「可哀想に、そんな経験をしたなんてさぞかし怖かったろう」
 大佐はそう言ってうっすらと笑うとオレの頬に触れる。優しいその指先にそっと目を閉じたオレの耳に大佐の声が聞こえた。
「私が恐ろしいその記憶を塗り替えてやろう、ハボック」


 子供の頃、オレは悪戯された事があった。無理矢理連れ込まれた廃屋の壁に手を頭上高く鎖でつなぎ止められたオレはむき出しにされた脚を大きく開かされて、一晩中男の手で幼い性器を嬲られた。まだ自慰すらろくに知らなかったオレを男は容赦なく攻め立て、オレは自分の意思とは関係なしに何度も何度も熱を吐き出した。赦してくれと泣いて頼んでも男は笑うばかりで嬲る手を止めはしなかった。時折熱に濡れた節くれだった指をオレの蕾に突き入れグチグチとかき回した。そんな所をいじられて、最初は痛みと圧迫感しかなかったのが、次第にむず痒いようなそんな感覚に取って代わり、いつしか熱を吐き出すたび男の指を締め付けるようになっていった。そんな変化が怖くて恐ろしくて、身を捩って男に泣いて赦しを乞うたび、オレの頭上で鎖が音を立てた。
 じゃらり…
 じゃら…
 男の荒い息遣いとオレ自身の涙に濡れた喘ぎ声。
 絶え間ない快感と何度も襲いくる絶頂感。
 いつしか何も判らなくなってすべてが闇に飲み込まれて―――

 気がついた時にはオレは家のベッドで横たわっていた。夜になっても帰らないオレを心配した両親が隣近所の人達と捜し回った挙げ句、森の中で倒れているオレを見つけたのだ。大人達がオレを見つけた時には、凌辱の痕は綺麗に拭い去られていたようで、両親は姿の見えなかった間、オレが何をされていたのか全く気付かなかった。誰にも本当の事を告げられぬままに、オレもそんな両親の様子に何もなかったのだと思い込もうとして。
 ――出来なかった。
 何故ならオレは鎖の音を聞くと勃起するようになっていたから。
 入口を塞ぐ為に渡された鎖が悪戯な子供の手で揺すられるたび。
 失くさないようにと鍵をベルト通しに繋いだ鎖が引き出されるたび。
 低く高く鳴る鎖の音を耳にするたびオレは勃起した。まるでベルの音を聞くたび涎を垂らす犬のように。抑えようにも抑えられない熱を持て余して、幼いオレは泣きながらトイレで処理をした。あの日男がオレを弄んだのと同じ方法で。
 それでもいつか、意志の力で欲望を抑え込む事を覚え、オレのパブロフの犬はずっと眠っていたのだが。
 ある時大佐に知られてしまったのだ。オレの中に眠る犬の存在を――


―― 鎖 ――


 ロイ・マスタング大佐は焔のふたつ名を持つ国家錬金術師だ。この人の下に護衛官として配属になったオレはその強烈な個性に気がついた時にはどうしようもない程に惹き付けられていた。それでも子供の頃の経験がオレを引き止め、大佐から距離を置くよう仕向けていた。だが大佐はそんなオレの気持ちなど知ろうともせず、あっという間にオレの心の鍵をこじ開け、中に入り込むと深く深く根を下ろしてしまった。そうなってしまえばオレに大佐を拒む術などあろうはずもなく、気がつけば大佐とオレは所謂恋人同士という関係になっていた。大佐に求められるまま体を開き身の内に大佐を迎え入れる。そういった行為が恐ろしくないわけではなかったが、それを押しても大佐と繋がっていたいと思うほどには大佐が好きだった。それだからこそオレは子供の時の事をひた隠しにしてきた。知られればきっと大佐はオレから離れて行ってしまうと思ったから。大佐にだけは知られないよう、あの時の恐怖と狂態の記憶を必死に心の奥へ封じ込め、決してあの犬が顔を出さないよう、大佐の前では何も知らないフリを演じ続けていた。

