていく体をどうすることも出来ずに、ハボックはびくびくと体を震わせた。
「んっんんんっっ」
どくんと、ハンカチの中に熱を吐き出して、ハボックははあはあと荒い息を零す。ロイは背後からハボックの
顔を強引に振り向かせるとその唇に口付けた。散々に口内を嬲って唇を離せば、ハボックはくたりとロイに
寄りかかってくる。
「可愛いな、お前は。」
そう耳元に囁けば、ハボックは悔しそうに目元を染めてロイを睨んだのだった。

「まったくもう…どうしてあの人はああなんだか。」
ハボックは書き上げた書類を総務に提出すると近くの喫煙所のソファーにどさりと腰を下ろした。結局誰も
入っては来なかったが偶然運がよかっただけで次回もそうだとは限らない。
「つか、次回なんてあってたまるかっ!」
ハボックはとんでもないことが頭を過ぎってしまったことで一人紅くなると、煙草に火をつけスパスパと吸い出した。
そこへドカドカと足音がしたかと思うと、小隊のニール・アンダーソンが顔を出す。
「隊長っ」
「あ、ニール。」
煙草をあげて答えるハボックにアンダーソンが言った。
「あの、明後日なんですけど、大丈夫そうっすか?」
「ああ、大丈夫。ちゃんとオッケーとったから。」
出席させてもらうよ、とにっこり笑うハボックから漂うそこはかとない色気に、アンダーソンはどぎまぎして
視線をそらせる。
(俺、結婚なんて早まったかも…)
目の前の部下がそんなことを考えているなどと露ほども思わず、ハボックは煙草を灰皿に押し付けると立ち
上がった。
「じゃ、明後日な。」
ポンと肩を叩いて司令室へと去っていくハボックの背を見送りながら、やっぱり結婚を取りやめたいと本気で
考えてしまうアンダーソンだった。

「たいさ〜、じゃ、行ってきますね。」
なるべく早く帰ってきますから、と言ってリビングから出て行こうとするハボックをロイは呼び止める。
なに、と小首を傾げて聞いてくるハボックにどぎまぎしながらロイは手を伸ばすとハボックのタイに手をかけた。
きちんと整えてやると少し体を離してハボックの姿を見る。
「よし。カッコいいぞ。」
そう言われて照れたように笑ったハボックはロイの見立てたスーツに身を包み、お世辞抜きで本当にカッコ
よかった。
「浮気するなよ。」
「しませんよ。」
不満そうに尖らせた唇にチュッとキスをするとロイはハボックを送り出してやる。ハボックが出かけてしまうと
ロイはソファーに腰を下ろしてハボックが出掛けに淹れてくれたコーヒーに口をつけた。
本当なら昨夜はハボックを一晩中放さずに過ごそうと思っていた。だが。
『明日ガーデンパーティで立ってられなくなったら困るでしょっ』
ハボックはそう言って指1本触れさせてはくれなかったのだ。
『一度とか言ったって、絶対一度で終わんないんだから、今夜は絶対ダメです。』
などと言うから、
『一度じゃなくて何度でもしてほしいと期待していると取っていいんだな。』
と言えば、真っ赤になったハボックにしたたかに殴られた。
「まったく、アイツは私をなんだと思っているんだ。」
口より先に拳で語る恋人に、それでも死ぬ程惚れているロイは照れて真っ赤になったハボックを思い出して
くすくすと笑う。昨夜は体で語り合えなかった分、たくさん話をした。それはもう、今までにこんなに話をした
だろうかと言うほどたくさん。幼い時の話や、軍に入ってからの話。それから、いつから相手を好きになったか。
ハボックは絶対自分が先だと言って譲らなかったが、鈍感なハボックがいつからそうとはっきり意識してロイを
好きだったかと言えば、実はごく最近なのではないかとさえロイは思っていた。もっともいつからなんてことより
今現在が大切だと思っているロイは、ムキになるハボックの言葉を敢えて否定しようとはしなかったが。
「早く帰って来い、ハボック。」
ロイはハボックのコーヒーの香りを胸いっぱいに吸い込みながら、うっとりと笑ってそう囁いたのだった。

「おめでとう、ニール。」
ハボックは白いタキシードに身を包んだアンダーソンににっこり笑うとそう言った。ハボックより頭半分高い
アンダーソンの横に立つほっそりとした女性に目をやるとニールを促す。
「隊長、キャシーです。俺の上司で小隊長をしてるジャン・ハボック少尉だ。」
お互いを紹介されて、ハボックは手を差し出すと微笑みかけた。
「ニールはいいヤツでしょ?」
そう言えばキャシーと紹介された女性は嬉しそうに頷く。楽しそうに話を始める二人をアンダーソンが複雑な
表情で見下ろしている事に、ハボックは全く気がつかなかった。

