イブの夜はお仕事


「「「「じゃーんけーん…」」」」
「「「「ぽんっっ」」」」
ぱっと出された4つの手のうち、パーが1つ。後の3つはチョキ。チョキの手の持ち主達がワアッと歓声を上げたのに
対して、パーを出した人間は信じられないとばかりに己の手をまじまじと見つめた。
「うそ…」
ハボックは自分の大きな掌を見つめて呆然と呟いた。その背をブレダがバシンと叩く。
「悪ぃな、ハボック。恨みっこなしだから。」
「すみません、少尉。よろしくお願いしますね。」
「公平にじゃんけんで決めたことですし。」
口々にフュリーやファルマンが言うのにハボックは顔を上げて言った。
「なあ、もう一回…。」
「「「ダメっ!」」」
即答で返されてハボックはう゛っと言葉に詰まる。
「じゃんけんで決めようって言ったのはお前だろ。往生際が悪いぜ。」
ブレダに言われて、でもっと必死に言い縋ろうとハボックがしたとき、がちゃりと執務室の扉が開いてロイが出てきた。
「なんだ、さっきから騒がしいな。」
「大佐っ」
ロイの顔を見てハボックがわたわたと慌てる。そんなハボックを怪訝そうに見やると、ロイはブレダに尋ねる視線を
向けた。
「24日の夜勤、ハボになりましたんで。」
「夜勤?」
「そう。せっかくのイブ、誰が夜勤をするかって話してたんですけど、ハボがじゃんけんで決めようって言い出して。」
「少尉が負けたんです。」
ブレダの言葉を引き継いでフュリーが言ったのを聞いて、ロイはハボックの顔を見つめた。決まり悪そうに大きな体を
縮めるハボックを見つめるロイの耳にブレダの声が聞こえてくる。
「恨むんならじゃんけんに負けたソイツを恨んでくださいね。」
ちらりとブレダを見ると、ロイはため息をついた。
「まぁ、誰かが夜勤につかなくてはいけないんだからな。」
そうそうと頷くブレダたちにロイは肩を竦めて執務室へと戻っていった。

「はあああ…」
体中の空気が抜けてしまうのではないかと言うような大きなため息をつくハボックを見て、ロイは読んでいた新聞を
放り投げた。
「いい加減にしないか、ハボック。」
「だって、せっかくのイブに夜勤…。」
「お前が負けたんだから仕方がないだろう。」
「どうせオレがじゃんけんに弱いのがいけないんス…。」
リビングの床に座り込んで、くたんとテーブルに懐いて嘆くハボックにロイはため息をついた。
「別にイブじゃなくても25日があるだろう?」
そういうロイにハボックはガバリと顔を上げた。
「何言ってるんスか。アンタ、25日はチャリティーパーティに出なきゃいけないでしょうが。」
「あ…」
すっかり忘れ去っていたロイはハボックと暫し顔を見合わせた。
「まぁ、アレだ。23日に早めにやるって言うのも…」
そういうロイの言葉が尻窄みに小さくなる。二人は互いに目を逸らすとはああ、と大きなため息をついた。

「なー、ぶれだー。」
「ダメっつったらダメっっ!!」
「今度おごるからさー。」
「あのなぁ。」
ブレダは机の上に顎を載せて上目遣いに自分を見つめているハボックを、書類を書く手を止めて見やった。
「オレだってイブは勝負なの。絶対に譲れません。」
「だったらフュリー…」
「すみませんけど、僕もちょっと…。」
苦笑いを浮かべるフュリーを恨みがましげに見るハボックにブレダは言った。
「別にいいだろ、相手、大佐なんだし。今更イブでもなんでもないだろうが。年中イチャイチャしてんだからよ。」
随分ないい様にハボックはムッと眉を顰める。
「なんだよ、ソレ…」
「と、に、か、く!いい加減諦めろ。来年は優先的に夜勤から外してやるから。」
「え゛ーーーッ」
「もうこの話は終わりっ!」
そう言うとブレダはそれ以上ハボックがなにを言おうと書類から目を上げなかった。不貞腐れたハボックが司令室から
出て行くと、フュリーがブレダに言った。
「可哀相だったでしょうか。」
「いいんだよ、別に。あのバカップルに甘い顔してみろ、後でとんでもない目に会うぞ。」
ブレダの言葉にファルマンが苦笑する。確かに今更な感は否めない。3人はちょっぴりハボックを可哀相だと思いながら
も、やはり自分達のことを一番に考える事に決めるのだった。