 前方からキャーッと賑やかな笑い声が聞こえて並んで歩いていた大佐とオレは思わず足を止める。すると、数人の少年が何やら振り回しながら走ってくるのが見えた。彼らが振り回すそれが大佐に当たると思った瞬間、オレは大佐を庇うように腕を差し出す。じゃらん、と音を立てて腕に巻きついた後になって、オレはそれが長い鎖なのだと気がついた。
「こらっ、こんなものを振り回したら危ないだろうっ」
 珍しく大佐が子供相手に大声を出す。怒られた子供達は「ごめんなさーい!」と叫ぶと蜘蛛の子を散らすように逃げ去ってしまった。
「まったく…元気なのはいいが女の子の顔にでも当てたらどうするつもりなんだ」
大佐はため息混じりにそう言うとオレの方を見る。
「大丈夫か、ハボック」
大佐を庇って腕に鎖を巻きつけたオレを気遣って大佐がそう言ったが、正直オレはそんな言葉など聞いている余裕はなかった。腕から手首にかけて巻きついた鎖がオレが必死に封じ込めていた記憶を急激に呼び覚ましていく。
 廃屋に引き摺り込んだオレの腕に鎖を巻きつけ、その端をフックに引っ掛ける男。恐怖に凍りついたオレのズボンを下着ごと剥ぎ取るとニンマリと笑った。
『さあ、これからたっぷり楽しい事をしようね…』
そう囁いた男の手がオレの股間に伸びて―――
「イヤだぁッ!!」
「ハボックっ?」
 恐怖のあまりオレは大声で叫ぶと闇雲に走り出す。後ろから呼ぶ声が聞こえたが、構わず走り続けた。腕から伸びた鎖がオレが走るのに合わせてじゃらん、じゃらんと大きな音を立てる。その途端、背筋をぞくりと何かが駆け抜けて、足をもつれさせたオレは地面へと倒れこんだ。
 じゃらん
 じゃららん
 倒れた拍子に鎖が大きな音を立てる。それに答えるように背筋を駆け抜けたそれがオレの中心に熱となって渦巻いた。
「あっ…あ…ッ」
 倒れこんだオレは股間を隠すように体を丸めて縮こまる。何とか押さえ込もうとした熱は、だがもうどうにもすることが出来なくてオレがギュッと目を閉じた時。
「大丈夫かっ、ハボック!」
 大佐の声が聞こえてオレは体を強張らせた。近づいてくる気配に股間を押さえたまま何とか逃げようとする。だが、まともに立ち上がることも出来ないでいるうちに大佐の手がオレの腕を掴んだ。
「ヒィッ…!」
 咄嗟に悲鳴をあげてしまったオレを大佐は目を丸くして見つめる。オレの手が押さえ込んでいる中心が膨らみを見せている事に気がつくと更にその目を見開いた。
「ハボック、お前…」
「やっ、見ないで…ッ」
 こんな街中でいきなり発情してるオレを、大佐は信じられないと言うように見つめている。当たり前だ、誰がこんな鎖一つで性器を勃起させるなんて思うだろう。
 オレは大佐に見られていることが耐えられなくてギュっと目を瞑ると己の体を抱き締めた。きっと大佐はオレに理由を尋ねるだろう。理由を聞けば軽蔑するに違いない。そう思えば涙が溢れてくるのを止められなくて、オレは地面に蹲ったままポロポロと涙を零した。大佐は暫くの間そんなオレを黙ったまま見つめていたが、やがてオレをグイと引き摺り起こす。乱暴にオレの頬を流れる涙を拭うと言った。
「家に戻るぞ、ハボック。理由を聞くのはそれからだ」
 そう言ってオレを抱えるようにして歩き出す大佐に、オレは何もかもおしまいだと涙が止まらなかった。

