「た、いさぁ…っ」
 ベッドの上でハボックが身を捩る度、彼の腕をベッドに括りつけた鎖がじゃらじゃらと鳴る。そうすればハボックの楔がその音に答えるようにとろとろと蜜を零した。私はハボックの声を無視して押し広げていた長い脚を更に開くとそそり立った楔にねっとりと舌を這わせる。零れた蜜でしとどに濡れた蕾がヒクヒクと物欲しげにひくつくのが見えて、私は指の腹でその可愛らしい口を何度も撫でてやった。
「たいさっ」
 答えない私にハボックが切羽詰ったような声を上げる。私は誘われるままにひくつく口に唇を寄せながら答えた。
「なんだ?」
「ヒッ……アッ」
 その途端、ハボックの体が大きく揺れて悲鳴のような声が上がる。ハボックはピクピクと体を震わせながら言った。
「そこで喋んないでくださ……アアッ」
「お前が呼んだから答えたんだろう?言いたいことがあるならさっさと言え」
 蕾の近くで話すことでかかる息や伝わる振動がハボックの快感を刺激することを気付いていながらわざと喋り続ける。ハボックは腕を繋ぐ鎖をじゃらじゃらと鳴らしながら悶えた。



――― 
首輪 ―――



 私とハボックは暫く前から所謂恋人同士という関係だったが、ハボックが鎖の音に欲情する事を知ったのはほんの偶然からだった。街で悪戯小僧どもが振り回した鎖から私を庇おうとしたハボックの腕に巻きついた鎖が、その飄々とした外見の下にコイツがひた隠しにしていた過去を呼び覚ましたのだ。腕から垂れる鎖が鳴らす音に欲情したハボックはその事実を私に知られる事を恐れて逃げようとしたが、結局は全てを私に白状することとなった。
 子供の頃、見知らぬ男に廃屋へ連れ込まれ、鎖で繋がれた上、散々に性器と蕾を嬲られた事。
 それ以来鎖の音を耳にするたび勃起するようになってしまった事。
 涙ながらにそれを話すハボックを見るうち、そんな酷い目にあった幼いハボックを可哀想に思うと同時に私の中によからぬ感情が湧き起こってきた。それはハボックの心に己を深く刻み込んだ見知らぬ男への嫉妬であり、また、同じようにハボックを支配したいと思う欲望だった。ハボックは幼い時の出来事を私に知られる事で私に愛想をつかされることを恐れていたようだが、その事実は愛想をつかすどころか私により強い支配欲を抱かせた。
そうして私はその支配欲が導くままにハボックを子供の頃に悪戯されたのと同じ方法で抱き、またそれ以上の快楽を与える事でハボックの記憶を塗り替える事に成功した。
 ハボックは私が鳴らす鎖の音に欲情するようになったのだ。私が鳴らす鎖の音だけに。


「はあ…ん、……た…さぁっ」
 じゃらじゃらと鎖を鳴らしながらハボックが私を呼ぶ。その舌足らずな甘えた声に私はうっそりと笑った。熱に蕩けた表情も甘えきった声も私だけが知っているものだ。普段のハボックを知っている者にもこんなコイツは想像だに出来ないだろう。
 私はハボックの脚を押し上げるとその蕾を己でつついてやる。そうすればハボックが強請るように腰を押し付けてきた。
「なんだ、もう欲しいのか?」
「ん……ホシ…」
 からかうように言えばハボックが素直に答える。理性が残っている間は頑ななその唇も、熱に蕩けてしまえば酷く素直にその欲望を吐き出した。焦らすようにハボックを繋ぐ鎖をじゃらりと鳴らせば、ハボックがうっとりと私を見上げる。そのまま鎖を弄る事だけに専念してハボックを放っているとハボックがぐずるように鼻を鳴らした。
「たいさ…ぁっ……は、やくぅ…っ」
 そう言いながら私の楔に蕾を押し付けるハボックにクスクスと笑えばハボックが恨めしそうに睨んでくる。いい加減焦らすのにも飽きてハボックが押し付けてくる動きに合わせてぬぷと押し込んでやれば、ハボックが背を仰け反らせて喘いだ。
