誘い受け


「ちょっと大佐っ!もう、自分でちゃんと立ってくださいって」
「んー、もう歩きたくない……」
「っとにもうっ!なんでそんなになるまで飲むんスか」
 ハボックは肩に担いだロイの腕をぐいと抱えなおす。長いこと抱えていた事件がようやく片付いて、今夜は
打ち上げとばかりに皆で飲みに出かけたのだが、すっかり出来上がってしまった上司を体よく押し付けられた
ハボックは、くにゃくにゃと軟体動物のように力の入らないロイの体を引きずってようやくロイの家まで辿りついたところだった。
「ほら、つきましたよっ」
 ハボックはそう言うとポケットから家の鍵を取り出す。
「ハッボぉ〜っ」
「うわっ」
 鍵を開けようとした途端ぐにゃんとしがみ付いてきたロイに、ハボックは鍵を取り落としてしまう。
「もおっ、何するんスか、アンタはっ」
 っとにもう、とブツブツ言いながらハボックは地面に落ちた鍵を拾おうとしゃがみ込んだ。ロイは薄暗がりの中でグレーに見えるハボックの瞳に気がつくと、隣りにしゃがみ込みハボックの顔を両手で挟みこんでグイと自分の方を向かせる。
「ってぇっ!」
 乱暴なやり方に首がグキッとなった気がしてハボックは悲鳴を上げた。
「なにするん――」
「なんでブルーじゃないんだっ」
 文句を言おうとしたハボックは突然数センチの所に寄ってきた綺麗な顔にギョッとして息を飲む。
「お前の瞳はブルーだろうっ!」
 唇が触れそうな距離でそう喚くロイをハボックは必死に押しやった。
「暗いからそう見えるんスよ」
 ハボックはそう言いながらロイの腕を取りながら立ち上がる。
(もう、いきなり顔、くっつけないでくれよ……)
 人の気も知らないで、とハボックは思いながら鍵を開けた。
「ほら、中入って」
 そう言ってロイを振り向いたハボックは立ち尽くしたロイが泣きそうになっているのに気がつく。
「どっ、どうしたんスかっ?」
ビックリしてそう言うハボックの顔を見上げてロイは小さな声で言った。
「お前の空色の瞳が好きなのに…あんまりだ。」
「はあっ?」
そう言ってぽろぽろと泣き出すロイにハボックはため息をつく。
「この、酔っ払いが……」
 ハボックはロイの背中をぽんぽんと叩きながら中へとその身を誘導した。酔っ払いの戯言とは思っても、一瞬どきりとしてしまった自分に腹が立つ。すんすんと鼻を鳴らしながら歩くロイを見下ろしながらハボックは眉間を揉んだ。
(全くもう、オレの気持ちなんて全然わかってやしないんだから……)
 いつの頃だったろう、この尊大で我が儘な上司を好きなのだと気づいたのは。もっとも好きだと気づいたからと言って打ち明けられるはずもなく、側にいるだけで満足するしかないと言い聞かせていたのだが。
(オレの前でこんなぐでぐでになっちゃって…。そりゃ信頼してくれてんだろうけどさ)
 複雑な思いを抱えているハボックのことなどまるで気づいていない様子のロイは、ハボックに背を押されるまま廊下を歩いていたが、浴室の扉の前に来るとピタリと立ち止まった。
「大佐?」
「風呂にはいる」
「は?」
「風呂」
 そう言うとロイは、すたすたと中へと入っていってしまう。服を脱ぎだすロイをハボックは慌てて押し留めた。
「待って、待って!そんな酔っ払ったまんま風呂なんて入ったら死にますって!」
 今日はやめときましょうね、とにっこりと笑うハボックをロイは恨みがましく睨みつける。
「私に汗をかいたまま寝ろというのか」
「いや、だって危ないでしょうが」
「平気だ」
 そう言って再び服に手をかけるロイにハボックは慌てて言った。
「あー、じゃあっ、熱いタオルで拭いてあげますからっ!それならいいっしょ?」
