11. 掌


 彼の掌が触れる。からかうように髪をくしゃりと一混ぜして、離れていく。
 彼の掌が触れる。宥めるように背中を撫でて、離れていく。
 彼の掌が触れる。励ますように肩を叩いて、離れていく。
 彼の掌が触れる。気遣うように手を握って、離れていく。
 優しく、親しみを込めて、触れては離れていく彼の掌。本当はもっと別の場所に触れて欲しいと思ってるなんて、これっぽっちも気づきはしないから。
 強請るように、祈るように、願うように見つめても、彼は決して気づかないから。
 だから、今夜も自分で触れてみる。己の掌を彼の掌と思いこんで。ベッドの上、掌で己の躯を探る。首筋を辿り胸へと滑らせ。プクリと立ち上がった胸の頂を掌で押し潰せば唇から零れる熱い吐息。何度もさすって乳首がイヤラシく濃い色に染まりコリコリとした痼になるまで掌で潰して、そうまでしてから下へ下へ。腹を辿り叢から頭を擡げる楔を両の掌で包み込む。ゆっくりと扱けば掌の中で嵩を増して熱く息づいて。
「    」
 彼の名を呼びながら包み込んだ掌で己を高めていく。こうして、こうやって触ってとイヤラシく強請りながら。
 掌が。
 彼の掌が。
 強くきつく扱いて、己を高みへと誘って────。


 掌で熱く弾ける己の熱を受け止めて、今夜も一人涙を零した。


2012/07/26