「アアッ……アアアッッ!!」
 熱い肉が押し包んでくる感触がたまらない。もっともっと快楽を貪りたくてガツガツときつく突き上げればハボックの唇から嬌声が零れた。
「ヒアアアッ!!……たいさっ……ああんんっ…スキッ…た、いさっ、スキ…ッッ!!」
 私が与える快感に身悶えながらもそんな可愛いことを口走るハボックに噛み付くように口付ける。舌を差し入れれば差し出されるハボックのそれをきつく絡め取った。
「んっ……んっ…んん――ッッ」
 腕を繋がれている為縋りつけないハボックは必死に鎖を引きながら私の腰に脚を絡ませる。揺するように中を抉ってやると耐え切れずにハボックが熱を迸らせた。
「ヒャアアアアッッ」
 びゅくびゅくと二人の腹に白濁をぶちまけながらハボックが喘ぐ。達して小刻みに震える体を容赦なく突き上げるとハボックが悲鳴を上げた。
「ヤアアッ!…待っ…!アアッ……無理ィッ!ヒ…ッ、ヒィイッ!!」
 きつい快楽に身悶えてハボックが啼く。待ってくれと哀願する声を無視して更にきつく突き上げるとハボックが再び熱を吐き出した。
「なにが無理だ、こんなにきゅうきゅう締め付けてくるくせに」
 クスクスと笑いながら突き上げる私をハボックが涙に滲む目で睨んでくる。そんな瞳が余計に私を煽ると言う事にいつになったらこの可愛い犬は気付くのだろう。
「アッ……ああんっ、たいさ…っ、やああんっっ」
 啼きながら悶えるハボックをきつく突き上げると、その最奥へ熱を叩きつけた。


 珍しく朝早く目が覚めた私は一人ベッドから抜け出すと服を身につける。ぐっすりと眠っているハボックにチュッと口付けたが、むずかるように眉を顰めただけでまたスウスウと眠ってしまった。夕べたっぷりと愛してやったから恐らくハボックはまだ当分目を覚まさないだろう。私はブランケットを巻きつけて丸くなっているハボックの髪を優しく撫でてやると階下へと下りた。
 庭に出て朝の爽やかな空気を吸っているとバウワウと犬の吠え声が聞こえる。ザザザッと木がこすれる音がして、大きなレトリバーが庭に飛び込んできた。
「マロン」
 それは隣の老婦人が飼っている犬で、ナリはデカイがまだ子供のその犬は嬉しそうに私の回りを跳びはねる。よく見ればその大きな口に何かを咥えていて、なんだろうと手を出せばマロンが咥えていたそれを私の手の上に落とした。
「首輪?」
 それは真っ赤な革製の首輪でリードを通す為の輪がついていたが、今は何も通っていなかった。マロンは私の前に行儀よく座ると褒めてくれるのを期待するように私を見上げてくる。その金色の頭をワシワシと撫でてやればマロンは嬉しそうに目を細めた。
「私にくれるのか?」
 そう尋ねればマロンがワンッと吠える。そうして立ち上がるといそいそとシッポを振って帰っていった。そう言えばマロンは首輪が大嫌いなのだと老婦人が言っていたことを思い出す。恐らく嫌いなそれを視界から消し去ろうというだけの理由で置いていったのだろう。一瞬返しに行った方がよいだろうかと思ったが、せっかく持って来てくれたことでもあり有難く貰ってしまう事にした。それと言うのも楽しい考えが浮かんだからだ。私は浮かんだ考えにクスクスと笑いながら家の中へと戻った。


 寝室に戻るとハボックはまだブランケットを巻きつけて眠っていた。私はハボックの頭を少し持ち上げると手にした首輪を通し、バックルを止める。そうすれば私のものだという所有の証となった首輪はハボックの白い肌にとても似合って見えた。
「ふふ…可愛い犬だ」
 そう呟いて髪を撫でればハボックが眉を寄せる。またそのまま眠ってしまうのかと思いきや、今度はゆっくりと開いた瞳がぼんやりと私を見上げた。
