ポトン。
 グラスの中に落とした錠剤は瞬く間に細かな泡となって消えていった。



―― 薬 ――



「本当に可愛いんだ、アイツは」
 そう言ったロイがグラスに口をつけながら笑う。酔っている所為かいつもより饒舌になっている親友の顔をヒューズは見つめて肩を竦めた。
 女性との噂には事欠かない、女タラシと言うのはこういうヤツのことを言うんだろうと思っていたロイが、こともあろうに自分の部下である男と恋人同士だということを知ったのは1ヶ月ほど前の事だった。最初に聞いた時は何かの冗談かと思ったヒューズだったが、付き合いはしても決して深入りする事のなかったロイのハボックへの強い執着にも似た愛情を見た時、これは単なる冗談などではないと言う事に気付いたのだ。
「カワイイねぇ。でもあのワンコだろ?」
 ヒューズが知っているハボックと言う青年はロイより頭半分ほども大きい、どこからどう見ても男にしか見えない相手だった筈だ。蜂蜜色ともいえる金髪に空色の瞳と言う外見は中々にハンサムとも言えるが、ガッチリした体つきは軍人らしく、かわいいという言葉とは無縁に思えた。
「可愛いんだよ。普段のアイツしか知らんお前には判らんだろうがな」
 そう言うとロイは秘密めかして笑う。そんな風に言われれば興味を持つなと言う方が無理だろう。
「へぇ、そりゃベッドの中でってことか?」
「……まあな。いくらでも啼かせたくなる」
 かわいいという言葉から何となく察せられてはいたが、ハボックの方がロイを受け入れる側らしい。もっともロイがハボックに抱かれる立場になるなどあり得ないから、そうなればハボックの方が抱かれる側に回るしかなく当然と言えば当然のことだろう。
「啼かせる………あー、わりぃ、俺にはカワイイハボック少尉なんて想像つかねぇわ」
「するな、馬鹿。あの可愛さは私だけが知っている私だけのものだ」
 まるで自慢するように「可愛いんだ」と言っておきながら勝手なことを言うロイにヒューズは微かに眉を寄せる。
「さいですか、ま、いくらでも啼かせてやってくれや」
 気のないような返事を返したヒューズの中にハボックへの興味がムクムクと湧き上がってきた。

「え?ホテルの部屋で、っスか?」
「ああ、今日、ロイは夜勤だろ?どうせ家に帰っても一人なんだし、淋しいオジサンに付き合えよ」
「はあ、まあ、イイっスけど」
 ハボックはプカリと煙を吐き出して頷く。手元の書類に目を落としながら言った。
「でも、この書類が終わったら、っスよ」
 そう言うハボックが持っている書類はかなり分厚い。ヒューズは眉を顰めて尋ねた。
「なんだ、急ぎの書類か?まだ大分かかりそうなのかよ」
「そっスねぇ。演習もあるしなぁ……。でも、泊まりで飲むなら別に多少遅い始まりでも構わないでしょ?」
 確かに普通に飲むならハボックの言う通りだろう。だが、ちょっと大きな声では言えないことを企んでいる身としては、なるべく早くにハボックを連れ出してしまいたい。
「仕方ねぇな、俺が手伝ってやるよ」
「は?中佐が?別に手伝ってもらわなくってもそこまで遅くはなんないと思うっスよ?」
 わざわざ出張で来ている上司の手を煩わせるなど考えてもみなくてハボックが言う。ヒューズはキョトンと丸くなった空色の瞳にズイと顔を寄せて言った。
「お前な、わざわざこの俺様が手伝ってやろうって言ってるんだぜ。ありがたく頭を垂れてお願いする、っていうのが筋だろうが」
「えー。どうせならホントに手伝って欲しいときに手伝ってくださいよ」
 押し付けがましい申し出にハボックが嫌そうな顔をする。その手から書類を奪い取ってヒューズは言った。
「煩い。四の五の言わずにさっさと演習行ってこい」
「まだ演習の時間には早いっスもん」
 ハボックはそう言って書類に手を伸ばす。ヒューズはその手の甲をピシリと叩いて言った。
「いいから行け!」
「無茶言わんでくださいよっ」
