冷えた指先


「大佐……」
 ベッドに組み強いた細い体に圧し掛かってハボックは囁く。低い声にピクンと震えるロイに、ハボックはうっすらと笑って白い項にキスを落とした。
「……んっ」
 触れた肌はひんやりと冷たい。ロイは常から体温が低かったから、最初のうちハボックは自分ばかりが熱を上げ興奮しているのではないかと思ったものだ。だが、幾度となく肌を合わせた今では、ロイの肌の冷たさは内心の熱さとは裏腹なのだと知っていた。
「大佐……たいさ……」
 ハボックは囁きながら唇を項から耳へと移動させる。白い耳朶をカリと噛めばロイの体が震えた。ハボックは執拗に耳朶に歯を立て、舌を這わせる。何度も繰り返せば白かった耳朶がほんのりと桜色に色づき、そうなってやっとハボックは耳朶から唇を離した。
 普段はひんやりと冷たいロイの肌もこうしてハボックが丹念に愛撫を施せば、ほんのりと色づき熱を帯びてくる。ハボックはロイの白い肌に灯を灯し、桜色に染めていくのがなによりも好きだった。
「好き……」
 囁いてハボックは首から肩へと舌を這わせる。時折キュッときつく吸い上げると白い肌に紅い花びらが散り、そこからロイの体に熱が灯っていくのだった。
「あ……ふ…」
 体に灯る熱を逃がそうとするかのようにロイが熱い吐息を零す。それをうっとりと聞きながらハボックは鎖骨の窪みに舌を這わせた。細い体に鎖骨がくっきりと浮かび上がり艶めかしい陰影を作り出している。その艶めかしさに誘われるようにハボックは綺麗な鎖骨に歯を立てた。
「アッ?くぅ…ッ」
 クッと歯を食い込まされてロイが眉根をを寄せる。それでも噛まれた場所にチロチロと舌を這わせられれば、薄く血の滲むそこにもじんわりと熱が灯りロイの唇から吐息が零れた。チロチロと鎖骨を舐めた舌先が、ゆっくりと滑り降りてロイの胸の飾りにたどり着く。桜色した小さな果実にねっとりと唾液を塗し甘く噛んで指先で捏ね回せば、果実はたちまち熟れて真っ赤に色づいた。
「んッ、……んふ…っ、ハボック…やっ!」
 甘い刺激にロイがふるふると首を振る。そこから灯る熱は肌に散る紅い花びらから沸き上がる熱よりずっと熱く甘かった。
「アッ、……ふぅ、ん……ッ、ハボ……ッ」
 ロイが切なくハボックを呼びながらハボックの肩や腕に触れる。まだ冷たいままの指先を感じて、ハボックは舌を這わせていた乳首に思い切り歯を立てた。
「ひゃあんッ!」
 すっかりと熟れた果実は弾力を持ってハボックの歯を押し返す。それが気に入らないというようにギリと歯を立てれば、ロイが悲鳴を上げた。
「ハ…ボ……ッ」
 ギュッと冷たい指先が逞しい肩に食い込んで、ハボックは漸く乳首から唇を離す。真っ赤に腫れ上がった果実から沸き上がった熱は、今ではロイの全身を桜色に染めていた。それでもなお、まだそこだけは冷たい指先を、ハボックは恭しく取るとねっとりと舌を絡ませる。あんなに熱く美しい焔を生み出す指先がこんなに冷たいのが、ハボックはいつも不思議だった。
「アンタの指……なんでいっつもこんなに冷たいんスか?」
 ねっとりと舌を這わせながらハボックが尋ねる。繰り返される愛撫にぼんやりとハボックを見上げて、ロイが答えた。
「そんなの、知らな……、ア…ッ」
 白く節の目立たない指を甘く噛まれてロイは喉を仰け反らせる。ピチャピチャと音を立てて唾液で濡らした指をハボックはロイの股間へと導いた。
「ほら…ここに挿れて…?アンタの中、すげぇ熱いから…きっとすぐ暖まるっスよ…?」
 耳元に囁いてハボックはロイの指を蕾に宛がう。間接の上から押すようにして白い指を蕾の中に押し込んだ。
「…ッ!!……ヤッ、やあッ!!」