滞りなく式が終わり、新しく夫婦となった二人を祝う為に集まった人々が楽しそうに言葉を交わすそのさざめき
の中で、ハボックも顔見知りの連中と楽しく話しこんでいた。温かい祝福の波はハボックをも包み込み、
自分とロイのことをも祝福してくれているような錯覚に陥る。
(ニールには悪いけど、オレ達のことも祝ってもらってると思っちゃおう。)
ハボックは密かにそう思って「ふふ」と小さく笑った。
「隊長、なんだか楽しそうですね。」
一緒にいた小隊の部下にそう言われてハボックは答える。
「結婚式だからな。」
「隊長はまだ結婚されないんですか?」
他の部下にそう言うのにハボックは笑いながら首を傾げた。
「いいんだよ、隊長は結婚なんてしなくてっ」
「いや、そうだけどさぁ。」
言い合う二人を面白そうに見ていたハボックは背後からかかった声に振り返る。
「ニール。」
そこにはさっき人生最高の時を迎えたはずの部下が立っていた。
「どうした?キャシーは?」
「隊長、パーティが終わったら話したいことがあるんで、帰らないで待っていてもらえませんか?」
「え?でも…」
ロイにはパーティが終わったらすぐ帰ると言ってある。それにハボックも一刻も早くロイに会いたかった。
「少しでいいんですから。」
必死に言い募る今日の主役に、無下に断ることも出来ずハボックは仕方なしに頷く。
「ちょっとだけなら。」
そう答えたハボックにアンダーソンはホッとしたように笑うと、じゃあ後でと戻っていった。

「暇だな。」
ロイは読んでいた本を閉じると壁の時計を見上げた。針はあと20分ほどで5時になるところだ。ロイは暫く時計
の盤面を見つめていたが本をテーブルに置くと立ち上がる。
「こうしていてもつまらないから迎えにでも行くか。」
パーティ会場となっている場所までは徒歩で15分程度だ。ロイはそうと決めると出かけるべく上着を持って
玄関へと行きそろそろ陽が傾き始めている外へと出かけていった。

パーティがお開きになって三々五々帰っていく人の波から少し外れて、ハボックはアンダーソンを待っていた。
「隊長、この後、飲みに行こうって言ってるんですけど、良かったら一緒にどうですか?」
そう言って部下達が誘いに来たがハボックは緩く首を振ると答えた。
「ごめん、ニールがちょっと話がしたいって言うし、その後もすぐ帰らなきゃだから。」
悪いな、と手を振るハボックに部下達もそれ以上は言わずに帰っていく。ハボックはそれを見送ってだんだん
夕方の気配が色濃くなる空を見上げてため息をついた。
「なんだって言うんだろう、ニールのヤツ。」
正直、こんな所で時間を潰してなどいないでさっさと帰りたい。ロイだってきっと苛々しながら待っているだろう、
ハボックはそう思ってやはり帰るとアンダーソンに告げようと足を踏み出した。その時。
「隊長。」
「ニール。」
背後からかかった声にハボックは振り返る。
「ニール、ごめん。やっぱりオレ、急いで帰らないとだから。」
また今度に、と言うハボックの腕をアンダーソンはガッチリと掴んだ。
「時間取らせませんから、こっちへ。」
そう言ってぐいぐいと引っ張られ、ハボックは仕方なしについていく。パーティ会場から少し中へ入った個室まで
来るとハボックはアンダーソンの手を振りほどいた。
「キャシーは?いいのか、花嫁を放っておいて。」
心配そうに言うハボックにアンダーソンは一つ瞬きすると答える。
「そうですね、ちょっと断ってきます。その間、これでも飲んでいて下さい。」
アンダーソンはそう言うと綺麗な黄金色の液体の入ったグラスをハボックに手渡した。
「これは?」
「カクテルですよ。お祝いに貰ったんです。美味いんで飲んでみてください。」
そう言って部屋を出て行くアンダーソンを見送ってハボックはグラスに視線を戻す。クンと匂いを嗅げば甘い香り
が鼻腔をくすぐった。
「お祝いの席で飲む酒なのかな。」
ハボックはそう呟いてグラスに口をつける。
「あまい…。」
口当たりの良いそれに、ハボックは思わず、くくっと飲み干してしまった。
「うわ、なんか甘々の新婚さん用カクテルってカンジ。」
ハボックはそう言うと空になったグラスを近くのテーブルに置く。そうして手持ち無沙汰のままソファーにドサリと
座り込むとアンダーソンが戻ってくるのを待った。
「遅いな、何やってるんだろう…。」
ハボックはそう独りごつと時計を見ようと腕をあげようとする。その時。
「あ、れ…?」
思ったように手足が動かない。鉛のように重い自分の手足を不思議に思って、それでも何とか立ち上がろうと
した時、カチャリと音がしてアンダーソンが戻ってきた。ソファーに力なく座り込むハボックを見て、ゆっくりと
近づいてくるとその頬に手を添える。
「ニール…。体が、重くて…」
思い通りに体を動かせないことを訴えようとするハボックにアンダーソンは囁きかけた。
「隊長、一度でいいんです。俺のものになって…。」
「…え?」
「一度隊長を抱いたら、後はちゃんとキャシーと幸せになります。俺に思い出くださいっ」
そう言ってぎゅっと抱きしめるとアンダーソンはハボックの上着に手をかける。目の前の男が一体何をしようと
しているのかようやく気がついて、ハボックは必死に身を捩ろうとした。だが、重い体は言うことを聞いてくれず
瞬く間に上着を脱がされシャツを肌蹴られてしまう。
「や、だ…っ、ニール、やめ…っ」
弱々しく首をふるハボックの様子にかあっと頭に血が上ったアンダーソンは、もう矢も楯もたまらず曝け出された
ハボックの胸の飾りにむしゃぶりついていった。