 まだ演習が始まるまで1時間はある。だが、ヒューズはハボックの腕を掴んで無理矢理立たせて言った。
「早めに行って装備の手入れでもしてりゃいいだろ。書類の事は俺に任せろ」
 そう言うヒューズをハボックは胡散臭そうに見つめる。
「……中佐、そんなにオレと飲みたいんスか?なんで?」
 ハボックにしてみれば極自然な疑問だろう。そう聞かれてヒューズはにっこりと笑った。
「それはほら、親友の部下と親交を深めようとだな」
 この上司には似合わない、じつに爽やかな笑みが反ってうそ臭く、ハボックは眉間に皺を寄せる。
「やっぱやめようかなぁ、行くの」
「……せっかくいい酒があるから誘ってやったのに、別に来たくないならブレダ少尉でも誘うからいいぜ」
「えっ?いい酒?だったら行くっス!」
「そう来なくっちゃ。ほら、書類の事は任せて演習行って来い」
 そう言われてハボックはピシッと敬礼して司令室を出て行く。あの時、やっぱりやめておけばよかったのだとハボックが思ったのは数時間後のことだった。

「わー、やっぱ佐官はいい部屋泊まってますね」
 ハボックがホテルの部屋に入るなり言う。後から続いて入りながらヒューズが笑った。
「ロイはもっといい部屋泊まってんじゃねぇのか?」
「あの人、部屋とってもすぐオレの部屋に来ちまうから……」
「………へぇ、少尉の部屋に?」
 聞かれて無意識に答えてしまったハボックは、背後から聞こえた探るような声にギクリとして振り向く。スッと眼鏡の奥で細められた常磐色の瞳に引き攣った笑いを浮かべて言った。
「あ、いや、ほら、色々打ち合わせとかあるでしょ。オレが行くより先に来ちまうんですよね、大佐、せっかちだからっ」
 ハボックは早口でそう言うとソファーセットに近づく。手にした酒のつまみが入った袋を示して言った。
「中佐、このテーブルでいいんスか?」
 明らかに話を逸らそうとしているのが判ったが、とりあえず追求せずにヒューズは答える。
「おう。そこに並べてくれや」
「はい」
 それ以上突っ込まれなかった事にホッとしてハボックは袋の中からパックを取り出す。テーブルの上に並べながら言った。
「ルームサービスもいいけど、ここのデリカ美味いんスよ。種類も多いし」
「そうだな、選ぶのに迷っちまった」
 ヒューズは答えてグラスと酒のボトルを持ってくる。アイスペールだけはルームサービスを頼むとハボックを促してソファーに腰を下ろした。
「ほら、少尉」
 ヒューズはグラスに氷と酒を注いでハボックに渡してやる。自分もグラスを手にするとハボックのそれとチンと合わせた。
「お疲れさまっした。今日は大佐が夜勤で残念でしたね」
 本当は自分ではなく親友と酒を酌み交わして話をしたかったのではと思いながらハボックが言う。ヒューズはニヤリと笑って答えた。
「その代わりお前さんとこうして飲めるからいいさ」
「そうっスか?ならいいですけど」
 ハボックは小首を傾げて言う。テーブルの上に広げたデリカを皿に取り分けてヒューズに渡した。
「これ、この海老のヤツ、美味いんスよ。食べてみてください」
「おう、サンキュ」
 そう言って皿を受け取りながらヒューズはハボックを見る。視線を感じてニコッと笑うハボックを見てヒューズは思った。
(まあ、確かに懐こい犬って思えば可愛いのかもしれねぇけど……)
 ヒューズの目からしてみればやはり男っぽさの方が感じられてしまう。
『可愛いんだよ。普段のアイツしか知らんお前には判らんだろうがな』
『へぇ、そりゃベッドの中でってことか?』
『……まあな。いくらでも啼かせたくなる』
 頭の中にロイとの会話が甦ってヒューズは目を細めた。
(やっぱベッドの中でなきゃその可愛らしさってのは判らねぇってことか)
 ヒューズがそんな事を考えているとは露ほども思わず、ニコニコと笑いながら話しかけてくるハボックを見つめてヒューズはポケットの中をそっと探った。