 自分の指を押し込まれてロイが慌てて指を引き抜こうとする。だが、ハボックは手のひら全体を己のそれで押さえ込むようにして抜くのを許さなかった。
「ハボックっ、嫌ッ、こんな……ッ」
「中…すげぇ熱いっしょ?ほら、かき回してみて…?指が熱くなるように……」
 ハボックはそう言うとロイの指に添えるように己の指を潜り込ませる。目を見開いて仰け反るロイを押さえ込んで、ハボックはロイの指ごと蕾を掻き回した。
「アアッ…!……や、あんッ!……ハボ…ッ、ハボック!」
 グチグチと掻き回されてロイがビクビクと震える。己の指にねっとりと絡みつく熱く濡れた肉襞の感触と、蕾を押し広げる冷たい指の感触と、両方を同時に味わわされてロイはおかしくなりそうだった。
「やっ……抜いてッ、ハボ!」
「駄目……アンタの指、まだ冷たいまんまっスもん」
 ハボックは言って一緒に埋め込んだ己の指でロイの指を撫でる。こんなに熱い肉の中に埋め込まれてまだなお冷たい指先に、ハボックは首を傾げた。
「オレの指はアンタの体液に塗れてもうこんなに熱いのに、ホント不思議……」
 呟くように言うハボックをロイは喘ぎながら見上げる。自由な方の手でハボックの背中を抱き寄せて言った。
「お前……まだ気づいてないのか…ッ?」
「……なんスか?」
 聞かれてハボックは桜色に頬を染めるロイを見下ろす。ロイは息を弾ませながら答えた。
「……お前を感じてる時だけ…私は熱くなれるんだ……私に熱を灯すことができるのはお前だけだ、ハボック……」
「……大佐」
 熱っぽく囁く声にハボックは目を見開く。それからうっとりと笑ってハボックは言った。
「そっか……いつもこの時だけは大佐の指も熱くなってたっスね」
 ハボックはそう言うとロイの指ごと己の指を引き抜く。白い脚を押し開いて、戦慄く蕾に滾る自身を押し当てた。
「アンタの事、髪の毛から指先まで全部熱くしてあげる……」
 囁くと同時にハボックはロイの中に楔をねじ込む。押し入ってくる熱い塊にロイは背を仰け反らせて悲鳴を上げた。
「ヒャアアアアアッッ!!」
 一気に突き入れたと思うとそれと同じ勢いで一気に引き抜く。抜け落ちるギリギリのところから再び根元まで突き入れて、ハボックは容赦なくガツガツとロイを攻め立てた。
「アアッ!!ヒ、イ…ッ!!アア───ッッ!!」
 高い嬌声を上げてロイは身悶える。熱く絡んでくる肉を押し広げるようにグラインドさせながら突き上げれば、ロイの唇から零れる声が一際高くなった。
「アッ、くぅん…ッ!ハボ…ッ!!」
 啼いてロイがハボックの背を抱き締める。ロイの指が触れた箇所から火がつきそうで、ハボックはうっすらと笑みを浮かべた。
「たいさ……たいさ…ッ」
「熱い……融けちゃう…ッ」
 犯される箇所から沸き上がる熱が全身に広がっていく。どこもかしこも熱く熱せられたロイに、ハボックの熱も更に上がっていった。


 深くふかく融け合って高め合った熱が嘘のように二人は静かに互いを抱き締める。まだ余韻でほんのりと熱の残るロイの体の中で、指先だけはもう随分と冷たかった。
「さっきはあんなに熱かったのに……」
 そう言ってチュッと指先にキスを落とすハボックにロイが言った。
「いいじゃないか、あの熱さを知ってるのはお前だけなんだから」
「大佐……」
 言って笑う黒曜石の瞳に、笑い返してハボックは愛しそうに冷たい指を握り締めた。


2010/11/19


お題6「冷えた指先」です。いや単に自分の指を挿れるロイが書きたかっただけっていう……。このタイトルなら他に色々書きようがあるものをと思いつつ、まあこんなのがあってもいいんじゃないかってことで(苦笑)