 家に戻ると、大佐はオレをリビングのソファーに座らせる。それから今思い出したと言うようにオレの腕に巻きついたままだった鎖に手を伸ばした。大佐が外そうとしたそれがじゃらんとなった途端、オレはビクッと体を震わせる。その途端、大佐の動きがピタリと止まり小刻みに震えるオレの顔を覗き込んだ。
「ハボック、お前、この鎖に欲情してるのか?」
「…ッッ!!」
 そう聞かれてオレは答えることが出来ずに唇を噛み締めて俯く。大佐はオレの顎を掴むとグイと顔を引き上げた。
「答えるんだ、ハボック」
 そんな風に大佐に言われたらオレには拒む術がない。オレは何度も唾を飲み込むと震える声で答えた。
「そうっス……。そうっス、たいさ…ッ」
 ああ、言っちまった。当然のように何故、と聞かれてオレは子供の頃の経験を話し出す。
 廃屋の壁に鎖で縛り付けられ見知らぬ男に散々悪戯された事。その所為で鎖の音を聞くと勃起するようになってしまった事。何もかも、今まで隠してきたこと全部。
 何も言わずにオレの話を聞いていた大佐を見つめると微笑んだ。
「ごめんなさい、ずっと隠してて。知られたらきっと嫌われると思って言えなくて…。でも、もう…ッ」
 そこまで言ってこらえ切れずに唇を噛み締める。大佐の唇から罵る言葉が出てくるのを待っていたオレに、だが聞こえたのは別の言葉だった。
「可哀想に、そんな経験をしたなんてさぞかし怖かったろう」
 大佐はそう言ってうっすらと笑うとオレの頬に触れる。優しいその指先にオレは思わずそっと目を閉じた。そのオレの耳に大佐が続けて言うのが聞こえた。
「私が恐ろしいその記憶を塗り替えてやろう、ハボック」
 その言葉にオレは目を開いて大佐を見る。かけられると思っていた罵りの言葉はひとつもなく、オレは信じられない思いで大佐を見つめた。
「どうして…?汚いって責めないんスか?騙してたって言わないの?」
 そう尋ねれば大佐が笑みを深くする。大佐はオレの頬を撫でると言った。
「どうしてお前を責める?お前は被害者であって何一つ悪いことはした訳ではないだろう?私にも誰にもお前を責めることなど赦されないよ、ハボック」
 大佐はそう言うとオレの頬に口付ける。そうしてオレの耳元へ吹き込むように囁いた。
「そんな記憶、私が何もかも塗り替えてやる…」
 その言葉にオレの瞳から涙が零れた。

「大佐、どこ行くんスか?」
 子供の頃のことを総て大佐に話してから1週間ほどがたった。大佐は渋い顔をする中尉からオレと大佐と二人分の休みをもぎ取るとオレを連れてイーストシティから列車で2時間ほどのところへと来ていた。駅をでて少しするともうそこは人もあまり来ないような森の中で、イーストシティからこんな近いところにこんな場所があったのかとオレは驚いてもいた。
「大佐?」
「もう少しでつく」
 答えてくれない大佐に不安になってもう一度呼びかければ大佐が答える。それ以上今は何も言ってくれないのだと悟ってオレは黙って大佐の後について歩いた。
 あの日全てを話した後、大佐は殊更優しくオレを抱いた。知られればきっと詰られて二度とは触れてもらえないだろうと思っていたオレは、嬉しいと思う反面大佐に申し訳なくて行為の最中もその後も涙が止まらなかった。
 そうして昨日の夜、突然休みを取ったと大佐は言って、オレをここまで連れてきたのだった。
「ここだ」
 大佐に導かれるまま森の中を歩いてきたオレは、突然目の前に現れた建物に息を飲む。森の中の大きな古びた洋館はいつかどこかで見た光景に似ていて、凍りついたまま動けないオレの腕を取ると大佐はグイと引いた。