 ね、そうしましょうと言うとハボックはぐいぐいとロイを2階へと連れて行く。寝室へと入るとロイをベッドに腰掛けさせた。
「今、用意しますから、いい子に待ってて下さいね」
「ん……」
 ハボックは子供のように頷くロイの頭を撫でると階下へと下りる。急いで熱いお湯とタオルを用意すると寝室へと戻った。
「はい、じゃあ服脱いでください」
「脱げない、脱がせて」
「えっ?さっきは自分で脱ごうとしたじゃないっスかっ」
 タオルを絞ろうとしたハボックは中腰のままロイを見ると焦って言う。だが、ロイはベッドにコテンと倒れこむと横目でハボックを見上げて言った。
「ハボ〜。脱がせろー。上官命令だぞっ」
「……何が上官命令っスか、この酔っ払いがっ」
 とろんと見上げてくる黒い瞳にドキドキしながらハボックはぼやく。それでも脱がせろと喚き続けるロイに根負けして、ハボックはタオルを置くとロイの体を引き起こしてベッドに腰掛けさせた。上着を脱がせるとシャツのボタンを外していく。脱がしたシャツをするりと肩から落としたハボックは、目の前のロイの姿を直視できずに目を逸らした。
(やべぇ、タオルで拭いてやるなんて言うんじゃなかった……っ)
 酔いにその白い肌を桜色に染めて、これまた酔いで潤んだ瞳で見上げてくるロイは凶悪に色っぽかった。
(ヤバイ、ヤバイ、どうするよ、オレっ!)
 どうするもこうするもないのだが完全に混乱した頭を抱えたハボックはどうすることも出来ずにオロオロと視線を彷徨わせる。そんなハボックにロイは舌足らずな声で言った。
「何してるんだ、早く拭けっ!」
「えっ、いやでも……」
「拭いてくれないなら風呂に入る」
 そう言って立ち上がろうとするロイの肩を慌てて掴んでハボックはロイを座らせる。
「……拭きますから座っててください」
 ハボックは腹を決めるとタオルを絞ってロイに向き直る。一つ深呼吸するとまずロイの綺麗な顔にタオルを寄せた。
「目、瞑っててください」
 そう言えばロイは素直に目を閉じる。頬、額、鼻筋と丁寧に拭いてやり、耳や首筋も拭いていった。時折タオルを絞りなおし、腕を取って肩から肘、手首へと順番に拭いて指の間も丁寧に拭いていった。強すぎもせず、弱すぎもしない拭き方に、ロイはホッと息を吐くと呟いた。
「気持ちいい……」
 吐息と共に吐き出された言葉に、内心ハボックはドキンとしながらも表面上はなんとも思っていないようにロイの体を拭いていった。満足げなため息が零れるのを必死に耳の外へと押し出しながら機械的にロイの体を拭いていたハボックが片手でロイの背を支えながら胸を拭いた時。
「あん……」
 耳のすぐ側で聞こえたロイの声を無視しきれずにハボックはぎくりと体を強張らせる。恐る恐る横目でロイを見上げれば、とろりと融けた表情でハボックを見るロイと目が合った。
「あ……と、こっ、ここまでにしときましょうかっ」
「……やだ」
「あ、でも、もう寝た方が……」
「脚」
「え?」
「脚も拭け」
 ロイはそう言うとふらりと立ち上がりズボンを脱いでしまう。もう一度ベッドに腰掛けると床に膝をついたハボックの前に脚を突き出した。
「ほら」
「……っっ!!」
 すらりと伸びた脚を目の前に突き出されてハボックは思わず仰け反ると尻餅をついてしまう。
「何してるんだ、早く拭かんかっ」
「いや、だって、アンタねっ」
 好きな相手が下着一枚の状態で目の前にいるのだ。ハボックはぶっ飛びそうになる理性のたがを必死の思いで押さえ込んでいた。
「もう、寝ましょう、ねっ」
 頼むからさっさと寝てくれ、と言う願いを込めてそう言ったハボックを見下ろすと、ロイはふむと頷く。
「わかった、じゃあ寝る」
 そう言うロイにホッとしたのもつかの間、突然ベッドから滑り落ちるようにハボックの上に体を投げ出してきたロイにハボックは声にならない叫び声をあげた。