「はあ、やっぱ大佐って昔からモテるんスね……」
 ほんの少し眉を寄せてハボックが言う。その口元から零れる溜息はかなりの酒精を含んではいたが、まだまだ酔っ払うという言葉からは遠いように見えた。
「まあな。ま、アイツの場合付き合っても広く浅くって感じだったけどな」
 ヒューズはそう言いながらチーズを口に放り込む。黙りこくってしまったハボックを見つめて言った。
「どうしたよ、ロイの恋愛歴聞いたのがそんなにショックだったか?」
「えっ?や、そう言うわけじゃないっスけど……」
 そう言いながらハボックは視線を落とす。言葉とは裏腹にどこか動揺している様子のハボックにヒューズは薄く笑った。
「何シケた顔してんだよ。ほら、作ってやるからグラス寄越しな」
「あ、はい。ありがとうございます」
「相変わらずザルだな、お前」
 グラスを受け取りながら苦笑するヒューズにハボックは大きな体を縮める。ちょっとトイレ、と席を立ったハボックを目で追いながらヒューズはポケットの中から小さな包みを取り出した。
(酔い潰してもいいかと思ったけど、キリねぇな)
 そう思いながら包みを開けて小さな錠剤を取り出す。ハボックのグラスにポトンと落とせば瞬く間に小さな泡になって溶けてしまった。そのグラスをハボックの席の前に置いた時、ハボックが戻ってくる。「失礼しました」と言いながら腰を下ろした途端、置かれたグラスを手にとりグーッと半分ほども飲んでしまった。
「おいおい、高い酒なんだぜ。味わって飲めよ」
「えっ?…あ、はあ、すんません」
 ハボックはそう言って首を竦める。やはり付き合っている男の過去話はハボックの心に穏やかならぬ漣を起こしているようで、ヒューズは視線を落としたハボックの長い睫を見つめた。
「お前、意外と睫長いな」
「は?」
 突然そんな事を言われて、ハボックが弾かれたように顔を上げる。キョトンと目を見開くどこか幼い表情にヒューズは薄く笑って立ち上がった。
「ロイもああ見えて意外とメンクイだからな」
「え?」
 テーブルを回って近づいてくるヒューズをハボックは目を見開いて見つめる。ストンと隣に腰掛けるとヒューズはハボックの顔を覗き込むようにして言った。
「これまで付き合ってた女の子も美人ばっかりだったぜ。お前さんも知ってんだろ?美人ばっかりとっかえひっかえ、ズルイって思うよなぁ」
「え……はは、そうっスね…」
 ハボックは顔を引き攣らせてそう答えるとヒューズから視線を逸らして黙り込む。その空色の瞳が泣き出しそうに揺れているのを見つめてヒューズは言った。
「どうした?泣きそうな面して」
「べっ、別にそんなっ」
「ロイさぁ、昼間のエスコートは勿論、ベッドの方も女性好みだから、セフレも多いみたいだぜ。今でも結構いるんじゃねぇの?お前さん、近くにいるんだから判るだろ?」
「ッ、しっ、知りませんっ」
 ハボックはそう言って唇を噛み締める。ヒューズはハボックの腕を掴んで言った。
「どした?好きな男のそんな話聞いてショックだったか?」
「…ッ?!オレは別に…ッ」
 否定しようと声を張り上げた途端、ハボックの瞳からポロリと涙が零れる。ハッとして口を噤むハボックに身を寄せてヒューズは言った。
「慰めてやろうか?少尉」
「必要ないっス!」
 そう言って肩を掴んでくる男を押し返そうとしたハボックは体に力が入らない事に気付く。それだけでなく、ヒューズに掴まれたところからじんわりと湧き上がる熱に驚いて目を瞠った。
「な、ん………ど…して…?」
「ロイの事考えたら興奮しちまったんじゃねぇのか?意外とヤラシイな、少尉」
「違…ッ」
 圧し掛かってくる男をハボックは力の入らない腕で必死に押し返す。だが気がつけばソファーに押し倒されてハボックは目を丸くしてヒューズを見上げた。
「中佐…っ?」