「入るぞ」
 そう言って洋館の中へ入ろうとする大佐にオレは首を振る。
「嫌っス…」
 ずっとずっと封じ込めていた記憶の扉がゆっくりと開いていく音を聞きながらオレは大佐の腕を振りほどこうと身を捩った。
「嫌だッ、ヤ…ッ」
「来るんだ」
 オレの方がデカくて力もあるはずなのに、どうしても大佐を振り解けないままオレは大佐に引き摺り込まれるようにして洋館の中へ入る。高い天窓から差し込む光が宙に舞う埃を白く浮き立たせ、その光景があの時の廃屋の光景と重なった。
「ヒ…ッ」
 途端に体が強張りまるで自由が利かなくなる。大佐はオレの体を引き摺るようにして壁際に連れて行くとそこにかけられていた鎖をオレの腕に巻きつけた。
「たいさっ!」
「記憶を塗り替えてやると言ったろう?ハボック」
 大佐はそう言って薄っすらと笑う。そうしてオレのズボンに手をかけると下着ごと剥ぎ取ってしまった。
「ヤダァッ!」
 あの時の光景がまざまざと目の前に蘇える。鎖で両腕を縛られ、剥き出しにされた脚を床に投げ出して座っているオレの前に立っているのはあの時の男だった。
『さあ、これからたっぷり楽しい事をしようね…』
「イヤアッ…!!」
 その声が耳に聞こえてオレはがむしゃらに身を捩る。そうすれば頭上で鎖がじゃらんじゃらんと音を立てて、オレはビクリと体を震わせた。その時、股間に伸びてきた手にオレの唇から悲鳴が迸る。続けてグイと顎を掴まれてオレは息を飲んでギュッと目を瞑った。
「ハボック、目を開けろ。私を見るんだ」
 聞きなれた声が聞こえてオレは小さく息を飲む。顎を掴む手に力が入ると強引に上を向かされたオレの耳にもう一度声が聞こえた。
「私を見ろと言っているんだ、ハボック」
 その声にオレは浅い呼吸を繰り返すとゆっくりと目を開ける。するとそこにいるのはあの時の男などではなくて大佐だった。
「いいか、これから先絶対に目を閉じるな。判ったか?」
 そう言う大佐をオレはじっと見つめる。大佐はイラついたように顎を掴む手に力を入れるともう一度言った。
「判ったか、ハボック。返事は?」
「は…い」
 オレが呟くように答えれば大佐はにんまりと笑って顎を掴んでいた手を離す。そうしてオレの竿に添えていた手をゆっくりと動かしだした。
「あ…っ」
 知らず強張る体の動きに合わせて頭上で鎖がじゃらんと鳴る。瞬く間に腹につくほどそそり立ち、蜜を垂れ流すオレを見つめていた大佐がくすりと笑うと言った。
「なるほど、確かに素晴らしいほどの条件反射だな」
「や…言わないで…ッ」
 判ってはいたが大佐に改めてそう言われると恥ずかしくて泣きたくなる。それでもオレの意思などお構いなしに、オレの体は直接的な刺激にどうにもならない程熱くなってオレは身を捩ると大佐を呼んだ。
「たいさぁ…っ」
「なんだ、もうイきそうなのか?」
 笑いを含んだ声でそう尋ねられて、オレは真っ赤になりながら頷く。大佐は面白そうにいきり立ったオレの楔の先端をこね回していたが、大きく広げられたオレの脚の奥へともう一方の手を差し入れると蕾を撫で回した。
「ここも弄られたと言っていたな。前を扱かれながら中を探られた?」
 この間オレから聞きだした話をまるでワザとのように大佐が繰り返す。恥ずかしくて死にそうになりながら、それでもオレは仕方なく頷いた。その途端、大佐の指がつぷりと蕾に突き入れられてオレは思わず息を飲む。きつく前を扱かれながらグチグチと蕾をかき回されて、オレはこみ上げる快感にふるふると首を振った。