次々とパーティ会場から出てくる人の波の中に求める金色が見当たらない事に、ロイは苛々と足を踏み鳴らした。
「何をやってるんだ、アイツは。」
終わったらすぐ帰ると言っていたのに一向に出てくる気配がないではないか、ロイが睨むように人波を見つめて
いると、見知った顔があるのに気づいて急いでその側へと寄っていく。
「おい。」
そう声をかければハボックの小隊の部下達がロイに気がついた。
「マスタング大佐っ!」
慌てて敬礼する彼らに手を振ってやめさせると、ロイは早口に聞く。
「ハボックは一緒じゃないのか?」
「はあ、それがニールに話があるって言われたとかでまだ中に残ってる筈です。」
「話?なんの?」
「ちょっとそこまでは…。」
なあ、と頷きあう部下達に礼を言うと、ロイはパーティ会場へと入っていった。もう殆んど人の残っていないそこ
には求める姿がないのを見て取ると、ロイはどんどん中へと入っていく。
「今日のパーティの主役が一体何の話があるというんだ。」
ロイは眉間に皺を寄せてそう呟くときょろきょろとあたりを見回した。意味もなくこみ上げてくる不安に探す足取り
も早くなっていく。
「ハボックっ?」
声を張り上げたその時、かすかに聞こえた悲鳴にロイはハッとして振り向いた。
「ハボックっ!どこだっ?!」
その声に答えるようにハボックの叫びがロイの耳に飛び込んでくる。
「たいさぁっっ!」
ロイはあたりを見回すと悲鳴が聞こえた方へと駆け出していった。

生暖かい男の舌に乳首を舐めまわされて、ハボックは何とか逃れようと力の入らない体を捩った。だがろくな
抵抗にもならず、いい様に嬲られてしまう。ロイ以外の男に触れられる嫌悪感にハボックが肌を粟立てた時、
ハボックの耳にロイの声が聞こえた。どうしてここに、と思うより早く、ハボックは必死に声を張り上げる。
「たいさぁっっ!」
そう叫ぶと同時に部屋の外から荒々しい足音が聞こえたと思うと、ドンッと音がして部屋のドアが吹き飛んだ。
「なっ?!」
突然の事に驚いて顔を上げたアンダーソンは、怒りのオーラを立ち上らせたロイを目の当たりにして凍り付いて
しまう。ロイはハボックに圧し掛かったまま身動きの出来ないアンダーソンの襟首を掴んで立ち上がらせると
思い切り殴りつけた。ダンッと凄まじい音と共に床に叩きつけられて呻くアンダーソンを見下ろして、ロイは
冷たい声で言った。
「殺されないだけありがたいと思え。」
そう言うとしどけなくソファーに横たわるハボックへと近づいていく。
「ハボック。」
ロイの声に引き瞑っていた瞳を開けたハボックは、ロイの姿を見てぽろりと涙を零した。
「たいさ…っ」
弱々しく差し伸べられる腕にロイはハボックをぎゅっと抱きしめると零れる涙を唇で拭う。肌蹴られた服を
整えてやると、ロイはハボックの体を抱き上げた。そうしてまだ起き上がることの出来ないアンダーソンには
目もくれずに部屋を出て行ったのだった。

