クリスタルクリスマス


「大佐!見て見て!」
 ガチャリとノックもせず執務室に飛び込んでくるハボックに、ロイは眉を顰めて書類を書いていた手を止める。
「ハボック」
 と、諫める言葉をロイが言おうとする前に、ハボックは手にしたものをロイの机の上に置いた。
「これ!さっき大将が帰り際に作ってくれたんすよー。パンッって錬金術で!凄いっしょ?!」
 興奮気味に話すハボックが言うのを聞きながらロイは机に置かれたものを見る。それはガラスで出来たサンタの置物だった。
「これを鋼のが?」
「大将にね、クリスマスプレゼントでマフラーあげたんスよね。寒いから風邪引かないようにって」
 そう言われてロイはハボックが三日ほど前から寝る間も惜しんでマフラーを編んでいた事を思い出す。てっきり自分にくれるのかと思いきや、急にイーストシティに寄ると連絡してきたエドワードの為だったらしい。むぅと不機嫌にロイが眉を寄せたのに気づかず、ハボックは続けた。
「そしたら、クリスマスプレゼント用意してなかったからって、即席で悪いけどって、錬金術でっ!よく出来てるっしょ?」
 そう言うハボックの言葉通り、小さなガラスのサンタは赤い帽子を載せた頭をちょっと傾げてどことなくユーモラスで可愛らしい。帽子から覗く髪が何故だか金色の三つ編みで、目つきが悪いのがどこかで見たようだと思いながらロイは言った。
「まあ、鋼のが作ったにしては気が利いてるな」
「いいっしょー、へへ」
 ハボックは嬉しそうにエヘヘと笑うとお邪魔しましたと出ていってしまう。その背を眉を顰めたまま見送ったロイはボソリと呟いた。
「私だって錬金術であれくらい作れるぞ」
 物質錬成は専門外とは言っても、ロイだって焔の二つ名を持つ錬金術師だということを、どうやらハボックは忘れているらしい。
「見ていろ、鋼の。私だってハボックの為ならあれくらい幾らでも作ってやるッ」
 イーストシティから次の町へと向かう列車の中で少年が大きなくしゃみをしていることなど知りもせず、ロイはそう叫ぶともの凄い勢いで執務室を飛び出していった。