「た、いさ…?」
「目が覚めたか?」
 頬を撫でてそう尋ねればハボックが甘えるように顔を寄せる。その拍子に首輪が肌に当たったのだろう、訝しげに首をさすったハボックは驚いたように目を丸くした。
「なんスか?これ…」
 隙間に指を入れてクンと引いてみても取れないそれにハボックは不安そうに私を見る。そんなハボックに優しく微笑み返すと言った。
「首輪だよ、ハボック」
「く、びわ?」
 言われたことが判らないと言うようにキョトンとするハボックに手を差し出せばハボックが私の手を取る。グイと引き起こしてハボックをクローゼットの傍まで連れて行くと扉を開けて中の鏡にその長身を映して見せた。
「ほら、よく似合っているだろう?」
 そう言えば鏡の中のハボックがその空色の瞳を大きく開いて見つめてくる。ポカンとした表情を浮かべたままハボックは手を首輪に添えるとそっとそれを引っ張った。
「な…に……?」
 呆然とした体で首輪を引っ張っていたハボックは次の瞬間ようやく首輪を嵌められたのだという事実を理解したかのように乱暴に首輪を引く。バックルを外そうと鏡越しに金具をさぐるハボックに私は言った。
「外すな」
「な…っ、たいさっ?!」
 首輪を引っ張りながらハボックは弾かれたように振り向くと私を見る。何度か短い息を吐き出すと振り絞るように言った。
「や…ヤダッ、こんなのっ!外してくださいッ!」
「どうして?お前は私のものなんじゃないのか?」
「そっ、それはっ……そ、スけ、ど……」
 紅い顔で答えるハボックは羞恥からか声が小さくなっていく。首輪を握ったまま俯いていたが意を決したように顔を上げると言った。
「オレは確かに大佐のもの、っスけどっ!でも、こんなものつけなくたって…っ」
「印が欲しいんだよ、ハボック。印が」
「印なんてなくったってオレはアンタのものっス」
 まっすぐにみつめてくる空色の瞳に嘘はないだろう。だが、私は伏せ目がちに笑うと言ってやった。
「ああ、判っているとも。だがハボック、それでも不安になるんだよ、時々堪らなくね…。今日だけでもいい、つけていてくれないか…」
「たいさ…」
 私の言葉にハボックは困ったように視線を彷徨わせる。ハボックが最終的には私に酷く甘いことも、私のこの声音に弱い事もよく知っていた。それを最大限に生かしてそう強請れば、結局ハボックは小さなため息と共に折れた。
「……今日だけ、っスよ?」
「勿論だよ、ありがとう、ハボック」
 私はにっこり笑って礼を言うとハボックの頬に口付ける。紅く染まった頬を撫でてやると私はハボックの傍を離れ引き出しの中から鎖を一本取り出した。それを持ってハボックに近づけば空色の瞳が不安そうに揺れる。私は安心させるように笑うとその髪をそっと撫でた。
「首輪にはリードが必要だろう?」
「リード…って、それ、繋ぐんスかっ?」
「せっかく首輪をつけたんだからな。お前の好きな鎖のリードをつけてやろう」
 そう言えばハボックが怯えたように後ずさる。ふるふると首を振るハボックの前で、私はにっこりと笑うと鎖を弄んだ。
「ハボック」
 そう名を呼ぶと同時に手にした鎖を鳴らす。じゃらんと音を立てればハボックの体が大きく震えた。
「おいで」
 ハボックは大きく目を見開いたまま凍りついたように動かない。普段のハボックはその態度にも係わらず酷く常識的であったから今の理性を保った状態で私の要求に応じるのは難しかったろう。だが。
「ハボック」
 うっそりと微笑んでハボックを呼ぶ。手にした鎖の一端をわざと床に落とせばじゃらんと一際大きな音が響いた。
「……ッッ」
 ビクッと震えて、ハボックはゆっくりと私の方へ近づいてくる。手の届く距離までくると肩に手を置いて跪かせた。
