06. 唇


(大佐の唇って綺麗な形してるよな)
 打ち合わせの席、皆に向かって話をするロイの唇を見ながらハボックは思う。色素の薄い唇は口角がスッと上がって、黙っているとうっすらと微笑んでいるように見えた。
(あんな形だから大佐に黙って見つめられると女の子達みんな、コロッとヤられちゃうだよな)
 黒曜石の瞳と相まってうっすらと笑みを刷いたような唇はとても魅力的だ。じっと見つめられるとそれだけで鼓動が速まるような気がする。
(女の子達だけじゃなくてオレもだけどさ……)
 例えばロイを呼び止めた時、何も言わずに振り向くそれだけの事にドキドキしてしまう。その唇が己の名を刻めば尚の事だ。そんな事を考えていたハボックは、不意に夕べの甘い時間を思い出してしまった。
『ハボック』
 あの唇が己の名を呼ぶ。そうしてうっそりと己の唇に重ねられれば、もうハボックは逃げることが出来なかった。
『大佐っ、灯りッ!』
 柔らかい灯りに照らされたリビングのソファーに押し倒されて、ハボックは精一杯の抵抗をしてみせる。だが、ロイの唇が首筋に押し当てられればもう何も考えられなかった。
『可愛いよ、ハボック……』
 ロイはそう囁きながらハボックの肌に唇を這わせる。ロイのあの唇が触れているのだと思うと、ハボックはたまらなく興奮し自ら脚を開いて強請った。
『たいさぁ…ッ』
『仕方のない奴だ』
 クスクスと笑ったロイは、それでもハボックが強請るままにその唇をハボックの楔に這わせる。奥まった蕾に口づけるように唇が寄せられた瞬間、ハボックはあっけなく果ててしまった。
(だって、大佐の唇、ヤらしいんだもん)
 あの後からかわれながらも唇だけで散々に喘がされてしまった。ハボックが這い回るロイの唇の感触を思い出して熱いため息をついた時。
「ハボック」
「ヒャッ!!」
 不意に耳元で呼ばれてハボックは飛び上がる。すぐ間近に迫るロイの唇に、ハボックはカアッと真っ赤になった。
「何をぼーっとしている?打ち合わせはとっくに終わったぞ?」
 そう言われて慌てて辺りを見回せば一緒に話を聞いていた筈のブレダ達の姿がなかった。
「あ、あれっ?みんな、いつの間に…っ」
 ハボックはブレダ達を追って急いで執務室を出ようとする。だが、ロイの腕がそれを阻んでハボックを引き留めた。
「何を考えていた?ハボック……」
 クイとハボックの顎を指先で掬ってロイが聞く。ギクリとして困ったように視線をさまよわせるハボックに、ロイはククと笑って言った。
「仕方のない奴だ」
 ロイはそう言うとハボックの耳元に唇を寄せる。柔らかい耳朶を唇で挟んで言った。
「きちんと任務をこなしてきたら、お前の欲しいものを好きなだけやろう」
「アッ!」
 ロイの声が唇を震わせてハボックの耳朶も震わせる。ギュッとロイの軍服にしがみつくハボックに、ロイはうっすらと笑って言った。
「出来るな?ハボック」
「……アイ・サー…」
 ハボックは震える声で答えてロイの唇を見つめる。笑みを刷く唇にそっと触れると、ハボックは執務室を飛び出していった。


2010/04/30