「大佐ぁ、そろそろメシっスけど」
 ハボックはロイの研究室になっている小さな離れの扉を叩く。暫く待っても返事が返ってこず、開けてもいいものか悩んだハボックはそうっとほんの少しだけ扉を開けた。
「大佐?」
 遠慮がちに呼んでハボックは中の様子を伺う。そうすれば広い作業テーブルになにやら広げているロイの背中が見えた。
「入るっスよ?」
 その背中に向けて声をかけたハボックは、ぎりぎり躯が通るだけの隙間をあけて中へと滑り込む。机の側に近寄ったハボックは錬成陣が描かれた紙と錬成用の材料と思しきものを見て首を傾げた。
「何か作るんスか?」
 そう尋ねればロイがハボックを見る。なにも言わずにじっと見つめてくるロイに、ハボックがいい加減居心地が悪くなって部屋を出ようかと思う頃になって漸くロイが口を開いた。
「私だってな、ハボック。ガラスの置物の一つや二つや三つや四つ作れるんだ」
「へ?いきなりなんスか?」
 突然そんなことを言い出すロイにハボックはキョトンとする。ロイはテーブルの上に置いてあった紙を取るとハボックに渡した。
「もしかして……ツリー?」
 なにやら木らしき物体に赤い丸が描いてある絵を見て、季節がら推測したハボックが言う。そうすればロイがニヤリと笑って言った。
「見ていろ、クリスマスプレゼントに最高のものを錬成してやる」
 ロイはそう言って材料が載った皿を引き寄せ錬成陣の上に置いた。
「なんスか、これ。ガラスで作るんじゃねぇの?」
「珪砂と鉛だ。他にもあるが、これでガラスを作るんだ」
「へぇ、こんなんでガラスになんの」
 不思議そうに覗き込むハボックにロイは尋ねた。
「鋼のも錬成で作ったんじゃないのか?」
「大将はガラスのコップ二つばかり壊して錬成し直してたっスよ」
 そうと聞いてロイは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。その顔を見て内心子供相手になにを張り合ってるんだとハボックは思ったが、とりあえず何も言わずにおいた。
「よし、見ていろよ、ハボック」
 ロイはそう言って手を錬成陣の上につく。次の瞬間バチバチと火花が散って目映い錬成光が部屋を満たした。光から目を庇って翳していた腕をハボックはゆっくりと下げる。光が消えた机の上には小さなガラスで出来た物体が載っていた。
「ええと」
 できあがったものをじっと見つめたハボックは少しして口を開く。ちょっと悩んでハボックはロイに尋ねた。
「ツリーは判るんスけど、この赤いの、なんスか?」
 てっぺんに金色の星をつけた透明なガラスで出来たツリーは、僅かに金色がかって計画図で見た時よりずっと綺麗で洒落ている。問題はその枝に掛かっている赤い物体だった。下に向かって細くなっている円錐の表面はブツブツしてどうみても失敗作にしか見えない。判らないと首を傾げるハボックにロイはムッとして言った。
「苺に決まってるだろう」
「苺?これが?」
 思わず反射的に答えてしまって、ハボックは慌てて口を手のひらで覆う。ロイはそんなハボックをジロリと睨むと、枝にかかった苺のオーナメントを取り外した。
「作り直す」
「や、別に直せって言ってる訳じゃ」
「作り直すと言ってるんだ」
「はいっ」
 ギッと睨まれてハボックはピッと背を伸ばして答える。ロイはフンと鼻を鳴らすともう一枚錬成陣を描き、その上にオーナメントを置いた。
「いくぞ」
 ロイの言葉と同時に錬成光が光り、錬成陣に置かれたオーナメントが光に包まれる。ゆっくりと光りが消えて、現れたものをハボックはまじまじと見つめた。
「どうだ」
 自信満々に言うロイにハボックは引き攣った笑みを浮かべる。下手なことは言えないと背中に嫌な汗が流れるのを感じながらハボックは口を開いた。
「可愛いっスね、この───」
「リンゴだ」
「あっ、そうか。クリスマスのオーナメントっスもんね。ミニトマトかと思っ───」
「悪かったなッ!!」
 ついうっかりハボックが言いかけた言葉に、ロイはムッと唇を歪めてオーナメントをかき集めようと手を伸ばす。だが、今度はハボックが一瞬早く手を伸ばして出来たばかりのオーナメントを掬い上げた。
「見えますッ、ちゃんとリンゴに見えるっス!」
「別に無理せんでも───」
「ううん、ホントに!」
 ロイの言葉を遮るように言ってハボックは手の中のオーナメントを見る。艶やかな赤い玉に緑の葉っぱがついた小さな実を見つめて、ハボックは目を細めた。
「ちょっと葉っぱが大きいけど、ちゃんとリンゴっスよ。つるつるで丸くて、すっげぇ可愛い」
 ハボックはそう言いながら実を一粒目の高さに掲げる。灯りに透かして見つめてハボックは言った。
「これ、オレにくれるんスよね?」
「……そんなんでよければな」
「いいに決まってるっしょ、すっげぇ嬉しいっス!」
 にっこりと満面の笑みを浮かべてハボックが言うのを見れば、ロイの頬に僅かに赤みが差す。そんなロイにハボックは笑みを深めて手の中のオーナメントをツリーの枝にぶら下げた。
「よくできてるっスね、これ。そうだ、来年はこれに飾るオーナメントをまた作って欲しいな。毎年色んなの、作ってくださいよ」
 手のひらのリンゴを全部ツリーに飾って、ハボックは満足げに頷く。ロイを見て改めて礼の言葉を口にしたハボックは、思いついたように言った。
「本当は明日のイブに渡すつもりだったんスけど、オレも今渡しちゃいますね、プレゼント」
「私にもあるのか?」
「当たり前っしょ」
 意外そうに目を瞠るロイにクスリと笑ってハボックが言う。
「向こうに戻りましょう、どうせあっちに置いてあるし」
 そう言ってツリーを手に出ていくハボックに続いて、ロイも離れを後にした。