「………ロイがさぁ、お前さんのこと、可愛い可愛いって自慢するんだよな。あんまり自慢されすぎて、どんなに可愛いのか見てみたくなっちまって」
 ヒューズはそう言ってにっこりと笑う。
「そんな訳なんで、俺にもお前さんの可愛いとこたっぷり見せてくれよ、な?少尉」
「な……っ、やだっ、中佐、やめ……ンッ、ンンッッ!!」
 とんでもない事を言う男を押し返そうとしたハボックは強引に唇を塞がれてもがく。息苦しさに唇を開けば途端に舌が差し込まれ、口内を弄られきつく舌を絡められた。
「んんっ、んーーーッッ!!」
 首を振って口付けから逃れようとするが、がっちりと押さえ込まれてどうする事も出来ない。散々に口内を嬲られ、唇の端から飲みきれない唾液が零れ落ちるようになって、やっとヒューズは唇を離した。
「はあっ、や…ッ」
 目に涙を浮かべて息を弾ませるハボックをヒューズはじっとと見下ろす。唾液に濡れた唇を指でなぞって言った。
「ふぅん、キスは結構いいな。じゃあ、こっちはどうだ?」
 ヒューズはそう言ってハボックの服を剥ぎ取ってしまう。ろくに抵抗も出来ず灯りのもとで素肌を曝け出されて、ハボックは身を捩った。
「や、だあっ」
「へぇ、あれだけ外での仕事が多いわりに焼けてねぇのな。白くて……女より綺麗なんじゃねぇか?」
 ヒューズはそう言いながら手のひらでハボックの肌を辿る。首筋に付けられた紅い印を見つけて目を細めた。
「これ、ロイにつけられたのか?」
「…ッ」
 そう言いながら指できつくこすられてハボックはビクリと震える。ヒューズはニヤリと笑うとその印のすぐ横に唇を押し当て、強く吸い上げた。
「…っ、イッ、たあっ!」
 唇を離せばくっきりと紅い印が浮かび上がる。最初についていたものより尚くっきりと鮮やかなそれにヒューズは楽しそうに言った。
「肌が白いから綺麗だな。ロイが痕つけたがるの、判るような気がするぜ」
 ヒューズはそう言うと次々とハボックの肌に唇を押し当てる。チクンと走る痛みとそこから湧きあがる快感にハボックはふるふると首を振った。
「やめ…っ、やめて、中佐ッ!」
 その声にヒューズは顔を上げてハボックの顔を覗き込む。見開いた空色の瞳から涙を零して見上げてくるハボックの表情に僅かに目を見開いた。
「……へぇ。なるほどね」
 ヒューズはにんまりと笑って言うとハボックの胸に手を這わせる。手探りで突起を探し当てるとキュウッと摘み上げた。
「ヒャウッ」
 途端にハボックの唇から悲鳴が上がる。グリグリとこね回し潰しては引っ張ればハボックは荒い吐息を零した。
「や、あんっ……やだ、やめて……アッ、ハア、んっ」
 ロイに愛されるようになって乳首でも感じることを教え込まれた。もともと弱いところではあったが、いつも以上に強く感じる快楽にハボックは泣きじゃくる。
「やだ…っ、なん、で…っ」
 ハアハアと息を弾ませて喘ぐハボックの幼い表情にヒューズはごくりと喉を鳴らした。ギリ、と爪を立てるように乳首を摘めばハボックが胸を仰け反らせて嬌声を上げる。ふと下に目をやれば、ハボックの中心は高々とそそり立ち蜜を零し始めていた。
「薬も効いてんだろうが……随分仕込まれてんじゃねぇか、少尉」
「くすり…?」
 ヒューズの言葉にハボックが涙に濡れた瞳を向ける。その瞳を快楽に歪ませたくて、ヒューズはハボックの股間に手を伸ばした。
「ヒッ!!ヤッ、触るなっ!!」
 キュッと楔を握り込まれてハボックが悲鳴を上げる。弱々しくもがく体を押さえ込んで、ヒューズはハボックの楔を扱き始めた。
「ヤダッ……やめてっ!!」
 ハボックはヒューズの胸を押し返して叫ぶ。だが、瞬く間に絶頂へと追い上げられて、ハボックは顔を歪めた。
「や……ッ、やめ……ッ!!………ッ、アッ、アアアッ!!」
 脚を突っ張り必死に堪えようとしたものの、薬で快感を高められている身体は逆らう術もない。ハボックは身を仰け反らせるとあっけなく果ててしまった。