「たい、さ」
 浅い呼吸を繰り返して不安そうに見上げてくるハボックの髪を優しく撫でてやる。紅い首輪の輪に鎖を止めればハボックの体が小刻みに震えた。
「ハボック、私の可愛い犬」
 そう言ってハボックの前に膝立ちになるとその金色の頭を抱きしめてやる。怯える空色の瞳に口付けると言った。
「今日は一日四足で過ごすんだ。それと言葉も無しだからな」
「な…ッ?」
「犬は二本足で歩かんし言葉も話さないだろう?言いたい事があるなら身振りで伝えるんだ」
 私の言葉にハボックは大きく目を見開くと激しく首を振る。
「ヤダッ、そんな――ッ、ヒゥッ」
 拒絶の言葉を吐こうとするハボックの首輪を鎖でグイと引き上げる。そうすれば自然と首が絞まってハボックは悲鳴を上げた。
「言う事を聞かない犬は厳しく躾ないといかん」
 そう言えばハボックが大きく目を見開く。涙の滲むその綺麗な空色に、私はうっとりと笑うと囁いた。
「愛しているよ、ハボック」
 その言葉を聞いた途端、その瞳からパタパタと涙が零れ落ちる。そっと指で拭ってやると甘えるように頬をすり寄せてきた。ひとしきり撫でてやった後、立ち上がると抽斗からもう一本鎖を取り出す。私の動きを目で追っていたハボックに微笑み返せば私の意図を察したらしく小さく首を振る。それでも蹲ったまま逃げないハボックの傍に跪くと言った。
「犬には尻尾が必要だ。そうだろう?ハボック」
 そう告げる私の頬にハボックが濡れた頬を何度も擦り付ける。恐らくは私の翻意を期待してのことだろうが、私にとってむしろその仕草は強請っているようにしか見えなかった。
「ハボック」
 呼ぶ声にビクリと体を震わせて、だがハボックは従順に私に背を向ける。指先で背骨を辿り双丘のはざまを通って蕾に辿り着くとクッと指先を潜り込ませた。
「ぅんっ」
 昨夜の行為でまだ緩くほどけていた蕾は私の指を難なく飲み込む。暫くの間クチクチと弄ってから手にした鎖の端を指と入れ替えに潜り込ませた。
「ん―――ッッ」
 背を仰け反らせるハボックの蕾に抜け落ちない程度まで鎖を埋め込むと手を離す。そうすれば紅い首輪に鎖のリードをつけ、鎖の尻尾を生やした私だけの犬が出来上がった。
「ふ……う……」
 床に伏せたまま震えているハボックの金色の頭を撫でてやるとリードを引く。
「行くぞ」
 そう言えばハボックは諦めたように腰を上げた。


 四足で階段を下りるのは相当に恐怖を煽るらしい。階段を下りようとした私にハボックは付いてこようとしなかった。首を振って脚を突っ張るハボックをグイと引けば細い泣き声を上げる。それでも強引に引いて下りれば階下に下りきった頃にはハボックは全身に汗をかいてぐったりと消耗しきってしまった。よろよろとリビングのラグの上に蹲るとそっと瞳を閉じる。そのままスウスウと眠り込んでしまったハボックを無理矢理起こそうかとも思ったが、流石にそれは可哀想かとそのまま放っておいた。脚を折り曲げ、腕の上に顎を載せて眠る姿は本当に犬のようだ。金色の髪の中に三角の耳が隠れているように思えて何度も髪を梳けばむずかるように首を振った。
 ハボックが眠っている間に軽く食事を済ませてしまう。暫くはハボックを眺める事で退屈を紛らわせていたが、流石に厭きて揺すり起こした。
「ん…」
 ゆっくりと開く空色の瞳に笑いかければハボックがうっとりと笑う。だが、次の瞬間自分の置かれた状況に気付いたようでその顔から笑みが消えた。
「腹がすいたろう。待っていろ」
 私はそう言うと皿にスープを注いだものを持ってくる。ハボックの鼻先の床に置いてやればハボックが困ったような顔で私を見た。
「犬がどうやって食べるか、知っているだろう?」