ロイはハボックを家につれて帰ってくるとそのまま2階へと上がっていく。寝室に入るとハボックの体をそっと
ベッドに横たえ、キッチンからグラスに水を入れて持ってくるとハボックに差し出した。まだ思うように体が
動かない様子のハボックに手を貸して水を飲ませてやる。ロイがグラスをサイドテーブルに置くと、ハボック
がロイにギュッと縋りついてきた。
「まったく、とんだ一周年になるところだった。」
ぼそりと怒りを滲ませた声でそう呟くロイに、ハボックはしがみ付く腕に力を込めると言う。
「ごめんなさい、たいさ…。」
「大体お前はいつも自覚が――」
声を荒げてハボックに小隊の部下達がいかにいつも秋波を送っているか諭そうとしたロイだったが、ハボックが
空色の瞳に涙を滲ませて自分を見つめている事に気がつくと、ホッと息を吐いた。
「まあ、いい。」
ロイはそう言うとハボックの金色の髪を撫でる。
「その代わり今夜はとことん付き合ってもらうからな。」
ロイの言葉に僅かに目を瞠って、それから幸せそうに微笑むハボックにロイはゆっくりと口付けていった。

「ぅんっ…あっ」
きゅんと乳首を甘噛みされてハボックは胸を仰け反らせる。もう一方のをくりくりと指の腹でこね回されて
快感が全身へと広がっていった。乳首を弄られる度そそり立ったハボックの中心からとろりと蜜が零れる。
その様を見ていたロイがくすくすと笑うのにハボックは悔しそうにロイを押しやった。
「も、しつこい…っ」
「好きだろう、ここを弄られるの。」
楽しそうにそう言うロイをハボックは睨みあげる。だが、目尻を紅く染めて快感に潤んだ瞳では全く迫力が
なかった。ロイは嫌がるハボックを押さえつけて執拗に乳首を攻め立てる。やがて涙声でもうやめてくれと
訴えるハボックが白く爆ぜると、ロイはようやくそこから顔を上げた。
「ここだけでイけるようになったな。」
嬉しそうに言うロイにハボックは居た堪れずにぎゅっと瞳を閉じる。ロイに抱かれるようになるまで、男も
乳首を弄られて感じることができるなんて思いもしなかった。抱かれる度散々に弄られたそこは、僅かな刺激
にも敏感に反応し、ハボックを身悶えさせる。羞恥に震えて縮こまるハボックに深く口付けるとロイはハボック
の体を俯せに反した。四つに這わせてぐっと腰を引き寄せて突き出すように高々と抱え上げれば、ハボックの
唇から抗議の声が上がる。
「たいさっ」
ロイの目の前に恥ずかしい部分を突き出すように曝されて、ハボックはギュッとシーツを握り締めた。ぴちゃりと
音がして這い回る濡れた感触に、ハボックは息を詰めてシーツに顔を埋める。傷つけぬ為とはいえ、毎回成される
この行為がハボックには居た堪れなかった。ロイに触れられる度イヤらしく蠢くソコをじっと見つめられて
恥ずかしくて息が止まりそうになる。それでもたっぷりと濡らされてロイの指が押し入ってくる頃には、ハボックの
中心からはしとどに蜜が零れて無意識に腰が揺れているのだ。
「ん…はあん…んふ…」
耐え切れずにハボックが洩らす甘い声にロイはうっとりと微笑む。沈めた指をぐちゃぐちゃとかき回せば
ハボックの喘ぎが大きくなった。指を沈めたまま曝された白い双丘に軽く歯を立てる。途端に、ハボック自身から
ぱたぱたと先走りの蜜が溢れ出てハボックの背が反り返った。
「ああっ…あは、ん…はぁっ」
ハボックはロイの指を咥え込んだまま尻を振りたてる。ぎゅうとシーツに顔を擦り付けて身悶えるハボックの姿
にロイは息を荒げた。
「ハボック…」
耳元に唇を寄せて吹き込むように囁けばびくんと体を揺らし、咥え込んだ指をきゅっと締め上げる。それがまた
堪らない快感を生んだようで、ハボックはとろりと蜜を零した。
「た、いさぁ…っ」
「ん?」
「ねぇ、もう…っ」
肩越しに振り向いて目元を染めて強請るハボックにゾクゾクする。こんなイヤらしいハボックの姿を知っているのは
自分だけだと思うと、ロイの心を歓喜が満たしていった。
「なんだ?」
意地悪くそう聞けば、ハボックはきゅっと唇を噛み締める。だが、結局は我慢できずにロイに強請った。
「たいさのがほしい…っ」
「私のなにが?」
そう言ってぐちぐちとハボックの蕾をかき回す。
「もう3本も入っているのにまだ欲しいのか?」
ワザとらしくそう言えば、ハボックが悔しそうに睨んできた。ハボックは後ろに手を回すと、自分の蕾を嬲るロイ
の指を強引に引き抜く。
「んんああっ」
びくびくと体を震わせ、それでも体を起こしてロイと向き合うとロイ自身に手を這わせた。
「アンタのだってこんなになってるくせに…っ」
そう言ってロイの脚の上に跨ると、ハボックはそそり立つロイの熱を蕾へと宛がう。ニッと笑ってゆっくりとロイを
飲み込んでいくハボックの蕩けた表情をロイは目を細めて見つめた。
「ん…はっ…はあっ」
ゆっくりとゆっくりと、ロイを全て飲み込んでしまうとハボックは僅かに顔を俯けて息を整えようとする。そんな
ハボックをロイは乱暴に突き上げた。
「あっ…やっ、ちょ…まって…っ」
自分のペースでことを進めようとするハボックを赦さず、ロイは乱暴にハボックを揺すりあげる。ハボックは
苦しげに喘いでいたが、やがてロイのリズムに合わせるように体を揺らし始めた。
「あんっ…はあっ…たいさぁ…っ」
自分の上で深々とロイをくわえ込んで、自身をそそり立てるハボックにロイはにんまりと笑う。1年前、まだ何も
知らなかったハボックの体に男を迎え入れることを教えたのは自分だ。男のモノで貫かれて快感を感じ、
後ろを犯されるだけで絶頂を迎えるように教え込んだ。羞恥に震えながらも自ら脚を開き、ロイを求めることを
覚えこませた。
「あふ…た、いさっ…ああんんんっっ」
びゅると、ハボックの先端から熱が迸る。快感に震える体を更に深く抉ってやればハボックの唇から嬌声が
あがった。
「あっ…や、んっ…あひぃ…やあんっ」
啼きながら身悶えるハボックの体を引き寄せ深く口付ける。軽く揺すりあげながら口中をくまなく弄れば
びゅくびゅくとハボックが熱を吐き出した。
「や…は…イイっ…キモチいいっっ」
ハボックはゆるゆると首を振りながら喘ぎと共に言葉を吐き出す。そんなハボックの様子に犯すロイの熱が
嵩を増した。
「あっ…スゴ…おっきいっ」
熱く濡れる中を押し開かれてハボックが悲鳴を上げる。ロイは纏わりつく熱い襞をずこずこと乱暴に擦りあげると
一際深く中を抉った。
「アアアアアッッ」
びゅるびゅると熱を吐き出して含むロイをぎゅっと締め付ける。その堪らない快感に、ロイも後を追うように
ハボックの中に熱を放った。

