下着4

『前に穿いていた下着は全部処分しておけ』
 下着の入った引き出しを前にロイの言葉を思い出してハボックは唸る。今、引き出しの中にはロイが買ってきた怪しげな下着がきちんと折りたたまれて入っていた。そうして今までハボックがつけていたボクサーパンツは引き出しの外へと追い出されている。
「処分しとけって……。でも、でもっ」
 処分してしまえば毎日つけるのはこの怪しげな下着ばかりになってしまう。先日穿いて散々な目に会ったような下着は流石にそうそうはなかったが、それでもわざと局部を強調するようなものや、蕾を刺激するような位置にパールがついているようなものが数多くを占め、大人しいデザインのものでも素材がメッシュだったりシースルーだったりと、人前ではとても晒せないものばかりだった。
「演習の時とか、着替えどうすんのさ
 士官用を使えば部下達と一緒に着替えずには済むかもしれない。だが、そことて人の出入りがないわけではないのだ。とはいえ、今までの下着を処分せずにおけば、後でロイに何をされるか判らない。
「ああもうっ、どうとでもなれっ!」
 ハボックは自棄になってそう言うとボクサーパンツを次々と袋に放り込んだのだった。

「そういえばハボック、下着は処分したのか?」
「え?……ええ、まあ」
 リビングでコーヒーを飲んでいると突然ロイにそう聞かれてハボックは顔を赤らめて答える。にんまりと笑ったロイは次の瞬間ふと表情を改めると言った。
「おい、まさかそのままゴミで出したんじゃないだろうな」
「出しましたけど?」
「なッ?!」
 ハボックの答えにロイは飛び上がるように立ちあがると玄関を飛び出していく。ハボックがポカンとしている間に外でぎゃあぎゃあと喚く声がしたかと思うとバタバタとロイが戻ってきた。
「やっ、やられたッ!!」
「たいさ?」
「持っていかれたッ!!」
 喚いてウロウロと部屋の中を歩き回るロイをハボックは呆然としながら目で追う。何か拙いことでもしただろうかと恐る恐るロイの名を呼べばロイが答えた。
「この間から家のゴミが荒らされてたんだ。今見てきたらやっぱり荒らされて下着が消えてた。巡回の警備兵に怪しいヤツを見なかったか聞いたらガタイのいい、腕に“H★LOVE”と刺青した男がなにやら袋を持って立ち去るのを目撃したとッ!」
H★LOVE?それって
「知ってるのかッ?!」
 噛み付くように聞かれてハボックは目をまん丸にして答える。
「小隊のジョーンズがそんな刺青を
 ハボックの言葉にロイはふるふると震えて。
「アイツらーーーーーーッッ!!!」
 そう怒鳴って家を飛び出していくロイをハボックは呆然として見送る。
「え……うそ
 自分が捨てた下着をどうやら小隊の部下が持ち去ったらしいと漸くハボックが理解したのはそれから10分も経った後のことだった。


2008/10/08