「ヤダ……や、出ちゃう…ッ」
 必死にこらえようとして体に力を入れれば途端に鎖がじゃらんと鳴る。その音が腕を伝って背筋を快感となって駆け抜け、オレは耐え切れずに大佐の手の中に熱を迸らせた。
「アアアッッ!!」
 ビクビクと震える体に呼応するようにじゃらじゃらと鎖が鳴る。そうすればたちまち勢いを取り戻していく楔に大佐は何故だか悔しそうに言った。
「フン……しっかり刷り込まれてるな」
 クソ、と呟くと大佐は指を引き抜く。内壁を引っ掻くようにしながら指を引き抜かれて、オレは背筋を仰け反らせると悲鳴を上げた。
「ひど…っ」
 わざと感じるところを刺激してから離れる大佐をオレは恨みがましく見上げる。すると大佐はフンと鼻で笑ってテーブルに近づくとここへ来る時に持ってきたカバンから何やら袋を取り出した。なんだろうと見つめていると、大佐はその中から様々な太さの鎖を何本も取り出す。目を見開いてそれを見つめるオレの傍に戻ってくるとにんまりと笑った。
「これからは私がしっかり刷り込んでやる」
 そう言うと大佐は屈み込んで立ち上がったオレの楔を手に取る。そうして細い鎖を幾重にも巻きつけていった。
「イ、ヤッ!…そ、んなのヤダッ!!やめてっ、たいさッ!!」
  あまりの仕打ちに身を捩って叫ぶオレに構わず鎖を巻きつけてしまうと大佐はオレの頬を撫でる。楽しそうに笑うと、まだ身につけたままだったオレのシャツに手をかけ乱暴に引き裂いた。
「たいさっ!」
引きつった声で呼ぶオレに答えず、大佐は残骸と化したシャツを毟り取ってしまうと袋に手を伸ばす。その中から取り出した短い鎖の両端にはクリップが付いていて、それぞれのクリップからは十数センチの鎖が垂れ下がりその先には錘と思しき丸い金属の塊りが付いていた。
「お前は胸を弄られるのが好きだからな」
 大佐はそう言うとオレの胸の先を弄りだす。大佐に抱かれるようになって性感帯と変えられたそこをきつくこね回されて、オレは首を振って身を捩った。
「や、めてっ」
「ほら…、もうこんなに膨れ上がって固くなってる。ホントにここを弄られるのが好きだな、お前は」
 クスクスと笑いながら言う大佐に居た堪れず、オレはギュッと目を閉じる。そんなオレの耳に大佐の声が聞こえた。
「胸を弄られるのが好きなお前にはこれをプレゼントしよう」
 大佐はそういうと手にした鎖で繋がれたクリップでオレの乳首を挟む。食いちぎられるかのような痛みにオレは悲鳴をあげた。
「ヒィッ…痛いッ!!」
「痛いのは最初のうちだけだ。すぐによくなる」
「ヤダッ、外してっ…外してくださいっ、たいさっ!」
 そう叫ぶ間にもクリップはオレの乳首を潰してしまいそうな強さで締め付けてきて、オレは痛みに涙を零す。大佐はオレの頬を優しい手つきで拭うと言った。
「すぐよくなると言ったろう?我慢するんだ、ハボック」
 そう言うと大佐は両方の乳首を繋ぐ鎖をちゃらちゃらと音を立てて弄ぶ。時折楽しむようにキュッと鎖を引かれて、オレはそのたび悲鳴をあげた。
「やめて……も、ヤダ…ッ」
 痛みにポロポロと涙を零しながらそう訴えるオレに大佐は笑いながら言う。
「ヤダじゃないだろう?こんなにしておいて言うセリフじゃないな」
 大佐はそう言うとオレの楔を指先でピンと弾く。こんな仕打ちをされながらも高々とそそり立ったままだったそこにオレは短い悲鳴をあげた。
「アアッ」