「なっなっ……?!」
「一人じゃ寝らんない……」
「なに言って……っ」
「ハボ……」
 ロイはハボックの首に腕を回すととろんとした目つきでハボックの顔をを覗き込む。首を傾げてフッと笑うとロイはぺろりとハボックの唇を舐めた。
「〜〜〜っっ!!!」
「ハボ……シよ」
「何言って……」
「はぼぉ」
「うわっ」
 思い切り体重をかけられてハボックは支えきれずにロイ諸共床に倒れこむ。間近に迫るロイの顔を驚いて
見上げるハボックにロイは言った。
「私が嫌いか……?」
「……っな訳ないでしょっ!」
 ハボックはロイの顔を見ないですむように腕で自分の顔を覆ってしまう。
「アンタ、酔ってんでしょ、頼むから絡まんでくださいよ……っ」
 実際もう、理性が焼ききれそうだ。ハボックはロイの肩を掴むとグイと押しやった。自分はロイが好きだ。だがロイの方はただ酔って絡んでいるだけだろう、そう思うとハボックは泣きたい気持ちでいっぱいだった。
「もう、寝てくださいって、ね?」
 ハボックは立ち上がるとロイをベッドに寝かせようとする。だが、ロイはむぅと唇を突き出すとハボックごとベッドに倒れこんだ。
「たいさっ」
 ギョッとして起き上がろうとするハボの上に圧し掛かるとロイはハボックに口付ける。
「っ?!た、い……っ」
 グイと押しやろうとするハボックの手を取るとロイは下着の中へと引き入れた。
「たい……っ」
「シテ……」
 キュッとハボックの手ごと自身を握りこむロイの濡れた瞳に、ハボックはついに我慢しきれずロイをベッドに縫いとめる。
「アンタが誘ったんスからね、後になって燃やさんでくださいよっ!」
泣きそうに顔を歪めてそういうハボックを見上げるとロイはうっとりと笑ってハボックに手を伸ばした。ハボックはロイに引き寄せられるように口付けていく。恐る恐るチュッと口付けたハボックはその柔らかい感触に噛み付くように唇を合わせた。
「んっ……ふ……」
 ロイの唇から零れる甘い声にハボックは夢中になってロイの唇を貪る。舌を差し入れてロイのそれを絡め取るときつく吸い上げた。
「んんっ……うふ……」
 ようやく唇を離すとハボックはロイの耳元を甘く噛む。ぴちゃと舌を差し入れると同時に滑らせた手でロイの乳首をキュッと摘み上げた。
「あんっ」
 その声に煽られるようにハボックはロイの肌に唇を滑らせる。あちこちに紅い印を刻みながらたどり着いた乳首に舌を這わせ押しつぶすように愛撫すれば、ロイの腰がもどかしげに揺れた。ハボックはまだロイが身につけたままだった下着を剥ぎ取ると脚を大きく開かせる。高々とそそり立って蜜を零す中心にハボックはねっとりと舌を這わせた。
「あふ……ぅうん……」
 頭上にロイの甘い声を聞きながらハボックはロイの中心を咥えこむ。じゅぶじゅぶと唇で擦りあげ舌先で先端の柔らかい部分を押し開くようにすると、ロイの喘ぎが大きくなった。喉奥まで咥えこんでぎゅぅと吸い上げると、ロイの唇から甘い悲鳴が上がった。
「ああっ……イくぅ……っ」
 ぶるっと震えてロイはハボックの口中へと熱を放つ。ハボックは吐き出されたものをすべて飲み込んでしまうとロイの脚をそっとベッドに下ろした。はあはあと荒く息を弾ませるロイの髪を撫でるとその額にキスを落とす。
「ごめんなさい、たいさ。ごめん……」
 囁くように謝るハボックをロイは不思議そうに見上げた。
「酔って正気じゃないアンタにこんなことして……。オレはアンタを好きだけど、アンタはそうじゃないでしょ?なのに……ごめんなさい……」
 ハボックはそう言うとロイから身を離す。ブランケットを引き上げるとロイの裸体を包み込んだ。
「もう眠って、今夜のことは忘れてくださ――」