「ハアッ……は……ひど…ッ」
 ヒューズの手でイかせられてしまったショックでハボックはポロポロと涙を零す。ヒューズはハボックの頬に唇を寄せて涙を拭うと言った。
「泣くなよ、少尉………可愛いぜ、ホント…」
 確かにロイの言う通り、昼間のハボックしか知らない者にはこの変貌は想像も出来ないだろう。ヒューズは泣きじゃくるハボックをじっと見下ろしていたが、体を起こすとハボックをソファーから抱き上げ寝室へと運んだ。ベッドの上にその体を横たえると着ていた服を脱ぎ捨てる。ギシリと音を立ててベッドに上がってくる男をハボックは信じられないと言うように見つめた。
「わりぃ、少尉。ちょっと収まりがつかなくなっちまったわ。ホントは最後までやるつもりはなかったんだけど、付き合ってくれや」
「な………ッ」
 最初はロイの言う「可愛いハボック」をちょっと見られればいいと思っていた。何と言ってもハボックはロイの想い人なのだし、ちょっと啼かせて可愛い顔を見られればよかったのだ。だが、思った以上に可愛らしく色っぽいその表情に、もっともっと見てみたいと思ってしまったのだ。
「一度だけ、な?」
「……ヤダッ!!ヤダァッ!!」
 圧し掛かってくる身体から逃れようとハボックは身を捩る。だが薬に支配された身体はろくに身動く事も出来ず、ハボックはその長い脚を大きく開かれてしまった。
「大丈夫、優しくしてやるから……俺だってロイに負けないくらい上手いぜ?」
 ヒューズはそう言うとハボックの双丘の狭間に手を滑らせる。ハボックの熱に濡れた指で戦慄く蕾を撫でるとつぷりと潜り込ませた。
「ひ……ッ」
 ビクンと震える身体を宥めるようにヒューズは撫でてやりながら口付ける。グチグチと沈めた指をかき回しながらねっとりと口付ければハボックの甘い吐息が口内に流れ込んできた。
「んっ……ん、ふ……ぅあ…っ」
 目尻を染めて喘ぐハボックは堪らなく可愛らしい。ロイが言っていたのはこれか、と思いながらヒューズは沈める指の数を増やしていった。
「んっ、んっ……アアッ、……も、やめてッ…ちゅ、さっ!!」
 泣きながら懇願する表情は、だがヒューズを止めるどころか煽る役にしか立たない。ヒューズはゴクリと喉を鳴らすと沈めていた指を引き抜きハボックの脚を抱え上げた。そうして滾る自身をハボックの蕾に押し当てる。
「挿れるぜ……力抜いてろよ、少尉」
「…ッ!ヤダッ!!やめてっ!!」
 グッと押し当てられる熱にハボックは必死に首を振る。硬く熱いその先端が蕾を押し開こうとするのを感じて、ハボックは目を見開いて喉をヒクリと鳴らした。
「や………たいさッ!!…たいさぁッッ!!」
 ズズッと押し入ってくる熱い塊りが狭い器官を押し広げていく。ハボックは少しでもその動きを留めようと腕を突っ張ってヒューズを押しやりながら胸を仰け反らせた。
「ヒアアッ……たいさっ、助けて……ッ!!」
「少尉…ッ」
 助けを求めてロイを呼ぶハボックの中へ身を沈めながら若干の罪悪感を感じはしたものの、その蕩けるような熱さにヒューズは止めることが出来ない。泣きじゃくるその幼い表情が余計に興奮を誘ってヒューズはきつく突き上げた。
「ヒアアッッ!!いやあっ…ッ!!」
 ガツガツと突き上げられ、ハボックは悲鳴を上げる。自分を犯すのはロイではない熱にもかかわらず、抑えることの出来ない快楽にハボックは泣きながらロイを呼び続けた。

「………もういい加減飽きたな…」
 ロイは決裁済みの箱に書類を放り込んで言う。机の上に積まれていた書類はあらかた片付いてきていたので、とりあえずここで終わりにしてもホークアイに文句を言われることはないように思えた。ロイは山の中からハボックが出してきた書類を取り出してぱらりと捲る。これを終えたら一区切りだと思いながら目を通していたロイは、書類を捲っていた手を止めて目を細めた。
「…………」
