万愚節


「ハボック、ちょっと話があるんだが」
 書斎の窓辺に寄りかかってロイがハボックに言った。開け放たれた窓からは穏やかな春の風が入ってくる。
「なんスか、突然」
 まじめな顔をして言うロイにハボックはなんだろうと眉を顰めた。
「前々から考えていたんだが…」
 ロイはそう言うとハボックの目をじっと見つめる。
「もう終わりにしないか?」
「…は?」
 ロイの言葉が理解できなくてハボックは馬鹿のようにあんぐりと口を開けた。
「それってどういう…」
「どうって、言葉通りの意味だよ、ハボック」
 そういうロイの顔は逆光でよく見えない。ハボックは突然息ができなくなった様に浅い呼吸を繰り返した。
「なんで…どうしてっスか?」
 何度も唾を飲み込んでようやく吐き出した言葉は、一度唇から零れ出た途端留まることを忘れてしまったように次から次へと溢れ出した。
「どうして?前々から考えてたって、それっていつからっスか?オレのこと、キライになりました?オレ、なんかアンタの気に触ることしましたか?気に入らないトコがあるなら治しますから何でも言ってください!それとも…」
 一気に捲くし立ててハボックは一瞬口を噤む。まるで恐ろしいことを口にするかのように震える唇を開くとロイに聞いた。
「それとも、他に好きな人ができた、んスか…?」
 ハボックの言葉にロイはほんの少し俯くとはにかむように答える。
「う…ん、まぁそんなとこかな」
 ロイの言葉にかあっとハボックの頭に血が上った。
「好きな人って誰っスかっ?女の人?!それともまさか…」
 ごくりと唾を飲み込むとハボックは囁くように言った。
「まさかヒューズ中佐…とか?」
「えっ?!」
 突然出てきた名前にロイは顔を上げると目をまん丸にする。その途端、視界に飛び込んできたハボックの形相に思わず息を飲んだ。
「ヒューズ中佐なんて…オレ、それだけは我慢できませんっ!」
 そう言ってロイの肩をグイと掴むとハボックは言葉を続ける。
「他の誰だって嫌だけど、ヒューズ中佐にだけはアンタを渡せませんっ!」
「おいっ、落ち着けハボック!!」
「中佐に渡すくらいなら…っ」
「ハボックっ」
 ぐっと圧し掛かってこようとするハボックの頭をロイは手近にあった本で思い切り殴りつけた。
「〜〜〜っっ!!…ってぇぇぇっっ!!」
「落ち着けと言ってるだろうっ!!」
「…これが落ち着けるわけないでしょっ!」
 頭を抱えて蹲ったハボックは、涙目でロイを見上げると言う。
「ねぇ、たいさっ、オレ、どっかわるいとこあるなら直しますからっ、だから…っ」
 泣きそうな顔でそう言うハボックの顔のあまりの情けなさにロイは思わずプッと噴出してしまった。
「く、くくく…っ」
「ひでぇ、笑うなんて…っ」
 悔しそうなハボックに、ロイは必死に笑いをこらえると言った。
「お前、今日が何日か知ってるか?」
「今日?今日は…?」
 ハボックはそう言うと壁にかかったカレンダーを見る。
「今日は4月1日っスけど…え、4月1日っ?!」
 叫ぶと同時にロイを見ればくすくすと笑う黒い瞳と目が合う。
「騙しましたねっっ!」
「まさか信じるとは思わなかった」
「信じると思わなかったって…アンタが言うと冗談にきこえませんよっ」
「そうか?」
 しれっとしてそう言うロイにハボックは眩暈を覚えた。がっくりと床に手をつくと大きなため息を零す。
「そういうウソは冗談になりませんって…」
 性質悪すぎ、と呟くハボックの頭をロイはそっと撫でた。
「悪かった。ヒューズのヤツがエープリールフールにお前にそう言ってみろっていうものだから。私は信じる訳ないって言ったんだけどな」
「中佐が…?」
 あんの性悪ヒゲ親父、とぶつぶつと呟いて今度セントラルに行ったら絶対ボコると誓いながらハボックはロイを見た。
「大佐、オレのガラスのハート、危うく砕け散りそうだったんスけど」
「だから悪かったって」
「悪いと思ってんなら償ってくださいよ」