 そう言えばハボックはじっと私の顔を見つめていたが、フイと顔を背けると床の上の皿を見る。顔を寄せて舌を差し出しぴちゃりと舐め始めるハボックの頭を、私は優しく撫でてやった。
「いい子だ」
 ぴちゃぴちゃと半分ほどもスープを食べるとハボックは私の方へ皿を押しやる。それっぽっちの量ではとても足りたとは思えなかったがハボックは首を振ってそれ以上食べようとはしなかった。
 仕方がないので皿を片付けにキッチンへと行けばハボックが後からついてくる。じゃらんと床をこする鎖に困りきったように唇を噛み締めると私の脚に顔を擦り付けた。
「どうした、興奮したか?」
 笑いを含んだ声で意地悪くそう尋ねるとハボックが悔しそうに睨んでくる。その股間に目を向ければ絶えず後ろを刺激されている事と鎖の音に、ハボックの中心は緩く勃ちあがっていた。
 私は皿を流しにいれてしまうと床に垂れていたリードを拾い上げる。クイと引けば紅い首輪がハボックの首を絞め、否応なしにハボックは私について歩き出した。リビングを通り廊下を抜けると中庭に出る扉の前に立つ。外へ出ようとノブに手を伸ばそうとするとハボックが必死に後ずさってリードを引いた。
「ハボック」
「んーッッ!!」
 嗜めるように呼んだがハボックは首を激しく振って後ずさろうとするばかりだ。言う事を聞こうとしないハボックに苛立ちを感じて強引にリードを引くとハボックが悲鳴を上げた。
「ヒッ……ィッ!」
 紅い首輪がハボックの肌に食い込んで苦しそうだ。私は暫くの間強引にリードを引いていたがどうしても言う事を聞こうとしないハボックの姿に無理矢理引いて出ることを諦める。その代わりにリード代わりの鎖を首輪から外すとハボックをそのままに扉を開けて中庭へと出て行った。
 じゃらじゃらとわざと鎖を引き摺って庭へと出て行けばハボックが食い入るように私を見ているのが感じられる。庭の真ん中まで出ると振り向いてハボックを呼んだ。
「おいで、ハボック」
 呼ぶと同時にじゃらんと鎖を鳴らす。ビクッと大きく震える様子がここからでもはっきりと見て取れた。欲と絶望に濡れた綺麗な空色の瞳にゾクゾクする。ふるふると首を振っていたハボックは、だが私が更に大きく鎖を鳴らせばその動きを止めて私を見つめた。迷うように何度も瞬いていたが、やがて熱に浮かされたような足取りで陽の光が降り注ぐ庭へと出てくる。私の足元までやってくると涙の滲む瞳で私を見上げた。
(たいさ)
 声には出さず、唇の動きだけで私を呼ぶ。
(たいさ……たいさ)
 縋るように求めるように私を呼び続けるハボックの首輪を撫でながら私は尋ねた。
「欲しいか?私が」
 そう聞けばハボックがコクコクと頷く。首輪に触れていた私の指をぴちゃりと舐めると咥えこんだ。
「ん……ふぅ…」
 赤い舌を差し出しピチャピチャと舐める。金色の睫に宿る涙に誘われるようにハボックの目元を舐めればハボックが私を見上げた。もの欲しそうに差し出される舌に己のそれを絡めてやればハボックの表情が蕩ける。さいしょのうちは互いに差し出した舌を絡め合っていたが徐々に深くくちびるが合わさり、気がつけばハボックを庭の芝の上に押し倒していた。ハボックの後ろに手を回し埋め込んでいた鎖の端を掴むと一気に引き抜く。
「ヒアアッ!」
 悲鳴を上げて仰け反る体を押さえつけると、長い脚を押し上げ緩く開いた蕾に己を押し当てた。そうすれば腕を伸ばして縋りついてくる体を一息に貫く。
「アアアアアッ!!」
 ハボックの唇から嬌声が迸り、その瞳からポロポロと涙が零れた。
「ああんんっ……っ、ヒャ、アッアッ…アアッ」
