商品目録


「な……ッ、ナンダコレッワッ!!」
 見覚えのない差出人からの自分宛ての大判の封筒を開けたハボックは、引っ張り出したカタログを見て目を丸くする。思わず裏返った声で叫んでしまってから、ハボックは慌てて口を押さえた。
「なんでこんなものが……」
 そう呟いて改めて見たカタログは、所謂大人の玩具と呼ばれるものを扱った通販サイトのものだった。1センチ以上も厚みのあるそれをそっとめくってみれば、色も形も様々な玩具の群が目に飛び込んできて、ハボックは真っ赤になってカタログを乱暴に閉じた。
「とにかく早いとこ処分しなきゃ」
 こんなものがロイの目に触れたりしたら何を言われるか、何をされるか判ったものではない。いや、むしろはっきりと判っていて、ハボックはカタログを封筒に突っ込み急いで処分してしまおうと立ち上がった。だが。
「ハボック、さっき変な声を上げていたがどうかしたのか?」
 ガチャリと扉が開いてロイがリビングに入ってくる。ハボックは慌てて封筒を背後に隠すと、立ち上がったばかりのソファーにぽすんと腰を落とした。
「いや、その……ちょっとウトウトしちゃって変な夢をッ」
 アハハハと笑って頭を掻くハボックをロイがじっと見つめる。無表情にじっと見つめてくる黒曜石に居心地悪そうに身じろぎしたハボックは、ロイの唇の端がゆっくりと持ち上がるのを見た。
「何を隠してるんだ、ハボック?」
「ななな何も隠してませんッッ!!」
 ブンブンと千切れそうな程の勢いで首を振るハボックに、ロイはゆっくりと近づく。足音も立てずに近づいてくる様が野生の黒豹のようだと思いながら、ハボックは凍りついたように身動き出来なかった。
「後ろに隠したものをみせろ、ハボック」
(バレてるしッ!)
 結局のところロイに隠し事など出来る筈がないのだ。ハボックは背後に隠した封筒を取り出し、おずおずとロイに差し出した。
「最初から隠したりせずに素直に出せばいいんだ」
「ごめんなさい……」
 大きな体を小さく縮めて謝るハボックにフンと鼻を鳴らして、ロイは引ったくるように封筒を取り上げる。中から出したカタログの表紙を見たロイは器用に片眉を跳ね上げた。
「お前がこういうものを使ったプレイが好きだとは知らなかったな」
「別に好きじゃねぇっス!!」
「だがわざわざカタログを取り寄せたんだろう?」
「違いますよッ、勝手に送られてきただけで!」
「ふぅん、勝手に送られてくるほどこの通販サイトの常連だということか」
「だから違いますってば!!」
 ハボックは泣きそうになりながら違うと繰り返す。ロイがハボックの言いたい事が本当はよく判っていてわざとこういう態度をとっているのは見え見えだった。
「お前の気持ちはよく判った」
 パラパラとカタログを捲りながらロイが言う。次に何を言い出すのかと目を見開いてハボックが見つめる先で、ロイはニンマリと笑った。
「実は私も試してみたいと思っていたんだ。だが、お前が嫌がるかもと言い出せないでいたんだが」
 ロイはそう言いながら棚に近づく。引き出しから色とりどりの玩具を幾つも取り出してハボックを見た。
「いや、趣味が同じでよかったよ。やはり私達は相性抜群だな」
(カタログはアンタの仕業かッ!!)
 楽しそうな笑みを浮かべて近づいてくる男を好きになってしまった事を、ソファーに背を擦り付けながら心底後悔するハボックだった。


2011/10/29