「それじゃ、後はよろしくお願いします。」
「いいか、今夜は呼び出すんじゃないぞ。」
そんな事をいいながら、これからの予定に楽しそうに司令室を後にするブレダたちを見送って、ハボックは椅子の背に
もたれてため息をついた。
「ちぇー…」
今日はクリスマスイブ。寒い季節だというにも係わらず、世の中の人は実に暖かそうな笑みを浮かべて幸せいっぱいに
過ごしている。自分達を除いては。勿論、他にも働いている人たちは沢山いるに違いない。だが、今のハボックは
自分達だけが置いていかれたような、そんな錯覚に陥っていたのだった。
とりあえず、プレゼントは23日に渡した。ちょっとしたパーティの真似事のようなこともしたし、ケーキも食べた。だが。
「やっぱりイブにやりたかったよなぁ…」
いい年をした大人が、と言われてしまえば返す言葉もないが、それでもこういうのは別だと思う。一番大切な人と
二人きりで過ごしたいと思うのが人情というものだろう。
『本でも読みながらゆっくり過ごすさ。』
ロイはそう言って笑っていたが、残念だと思っているのは明らかだった。クリスマスは今年だけではないが、今年の
クリスマスは今日しかないのだから。ハボックは立ち上がると執務室の扉を開けて中へ入る。いつもロイが座っている
椅子に腰を下ろすと、机の上に頬を載せる。そうやってぼんやりとしている内に、ハボックはうとうととしてしまったよう
だった。よく知った人の気配が部屋の中へ入ってくると、呆れたようなため息を零す。その人はハボックの近くに寄って
くると、ハボックの金色の髪を優しく梳いた。その柔らかな感触にうっとりとため息を零した次の瞬間、ハボックはガバッ
と体を起こした。見つめる視線の先にビックリして目を見開いたロイが、執務室の机の端に腰をひっかけてハボックを
見下ろしている。その手は今までハボックの髪を撫でていたのだろう、宙に差し出されたまま止まっていた。
「た、た、たいさっ?!」
夢と現の境界線が曖昧で、ハボックは咄嗟に現実が理解できない。そんなハボックにロイはくすりと笑うと、意地悪く
言った。
「夜勤というのも随分お気楽なものだな。」
「えっ?あれっ?えと…、な、なんで大佐がここに…?」
「随分な言い草だな。せっかく様子を見に来てやったのに。」
「様子を…。」
「別に一人で家にいる理由もないしな。たまには二人で夜勤も悪くないだろう?」
そう言って笑うロイにハボックは泣きそうになる。手を伸ばしてロイを引き寄せると唇を合わせた。
「ん…」
ぴちゃりと。
舌を絡めあって貪りあう。深く交わる唇に、呼吸が荒くなっていって。ハボックはロイをぎゅっと抱きしめると、そのまま
床に倒れこんだ。
「ちょ…っ、まって、ハボ…っ」
床に押さえ込まれてロイが慌てて叫ぶ。だが、ハボックはそのままロイの項に舌を這わせた。
「ダメ…止まんない…」
「ハボっ!」
「だってアンタ、可愛すぎ…」
ロイが来てくれたことが嬉しくて嬉しくて。ハボックはロイのシャツをくつろげると白い肌にキスを落とした。時折強く吸い
上げて、今日のこの日にロイを抱いた印を刻んでいく。
「誰か来たら…っ」
「誰も来ませんよ…」
ハボックはそう呟くとロイの乳首に舌を這わせた。くりゅっと舌先で押しつぶし唇で甘く噛む。
「あんっ」
ロイの唇から零れた甘い声に気をよくして、ハボックは指先と舌で二つの乳首を玩んだ。硬く立ち上がったソコを飽きる
ことなく愛撫すれば、ロイは甘い喘ぎを零し続けた。
「あ…ぅン…ああん…」
紅く熟れたソコを舌先で弾く度、ロイの腰がぴくぴくと跳ねる。その反応が面白くてしつこく乳首を弄っていたハボックの
髪を、ロイがぐいと引っ張った。
「いてぇっ」
「おまえ…し、つこいっ…ソコばっかり、ヤダッ」
半泣きになってぐいぐい髪を引っ張るロイに苦笑して、ハボックはロイの胸から顔を上げた。ホッとするロイのズボンを