 陽光の中にハボックが快楽に溺れたその顔を晒す。まるで首輪から零れ出た紅で色づいたように肌が桜色に染まってとても綺麗だった。抉るように突き上げればハボックが悶えて私の背に回した手でシャツを握り締める。何度目かに突き上げた時、ハボックが耐え切れずに熱を吐き出した。
「ヤアアアッ!!」
 ビクビクと震える体を容赦なく揺さぶり激しく突き入れる。私の腕から逃れようともがくハボックの体を引き戻してその最奥を犯した。
「ヒ、ィッ…ッ、……いっ……アンッ、ヤアッ…た…っ!」
 切ない声をあげる唇を塞ぐとグイと己を捻じ込む。ハボックの体が痙攣するように細かく震えて私の腹に生暖かいものがぶちまけられるのを感じた。
「イ、アッ……やぁ…ッ、ヤッ」
 ハボックが泣きながら首を振るたび空色の涙が飛び散る。熱に濡れたハボックの中心を握り締めてきつく扱けばハボックが泣き叫んだ。
「ヤッ、ぁあ!……や…ッ、アッ……アア―――――ッッ!!」
 快楽に震える体から無理矢理に快感を引きずり出す。私の手の中にハボックがまた熱を吐き出した。
「ヒ……ひぅ……ッ」
「ハボック…私の可愛い犬…」
 啼き叫ぶ耳元にそう囁けばハボックの体が大きく震える。逃げるように悶えていた体から力が抜け、ハボックは力なく私の腕に縋りつきながら喘ぎ続けた。
「ふ……んぁアッ…ッアア…ッッ」
 情欲と涙に濡れた瞳が私を見つめハボックは腕を私の首に伸ばす。
(たいさ)
 声にならない声が私を呼んで、強請るように開かれる唇に己のそれを重ねると同時にハボックの奥底に楔をねじ込む。狭く熱い絡みついてくる内壁に、私は熱を叩きつけた。


 明るい陽射しの中、散々に貪れば気を失うように意識を手放してしまったハボックを家の中に運び込む。首輪を外しシャワーで体を清めてやるとベッドにその体を横たえた。外した首輪をもう一度付け直すか迷って結局ベッドサイドのテーブルにそっと置く。そのまま暫く待っているとハボックがゆっくりと瞳を開いた。
「大丈夫か、ハボック」
 そう言って頬を撫でてやればまだぼんやりとしたままのハボックは甘えるように目を細める。少ししてそっと首に手をやり首輪がない事にホッと息を零すハボックを甘やかすように撫でながら言った。
「淋しいか、首輪がないと」
 からかう様にそう言えばハボックが睨んでくる。それに笑い返して首輪で少し擦れて紅くなってしまった首筋をそっと撫でた。
「よく似合っていた。次は別の色を買ってやろう」
「首輪はもう嫌っス」
 恨みがましく私を見上げる空色の瞳に「おや」と言う視線を向ける。
「随分興奮してたじゃないか」
 決して私の思い込みではないだろうと意地悪くそう尋ねればハボックがフイとそっぽを向いた。顎を掴んでこっちを向かせるとハボックが諦めたようにため息をつく。
「だって、大佐のこと、呼べないんスもん」
 拗ねたようにそう言うハボックを見つめればハボックは頬を染めて続けた。
「大佐、って呼べないの、すっげぇツライんス。いっぱい呼びたいのに…っ」
 紅い顔で瞳に涙を滲ませてそんな事を言うハボックに噛み付くように口付ける。ひとしきりその唇を貪った後、耳元に囁いた。
「じゃあ、今度はひとつだけ犬に言葉を覚えさせよう。私の名を、な…」
 それを聞いて嬉しそうに笑うとギュッと縋りついてくるハボックを私は再びベッドに押さえ込んだのだった。


2008/10/09


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


お題「04.首輪」です。「鎖」の続きですが一応コレだけでも読めるかな。それにしても何となくこう、マニアックな方向に向かっているような(苦笑)ハボ、なんだかすっかりM入ってるし(汗)まぁ、お題がお題だから仕方ないか。