気がつけばもうすっかり空は白んでいて、ハボックはぐったりとベッドに沈み込んだままぼんやりとロイの
肩口を見つめていた。優しく髪を撫でる手に思わず意識を手放しそうになって、慌てて首を振る。
「たいさ…」
そう囁いた声はものの見事に枯れていて、ハボックは目尻を染めた。きゅっとしがみ付いて来るハボック
を優しく抱きしめてロイはハボックに囁く。
「愛しているよ、ハボック…。」
甘いテノールにぞくりと背を震わせてハボックも同じように囁いた。
「オレも…」
だが、ちらりとベッドサイドの時計を見たハボックは甘いとは程遠いため息をつく。
「オレ、この後仕事にいける自信、ないんスけど…。」
一晩中愛された体はもう、指1本動かす気になれない。
「いいさ、このまま寝てよう。」
サラリと言ってのけるロイをハボックは睨みあげた。
「中尉に殺されます。」
仕事、たまってんでしょ、と言えば、ロイが唸り声を上げる。ハボックはそんなロイにくすりと笑うと、力の
入らない体を叱咤してなんとかベッドの上に体を起こした。ロイはそんなハボックを見上げると言う。
「起きて大丈夫か?」
「そんな風に聞くなら手加減してくださいよ。」
恨みがましくハボックがそう言えばロイはしれっとして答えた。
「それはムリだ。お前が可愛すぎるからな。」
「アンタね…」
そう言ってハボックの腰にチュッとキスを落とすロイをハボックは呆れたように見つめる。
「まあ、この間みたいに執務室でするのもいいしな。」
にやりと笑ってそう言うロイにハボックは思い切り枕を投げつけたのだった。


2007/5/29