下着ごと剥ぎ取るとロイの唇から悲鳴があがった。それに構わずロイの脚を掴んで大きく開かせる。
「いやあっ」
煌々と照らされた灯りの下、とろとろと蜜を零しながらそそり立つ自身を曝されて、ロイが耐え切れずに悲鳴を上げる。
ハボックはうっとりと笑うと脚の付け根を押し広げて蜜を垂らすロイ自身に舌を這わせた。
「ひあっ」
棹にそって舐め上げると先端の穴を舌先で押し開く。口中に含んで唇で擦り上げれば、更にとろりと蜜が零れた。
「うんっ…ハ、ボ…っ」
中心を思うままに弄られてロイが苦しげに喘ぐ。早く達かせて欲しくて奥をかき回して欲しくて、無意識にゆらゆらと
腰を揺らした。
「たいさ…」
ハボックはロイの脚を更に押し開くと奥まった蕾へと舌を差し入れた。
「んあっ」
びくんと跳ねる体を押さえつけて、ひくつく襞の奥へたっぷりと唾液を流し込む。指で淵をなぞるように触れればロイの
唇から熱いため息が零れた。つぷと指を中へ沈めるとロイが息をのむのが判る。それに構わずぐちぐちとかき回すと
ロイの呼吸が熱く乱れた。
「ハボ…っ」
「なんスか?」
ロイの言いたい事は判っているのにハボックは意地悪く聞き返した。ロイは唇を噛み締めると、だが、震える声で
ハボックに強請る。
「も、いいから…っ」
「いいから、なに?」
「おまえっ…意地悪…っ!」
「はっきり言ってくんないとわかんないっスよ?」
笑いを含んだ声にロイは怒りで目の前が紅くなったような気がした。だが、体を支配するこの熱を何とかできるのは
ハボックだけで。
「…いれてっ」
ロイは叫ぶようにそう言うと乱暴にハボックに口付ける。ハボックはうっとりと口付けを受け止めるとロイの脚を抱え
上げた。奥まったソコへぐいと滾る自身を押し当てるとゆっくりと体を繋げていった。
「んんっ…アっ…あっア―――ッ!」
ずぶずぶと押し入ってくる熱に狭い器官をいっぱいに押し広げられて、息苦しさと共にたまらない快感が沸きあがって
くる。ロイはハボックにしがみ付くと口付けを強請った。求められるままにキスを交わしながら、ハボックはロイを突き
上げる。ぐちゅぐちゅと淫猥な水音が執務室に響き渡り二人の荒い息遣いがその上にかぶさっていく。一際奥を
突かれてロイは喉を仰け反らせると熱を吐き出した。
「あああああっっ」
びくびくと震える体をハボックは容赦なく突き上げる。イッたばかりのそこは乱暴な抽送に過ぎる快感をロイに与えた。
息も出来ないような快楽にロイはポロポロと涙を零す。
「ア――ッ!ヒッ…ああっ」
「たいさ…たいさっ」
どくんと熱を吐き出して、瞬く間に追い上げられていく事に、ロイは辛くて泣きじゃくった。
「やっ…も、気がくるうっ」
赦してくれと喘ぐロイをハボックは思うままに追い上げて。一際深いところを突き上げると熱い想いを解き放った。

「どうするんだ、この後。」
二人の放ったもので汚れてしまった服に、ロイは眉を顰めた。
「後でこっそりロッカールームに行けばいいっスよ。シャワーもあるし。」
のんびりとそんな事を言うハボックをロイは睨みつける。
「その前に誰か来たらどうするんだ。」
「来ませんよ。」
「その無駄な自信はどこから来るんだ?」
「だって今日はイブですもん。」
そう言ってハボックはロイを引き寄せる。幸せそうに笑う水色の瞳にロイは小さくため息をついて。
今夜だけはまあいいか、とハボックの胸に顔を寄せてそっと目を閉じた。


2006/12/5


冬企画第一弾はやっぱりクリスマスでしょうってことで。ハボロイもロイハボもクリスマスに一緒にすごせないかもって事で書いてみました。
結局はただのバカップル話になっているような…。まあ、楽しいイベントネタですしソレもいいかと。お仕事してないじゃーんってツッコミはなしで
1つお願いします(苦笑)