「ちょっと待っててくださいね」
 ハボックはガラスのツリーをそっとリビングのテーブルに置いて部屋を出ていく。ロイがソファーに腰を下ろして待っていれば、少ししてハボックがプレゼントの包みを手に戻ってきた。
「はい、大佐。メリー・クリスマス!」
「ありがとう、ハボック。あけてもいいか」
 頷くハボックにロイは早速包みを開ける。そうすれば中から出てきたのは濃いブルーの手編みのセーターだった。
「これ、もしかしてお前が編んだのか?」
「へへ、ちょっと不細工なのは勘弁してくださいね」
 驚いて尋ねるロイにハボックが照れたように言う。ロイは暖かそうなセーターをじっと見つめて言った。
「でも、これを編んでるところなんて見たことなかったぞ」
「当たり前っしょ。あげる人の前で編むわけないじゃん」
 呆れたような声にロイはハボックを見る。ハボックは小首を傾げてロイに言った。
「大佐にその色似合うと思ったんスけど……嫌じゃない?」
「ああ、勿論!」
 ロイは答えてセーターに腕を通す。頭からズポッと被って裾を引っ張り整えると満足そうに言った。
「うん、サイズもぴったりだ。ありがとう、ハボック」
「よかった」
 ロイの答えを聞いてハボックが嬉しそうに笑う。そんなハボックを見上げたロイは、ハボックの手首を掴んでグイと引っ張った。
「わっ……大佐っ」
「嬉しいよ、ハボック」
 ロイはハボックの長身を腕の中に閉じこめてそう囁く。間近に迫る整った顔に、ハボックは顔を赤らめて答えた。
「オレも……オレも嬉しいっス。大佐がオレの為に錬金術で作ってくれた……」
「来年のクリスマスまでにはもう少し腕を上げるからな」
 ちょっと照れくさそうに言うロイにハボックがクスクスと笑う。そんなハボックの唇をロイはゆっくりと塞いだ。
「ん……っ、たいさ……」
 啄むようにロイは何度もハボックに口づける。ハボックの唇から零れる吐息が甘さを増してくると、ロイは口づけを深いものに変えた。
「たい……たいさ、ここじゃヤダ、ベッドに……」
「時間の無駄だ、どうせすぐ何も判らなくなる」
「な……ッ、大───」
 抗議しようとする唇をロイは塞いで黙らせる。腕の中でもがく躯ごとソファーの上に倒れ込み、ロイはきつく舌を絡めた。
「んんっ……ぅんッ!んふ……ぅ」
 鼻から零れる甘い息を聞きながらロイはハボックのシャツの中に手を差し入れる。鍛えられた躯を筋肉に沿って撫で上げ、手のひらで胸の突起を嬲った。
「あっ、やんッ」
 何度も手のひらでこすればハボックがビクビクと震える。ハボックのシャツを裾から捲り上げ、ロイは愛撫にプクリと立ち上がった乳首を見て目を細めた。
「似てるな、これと」
「えっ?なに……?」
 快感に意識を流されかけて、ハボックが不思議そうにロイを見る。そうすれば、ロイはテーブルに置いた置物からオーナメントを一つ取り上げた。
「これと似てる。ほら、どっちも赤く熟れて旨そうだ」
 ロイはそう言うといつもより赤みを増した胸の突起をリンゴの実で押し潰す。ロイはガラスの実で乳首を愛撫しながら言った。
「今度ガラスでピアスを作ってやろう。ここにつけたらきっと可愛いぞ」
「ッ、冗談っしょ?!」
 ギョッとして見上げてくる空色の瞳にロイはクスクスと笑う。すっかり尖った乳首を口に含むときつく吸い上げた。
「アッ!ああんッ!」
 途端に甘い声を上げて胸を仰け反らせるハボックにロイは笑みを浮かべる。片方の乳首を吸いながらもう片方をオーナメントで潰せば、ハボックがイヤイヤと首を振った。
「それヤダっ」
「相変わらず胸が弱いな」
 からかうように言うロイをハボックが睨む。赤く朱を刷いたような目元にロイは口づけて、ボトムに手をかけた。
「たいさッ」
 ハッとして反射的にロイの手をハボックが押さえる。だが、黒曜石の瞳でじっと見つめられて、ハボックは困ったように目を逸らした。
「ハボック、手をどけろ」
「ッ!!」
 灯りの下、肌を晒すのはいつまでたっても抵抗がある。それでも低い声で名を呼ばれて、ハボックはおずおずと手を離した。にんまりと笑って、ロイは自由になった手でハボックのボトムを下着ごと毟り取る。恥部を晒されて身を強張らせるハボックの長い脚を、ロイはグイと大きく押し開いた。
「やっ!!」
 羞恥に悲鳴を上げながらもハボックは抵抗しない。震えながらロイのされるままになっているハボックを見下ろしながら、ロイは手にしていたオーナメントでハボックの蕾を撫でた。
「これを中に挿れたらどうなるかな」
「な……ッ?」
「ガラスだからな、締まりが良すぎて砕けてしまうか」
「たいさッ」
 赤く染まった顔の中で、ハボックは目を大きく見開いてロイを見る。冗談でなく本気でやりかねない男を見開いた目で食い入るように見つめれば、ロイはクスクスと笑いながらオーナメントをハボックの蕾に押し当てた。
「やめてッ!そんなの挿れられたらオレ……ッ!!」
 本当に割れでもしたら命にかかわる。まん丸に見開く空色を見つめながらロイはオーナメントを押し当てる指に力を入れる。ヒュッと息を飲むハボックにロイはククッと笑って力を抜いた。
「いくらなんでもそんな酷いことするはずないだろう?」
「大佐ッ!!」
 クスクスと笑いながら言うロイをハボックが涙目で睨む。だが、ロイはそんな表情も可愛いだけだと思いながら、ハボックの楔を指で弾いた。
「期待してたか?悪かったな」
「違……ッ!」
 嫌という間にも萎えることがなかった楔を弾かれて、ハボックは顔を真っ赤に染める。そんなハボックの楔から零れる蜜を指で掬い、ロイはオーナメントで嬲っていた蕾に塗り込めた。指先を沈めくちくちと入口を押し広げる。ロイはハボックの脚を抱え直すと取り出した己を蕾に押し当てた。
「挿れるぞ」
 低く囁けば見開く空色にロイはうっとりと微笑む。そのままグイと腰を進めるとハボックが背を仰け反らせた。
「アアッ!!」
 いつまでたっても慣れない挿入の瞬間にハボックは身を強張らせる。グイグイと容赦なく押し入ってくる牡にハボックはロイの背に回した手でセーターをクシャクシャと握り締めた。
「イ……アヒィ……ッ!」
 苦しくて、でもその先にある快楽を知っている躯が喜ぶようにロイを迎え入れ奥へ奥へと引き込もうとする。ロイに激しく揺さぶられ突き上げられて高みへと上り詰めながら、ハボックは握り締めた感触にロイがセーターを着たままなのに気づいた。
「や……っ、ダメッ!!」
 このまま熱を吐き出せば汚してしまう。そう思ったハボックが咄嗟に己の楔の根元を指で戒めた瞬間、ロイが最奥を思い切り抉った。
「ヒ……ヒィィッ!!」
 高い悲鳴を上げてハボックはガクガクと震えて身を仰け反らせる。吐き出す筈だった熱を己の指でせき止めて、ハボックは目を見開いてビクビクと震えた。
「ハボック、お前……?」
 腕の中のハボックが、自分の手で熱をせき止めるのを見てロイは目を瞠る。ピクピクと震えながらハボックは小さな声で言った。
「だって……セーター汚しちまう……」
 あげたばっかりなのにと呟くハボックに深くまで埋めた楔が嵩を増す。最奥を押し開かれて、ハボックは目を見開いて喘いだ。
「ひゃあ……ンッ!無理ィ……おっきくしないで……ッ」
「お前が可愛いことをいうからだ」
「なに言って……や、駄目っス!セーター脱いでっ!」
「もう一度押さえておけ」
「そんな……アアッ!!」
 駄目と悲鳴を上げる躯を押さえつけて、ロイは容赦なく腰を打ちつける。そうすれば熱を吐き出したばかりの躯は容易く追い上げられて、ハボックは大きく目を見開いた。
「や、だ……ッ、ヤアアッッ!!」
 せき止めれば苦しいだけだと判っていてもハボックは指を弛める事が出来ない。何とか絶頂をやり過ごそうと無駄なあがきをした挙げ句高みから突き落とされるように、熱を吐き出せないままイったハボックの最奥にロイは思い切り白濁を叩きつけた。