 その途端、とろんと白濁が零れて快感と紙一重の痛みが脳天を貫く。張り詰めたそこは解放を求めて小刻みに揺れていた。
「たいさ……イきたいっス…」
 細い鎖で縛められた楔は熱を吐き出すことを阻まれている。オレが息を弾ませてそう言えば大佐はクスクスと笑った。
「まだ駄目だ」
 優しい声音で告げられる酷い言葉にオレは息を飲む。オレを見つめる黒い瞳を見返してオレは聞いた。
「どうして…?」
 そう尋ねれば大佐はオレの頬を撫でながら答える。
「まだお前の中にはあの男の影があるだろう?それが全て消えてしまうまでは駄目だよ、ハボック」
 そういい終わると同時に大佐はクリップを繋いだ鎖をグイと引いた。
「ヒイイッッ」
 引き千切られそうな痛みに背を仰け反らせれば、クリップから垂れ下がった錘を付けた鎖がゆらゆらと揺れる。痛みにボロボロと涙を零すオレに大佐は優しく口付けると言った。
「可愛いハボック…お前の中に私以外の誰かの影があるなんて赦せない」
 大佐はそう言うとオレの蕾に指を突き入れる。乱暴にかき回されてオレは喘いだ。
「アッ…アアッ…い、やだっ、も…ッ」
 ふるふると首を振れば頭上でじゃらんと鎖が揺れる。それに合わせて胸に繋がれた錘が揺れてオレはもう、痛みと快感で気が狂いそうだった。
「たいさ…助けて……も、やだ…ぁッ」
 涙を零しながら大佐に助けを求める。ヒクッとしゃくりあげるオレに大佐は微笑むと袋からもう一本鎖を取り出した。
「やだ…やだ、たいさ…」
 何をされるのか怖いと思うと同時に、更なる快感を求めて体が震える。大佐は汗に濡れるオレの前髪を優しい仕草でかき上げた。
「今、いいものをやるよ、ハボック」
 そう言って大佐はオレの脚を開いて押さえつけると蕾に鎖の先端を当てる。大佐が何をしようとしているのかが判ってオレは必死に身を捩った。
「ヤダッ!やめてっ!!」
 だが、押さえつけられた体はびくともせず、大佐は優しい口調でオレに言う。
「いい子にしてるんだ、ハボック」
 そうして鎖の先端をグッと蕾に押し付けた。ぬぷと押し入ってくる冷たい塊りにオレの背を嫌な汗が流れる。悲鳴を上げる事も出来ずにピクピクと体を震わせるオレの中へ、大佐は容赦なく鎖を押し込んでいった。
「ヒ……ア…」
「ああ、お前のここは本当に貪欲だな。どんどん飲み込んでいくぞ」
「や、め……」
 下腹部を圧迫する力が強くなり、オレは涙の滲む目を見開く。大佐は鎖の殆んどを埋め込んでしまうと蕾から垂れ下がっている鎖の端をじゃらじゃらと弄んだ。
「どうだ?ハボック。こんなのでも気持ちがいいらしいな、お前は」
 大佐は楽しそうにそう言いながら鎖の端を弄ぶ。じゃらじゃらと鎖が鳴るたび振動が蕾に響いて、オレは快感に喘いだ。
「は、ア……あふ……ああ…っ」
 快楽に身を震わせるたび頭上で鎖がじゃらん、じゃら、と音を立てる。大佐が蕾から垂れ下がる鎖を弄ぶ音と重なって、オレの耳の中は鎖が鳴る音でいっぱいになっていった。
「たいさ……たいさぁ…っ」
「なんだ?」
 震える声で大佐を呼べば大佐が鎖を鳴らしながらオレの顔を覗き込む。時折思い出したようにクリップを繋ぐ鎖を引きながら大佐はオレにねっとりと口付けた。
「なんだ、ハボック?言いたいことがあるなら言ってごらん」
 優しい口調でそう言う大佐を見つめるとオレは震える声で言葉を吐き出す。
「欲し……たいさ…」
「何を?」
 判っているくせに意地悪くそう尋ねる大佐をオレは涙の滲む目で睨みつけた。それでも言わなければこのままずっと嬲られ続けるのだと判ってオレは何度も唾を飲み込むと言った。