 数ページ前に戻り、それから先のページを捲る。明らかに字面が違う事に気付いて呟いた。
「ハボックの字じゃない…?誰の字だ?」
 全く知らないものではないそれをロイはじっと見つめる。どこかで見たはず、と必死に記憶を辿ったロイはハッと気付いて目を見開いた。
「ヒューズ…?なんでヒューズがハボックの書類を…?」
 そう呟いて先日あの悪友に話した事を思い出す。
「まさか、アイツ…ッ!!」
 いい意味でも悪い意味でも好奇心旺盛な男の顔が浮かんだ途端、ロイは椅子を蹴立てて立ち上がると執務室を飛び出していった。

「アッ、アア―――ッッ!!」
 きつい突き上げに耐え切れず、ハボックは身を仰け反らせて熱を吐き出す。その途端、更に奥を抉られてハボックは悲鳴を上げた。
「も、やめて……ちゅ、さ……ゆるして…ッ」
 ハボックは自分を犯す男を見上げて懇願する。だが、涙に濡れたその表情は男の欲を煽るばかりで、ヒューズは熱い吐息を吐き出す唇を荒々しく塞いだ。
「んんっ、………んっ、ふ…」
 弱々しく首を振るハボックをヒューズは更にきつく突き上げる。自分を犯す楔がググッと嵩を増すのを感じてハボックはビクリと身を強張らせた。
「や………出さないでッ!!」
「……少尉っ」
 怯えて見開く空色の瞳がヒューズの劣情を煽る。もう、抑えがきかずヒューズはハボックの脚を更に押し開くと抉るように突き上げる。嬌声を上げて仰け反る体の最奥に熱を吐き出そうとしたヒューズはドォンッ!!と吹き飛んだ扉にギョッとして動きを止めた。
「ヒューズ……貴様ぁ…ッ!!」
「………ロイ?な、なんで…?」
 扉のところで仁王立ちになっているロイを恐る恐る振り向いてヒューズが言う。発火布を嵌めたロイの手が突き出されるのを見て、慌ててハボックの身体から己を引き抜いて離れた。
「ヒアアアッ!!」
 まだ質量のある楔を強引に引き抜かれて、ハボックの唇から悲鳴が上がる。その声にハッとしてロイはハボックに駆け寄るとぐったりとしたその体を抱き上げた。
「ハボックっ!」
「………たいさ…ッ」
 ボロボロと涙を流して縋り付いてくる体を抱き締めてロイはヒューズを睨む。コソコソと逃げ出そうとしていたヒューズはへらりと笑って言った。
「いやぁ、ロイくんがあんまり“可愛い可愛い”いうからさぁ。どうしても見たくなっちまって!」
「ヒューズ、貴様、よくもハボックを…ッ!」
「出してませんッ!ちょっと挿れてみたけど、中出しはしてないからッ!!」
「………燃やす…ッ」
 ロイはそう言って手を振り上げる。そのすっかりと据わった目にヒューズはヒクヒクと唇の端を震わせた。
「や、ロイ君、落ち着いてっ、ちょっとした好奇心なんだから…ッ」
「問答無用ッ!!」
 裸のまま必死に両手を振ってロイを押し留めようとする情けない格好のヒューズに向かってロイが指を擦り合わせようとした時、ハボックがロイの体にギュッと縋りつく。消え入りそうな声でロイを呼んでスンと鼻を鳴らすハボックをロイは慌てて抱き締めた。その隙を逃さず、ヒューズは服を掴んで飛び出していく。
「お前の言う通り、すっげぇ可愛かったッ!!大事にしろよッ、じゃっ!!」
「ヒューズッ!!逃げるなッ!!」
 ロイの怒声を背にヒューズは脱兎の如く逃げ出していったのだった。


2009/07/09


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


お題「02. 薬」です。ええとー、なんだかヒューズがとてつもなくとんでもない男になってしまいましたが。でも、恐らくロイとヒューズ、相変わらず付き合いは続いていくと思います。多分どっちもとんでもないという意味では変わらないと思うので。苦労するのはいつもハボ(苦笑)ちなみにこのヒューズは独身設定でお願いします。これで妻子持ちだったら本当にサイテーだし(苦笑)