豆騎士 熱愛編 その後のその後


「ふああああ」
 ソファーに座ったエドワードは腕を突き上げて思い切り伸びをする。机で書類にサインをしていたロイは、うんざりとした目でエドワードを見て言った。
「寝不足か?鋼の」
「ん?ああ、まあね」
 エドワードは答えて突き上げていた手をおろす。寝不足ではあったが、今のエドワードはとても満足していた。
 夕べは久しぶりに会ったハボックと過ごした。ハボックの手料理を食べて、その後は勿論恋人同士の常としてエッチに及んだ訳だが夕べのエッチは今までとのそれとはひと味違っていた。
『大将…ッ』
 目を閉じれば快楽に乱されてしがみついてくるハボックの顔が浮かぶ。これまでは一方的にエドワードがイイ思いをするばかりのセックスであったが、夕べ、初めてエドワードは自分の熱でハボックをイかせてやることが出来たのだ。初めての経験にエドワードはすっかりと興奮して、一晩中ハボックを攻め立ててしまったのだった。
(少尉、可愛かったなぁ……)
 もう赦してくれと、泣きながら喘ぐハボックの顔が浮かんでエドワードはうっとりと笑う。あまりに可愛くて散々に攻め立てた上、赦して欲しければとあられもない事を何度も言わせてしまった。明け方、気を失うように眠ってしまったハボックを抱き締めてエドワードも短い眠りについたのだった。
「鋼の、涎が垂れてるぞ」
 その時不意に聞こえた声にエドワードはハッとする。慌てて口元を拭って視線を向ければ、ロイが呆れたようなため息をついた。
「久しぶりに会って盛り上がるのは結構だが、翌日アレでは迷惑だ」
 そう言われてエドワードは開いたままだった執務室の扉の向こうの大部屋に目を向ける。そこではハボックがけだるげなため息をついてぐったりと椅子に座り込んでいた。
「仕方ないじゃん。少尉、すっげぇ可愛かったんだから」
 そう言って唇を尖らせる少年にロイはため息をつく。
「大事な恋人をあんなになるまで攻めたてるのは男としてどうかと思うがな」
「……んだよ、大佐。ヤキモチ?」
 ムッとしてエドワードがそう言えばロイは思い切り顔を顰める。「どうして私が」と呟いたロイはエドワードを見つめて言った。
「アイツはいい年をした大人で軍人だ。プライドだってあればやらねばならない仕事だってある。それを誰が見ても判るほど体調が悪くなるまでヤるのは恋人として失格だと言ってるんだ」
「……ッ!」
 そう言われてエドワードはハッとする。そういえば訓練があると言っていた事を思い出したエドワードにロイが続けた。
「まあ、流されるアイツにも問題はあるがな。ハボックが大事なら大概にしておけ。今のアイツ、色気だだ漏れで部下どもが騒いで大変だぞ」
「えっ?!」
 その言葉にギョッとしてエドワードは飛び上がる。その時、ハボックが開いた扉を軽くノックして執務室に入ってきた。
「話し中のところ申し訳ないんスけど」
「構わん、鋼のに用か?」
 ロイがそう尋ねればハボックが頷く。
「大将、もうすぐ出かけんだろ?オレ、これから訓練だから見送れないけど気をつけてな」
 ハボックはそう言ってエドワードの頭を撫でた。
「無理するなよ、アルの言うことよく聞くんだぞ」
「少尉っ、あのさっ」
「じゃあ」
 撫でていた手でエドワードを一瞬胸に引き寄せるとハボックは手を離す。
「訓練いってきます」
「ああ、しっかりな」
「ちょ……少尉っ」
 ロイにピッと敬礼し、エドワードにウィンクしてハボックは執務室を出ていってしまった。
「大佐っ」
 慌てるエドワードにロイがニヤリと笑う。
「まあ、いない間に食われないよう、一応見ておいてやろう」
「食われてたまるかッ!ちょ……釘刺しておかないとッ」
「列車に乗り遅れるぞ」
「そんなもん知るかッッ!!少尉ッッ!!」
「あ、兄さん、こんなところにいた!早く行かないと列車出ちゃうよ」
 丁度タイミング良くやってきたアルフォンスに首根っこを掴まれて引きずられていきながら。
「少尉〜〜〜ッッ」
 むなしく叫ぶしかないエドワードだった。


2010/06/04

* この話は無料配布コピー本「ワガママな王様と純情な騎士」「小さな暴君とお人好しの騎士」に収録された「豆騎士熱愛編」「豆騎士熱愛編その後」の続きです。