「ア、ンタが欲しい……ちょうだい、たいさぁ…っ」
 そう強請ればポロポロと涙が零れる。大佐は優しくオレの頬を撫でると立ち上がりズボンを寛げるとオレの目の前に自身を晒した。オレは大佐が求めるままに唇を開くとその楔を迎え入れる。
「ん……んふ…」
 じゅぶじゅぶと唇ですりあげ舌を絡めた。オレが動く度鎖が音を立ててオレはうっとりと蕩けた表情を浮かべたまま大佐の楔をしゃぶり続ける。そんなオレを楽しそうに見下ろしていた大佐はオレの唇から己を引き抜くとオレの脚をグイと押し開いた。
「よく出来たな、ハボック。ご褒美にお前が欲しいものをやろう」
 大佐はそう言うとオレの蕾から垂れる鎖に手をかける。
「愛しているよ、ハボック」
 そう囁くと同時に鎖を一気に引き抜いた。
「ヒイィィイイイッッ!!」
 ズルズルと引き出される鎖に内壁を抉られてオレは快感に悶える。じゃらんじゃらんと鎖の音が響き渡り、ブルブルと震えるオレの体は熱を吐き出そうとしたが、細い鎖で縛められた楔はそれを赦されず、吐き出されない熱はオレの中で荒れ狂い、痛みと快楽にオレは悲鳴を上げ続けた。
「ヒアアアッッ……アアアッッ!!」
 ビクビクと震えるオレを見つめていた大佐は引き抜いた鎖を放り投げるとオレの脚を抱えなおす。そうして半ば開いたオレの蕾に己を一気に突き入れた。
「アアアアアッッ!!」
 快感に震える体を引き裂かれてオレは嬌声を上げる。望んだものを与えられたものの、オレは快楽を吐き出す事を禁じられてボロボロと泣きながら大佐を呼んだ。
「たいさっ……たいさぁぁっっ」
「どうした?これが欲しかったんだろう?」
 そう聞かれてオレはガクガクと頷く。頭上の鎖をじゃらじゃらと引きながら訴えた。
「イきたいっ……た…さっ、イかせてっっ」
 泣きながらそう訴えれば大佐がうっそりと笑う。
「わがままなヤツだな、私が欲しいと言ったり、イきたいと言ったり」
「たいさっ、おねが…っ、も、ダメッ」
 じゃらじゃらを鎖を鳴らして啼き叫ぶオレの頬を撫でながら大佐は言った。
「キスを、ハボック…」
 そう言われてオレは舌を差し出すと己の唇を大佐のそれに重ねる。必死に舌を絡めれば大佐の手がオレの楔を縛める鎖を解いた。
「―――ッッ!!!」
 せき止められていた熱が一気に解放されて、びゅくびゅくと勢いよく熱を吐き出しながらオレは体を震わせる。脳天を突き抜ける快感にビクビクと体を震わせるたオレは鎖の音を聞きながらゆっくりと闇の中へ落ちていった。

 気がついたときにはオレは大佐の腕の中に抱き締められていた。見上げれば大佐が手にしていた鎖をじゃらんと鳴らす。ピクリと震えるオレに大佐は聞いた。
「まだこの音に欲情するか?」
 そう聞かれてオレは大佐の胸に頭を擦り付ける。うっとりと微笑みながら答えた。
「アンタが鳴らすなら」
囁くオレに大佐が僅かに目を瞠る。
「オレの鎖はアンタだけが持ってるっス」
 そう告げるオレに大佐は嬉しそうに笑って鎖を鳴らした。


2008/09/29

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

お題トップバッターは「01.鎖」です。なんかいきなりお道具使いになってしまった(苦笑)ああ、でもやっぱりロイハボでエロは筆が進む進む(笑)ハボ啼かせるの、大好きだから、自分。これからも多分こんな感じになるかとv