 そう言うハボックの目がすわっているのに気づいて、ロイは思わず後ずさった。瞬間、ハボックの腕が伸びてきてロイの体を絡め取る。
「ハボックっ」
 慌てるロイの耳元でハボックは囁いた。
「いつもはオレがシテあげてるけど、今日は全部アンタがシテ…?」
「な、に…」
「オレの服脱がせて、オレのしゃぶってアンタの中に挿れて…」
「バカ言え…っ」
 必死にもがいてハボックの腕から逃れようとするロイを楽々と組み敷いてハボックはにんまりと笑った。
「ダメッすよ、お仕置なんだから」
「やだっ、ハボっ…んんっ」
 唇を塞がれて身を捩るロイのズボンの中にハボックの手がするりと滑り込んでくる。乱暴に扱かれて瞬く間に硬度を増す自身に、ロイの目に涙が滲んだ。ハボックはポケットの中に手を突っ込むと細い紐を取り出しロイのそれにぎちぎちに巻きつけてしまう。
「やだぁ…っ」
 熱をせき止められてロイは弱々しく首を振った。ハボックはロイの頬を両手で挟むと濡れた黒い瞳を覗きこむ。
「ほら、オレの服、脱がせて…?」
 突き出した舌でぺろりと唇を舐められてロイは小さく体を震わせた。震える指でハボックのシャツに手をかけると一つ一つボタンを外していく。全部外してシャツを脱がせると、現れた逞しい体にロイの縛められた自身からとろんと蜜が零れた。ロイはハボックの胸に顔を寄せるとその綺麗に盛り上がった筋肉に舌を這わせる。
「ん…」
 ハボックは暫くロイの好きにさせていたが、やがてロイの手を取るとハボック自身へと導いた。
「こっち、もうキツイんスけど…」
 そう言われてロイが目をやればジーンズの生地を窮屈そうに押し上げているのが目に入る。ロイはハボックのズボンに手をかけるとハボック自身を取り出した。
「あっ」
 窮屈な布地から解放された途端、ぶるんと頭をもたげるソレに、ロイはごくりと唾を飲んだ。筋の浮き出たソレにおずおずと唇を近づけるとゆっくりと咥える。大きく育ったソレを口いっぱいに含んで必死に奉仕するロイの姿にハボックは楽しそうに笑った。
「旨いっスか?」
 聞かれてコクコクと頷いてロイは腰を揺らめかせた。唇で擦りあげ舌を絡ませながら、ロイは手を後ろに回して自分の蕾に指を沈める。イヤらしいロイの姿にハボックはくすくすと笑った。
「すげ…いい眺めっスよ、たいさ…さっきオレと別れるって言った人とはまるで別人っスね…」
 そう言うハボックをロイは上目遣いに睨むと唇を離した。そうして床に座り込むハボックの上に跨ると、ひくつく蕾にハボック自身を押し当てる。
「たいさ…っ」
「挿れたいんだろうっ」
 挑むようにそう言うとぐっと腰を下ろした。
「あっあああっ」
 ぐぐぐとめり込んでくる熱い塊にロイは背を仰け反らせて喘いだ。それでも根元まで一気に埋め込むと、休む間もなく腰を揺らめかせる。
「あっ…んっ…あふっ…」
「アンタってば…サイコー…」
 くすりと笑うとハボックはロイをグイと突き上げた。
「ああっ…ハボっ…イきたいっ」
 ロイの言葉にハボックが視線を落とせば熱をせき止められて真っ赤に膨れ上がったロイ自身がゆらゆらと揺れていた。
「いっスよ…イって」
 そう言ってハボックはガンガンと突き上げながらロイを縛める紐を解いた。
「あっ…イくぅ…イく…っっ」
 びゅるんと熱を吐き出しながら小刻みに体を震わせるロイをハボックは情け容赦なく突き上げる。
「あっ…いやっ…やっ…またイっちゃうっ」
 快感に全身を支配されて悶えるロイの耳元にハボックは囁いた。
「もう二度と冗談でもオレと別れたいなんて言えないようにしてあげますよ…」
 その囁きにロイはうっとりと笑うとハボックに縋りついていった。


2007/03/29


万愚節っていうのはエープリールフールのことです。しかし、ロイってば、キツイよ、その嘘!って自分で言わせてるんですが(苦笑)思いかけずえっちになだれ込んでしまいました。ない予定だったのにorz。無駄な努力ってことですね(がくー)ともあれハボロイ版エープリールフールネタでございました。