ロイの腕の中、ソファーの上で身を寄せあったままハボックはぼんやりとテーブルの上を見る。透明な枝にぶら下がった紅い実を見つめて、ハボックが言った。
「そういやオレ、メシが出来たって大佐のこと呼びに言ったんスよ……なんか急に腹が減ってきた」
「腹が空いてるからって食うなよ」
 その空色の瞳がじっとガラスのリンゴを見ている事に気づいてロイがからかうように言う。そうすればハボックがロイを見上げて言った。
「食うわけねぇっしょ。食えたって食いませんよ、せっかくアンタに貰ったのに」
 ハボックはそう言うとロイのセーターをしげしげと見つめる。
「汚れなかったかなぁ、大佐、汚してないでしょうね?」
「お前な」
「だって」
 汚したものの正体が己の吐き出したものだなんて恥ずかしすぎる。顔を赤らめながらもそう言うハボックに、ロイはクスリと笑った。
「そうだ、明日はこれを着て二人で出かけよう。駅前のイルミネーションが今年はデザインが変わって綺麗らしいぞ」
「ホント?行きましょうよ、大佐。だったら明日は絶対残業なしっスからね。中尉の言うことちゃんと聞いてくださいよ」
 そう言えば情けなく眉を下げるロイの躯をハボックはギュッと抱き締める。ロイの肩越しに見える紅い実をその枝に下げたツリーを見つめて、ハボックは嬉しそうに笑った。


2011/12/22


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


いつも素敵素材をお借りしている「柘榴石」の柘榴さんとクリスマス素材の話をしていまして、「林檎なんだけどミニトマトみたいなの」というので面白くてお借りした素材が、右側にあるツリーです。これに合わせて何かssと思っていたら柘榴さんがネタ下さいましてv早速書いてみたのがコレでしたー(笑)ええと、きっとこの後ハボックは林檎のオーナメント綺麗に洗ったと思われます(爆)柘榴さん、いつも素敵な素材と妄想をありがとう!!(笑)