 ハボックがそう言ったとき、ロイの腕が伸びてハボックを引き寄せた。
「あっ!」
 ハボックはロイの脇に手をついて倒れる体を支える。だが、ロイはそれに構わずハボックを引っ張った。
「たいさっ」
「バカっ!」
 ロイはそう言うとハボックの頬を思い切り両手で引っ張る。
「いててててっ!」
「いくら酔ってたからってこんなこと好きでもない相手にこんなことさせるわけないだろうっ!」
「…え?」
 ハボックは痛む頬を擦りながらロイを見下ろした。ロイは黒い瞳に涙をいっぱいに溜めてハボックを見上げる。
「なんで判らないんだっ!!」
「え?え?」
 ポカンとするハボックの襟元を掴むとロイはハボックを引き寄せた。唇が触れ合わんばかりの距離でロイは
ハボックに囁く。
「好きだ……っ」
 見開く空色の瞳にロイはもう一度言った。
「好きなんだ、お前が……。なのにお前はいつだって見てるだけで何もしてくれないから……っ」
 そう言った途端、ロイの瞳からポロリと涙が零れ落ちる。ハボックは目を瞠ってロイを見つめていたが、次の瞬間ロイをギュッと抱きしめた。
「オレなんかが好きだって言ったら迷惑だと思ってました」
「なんで……?ずっと好きだったのに……」
 呟くように言うロイの顔を覗き込んでハボックは微笑む。
「好きです……たいさ…ずっと好きだった……」
「ハボ……」
 ハボックの言葉に泣き笑いのような表情を浮かべるロイにハボックはゆっくりと口付けていった。くちゅと音を立てて舌を絡めあう。さっきよりもっともっと想いを込めた口付けにロイは苦しくてハボックのシャツにすがりついた。
「もう一度ちゃんとしていいっスか?」
「そうしなかったら燃やす……」
 目尻を染めて、それでも強気な色を湛える瞳にハボックは嬉しそうに笑う。
「それはカンベン……」
 ハボックはそう言うともう一度ロイに口付ける。話した唇を首筋に滑らせ時折きつく吸い上げながらロイの肌を味わっていった。
「ん……ハボ……」
 ロイはハボックの髪に手を差し入れて優しくかき混ぜる。ぷくりと立ち上がった胸の飾りを甘く食むとロイの唇から甘い声が上がった。唇と指で色ずく二つの飾りを嬲り、空いている手でロイの中心を擦る。そうすればロイがあげる声が高くなった。
「ね、ハボ……ハボが欲し……」
 欲に掠れた声でそう強請るロイにハボックはかあぁっと頭に血が上る。ハボックはロイの脚をグイと押し開くとひくつく蕾に舌を這わせた。唾液を送り込みながらつぷりと指を差し入れる。びくりと強張る体を宥めるように脚を擦りながらグチグチとかき回した。
「う……はぁ…ハボ……」
 ロイは誰にも触られたことのない奥まった箇所を弄られる恥ずかしさに両手で顔を覆う。ハボックは指を引き抜くと一旦体を離し服を脱ぎ捨てた。そうしてロイに圧し掛かるとその脚を大きく開いて抱えあげる。
「たいさ……」
 そう甘く呼ぶとグイと腰を突き入れる。ゆっくりと押し開くようにして全てを収めきるとハボックはロイに言った。
「たいさ……手、どけて……顔見せて……」
 だがロイはふるふると首を振るだけで手をどけようとしない。ハボックはくすりと笑うとからかうように言った。
「さっきは散々オレのこと煽ったくせに……」
 ハボックはそう言うとロイの手首を掴んで強引に手を引き剥がす。
「あっ、ヤダっ」
「アンタの感じるとこ、見せて……」
 ハボックはそう囁くとガツンとロイを突き上げた。
「ああっ」
 きつく突き上げられてもう顔を隠すことも出来ずにロイはハボックの肩に縋りつく。
「ああっ……あんっ……あっひあっ」
「たいさ……たいさ……」
 大きく開かれた脚を胸につくまで抑えこまれて深々と突き入れるハボックに、ロイはごりごりと感じるところを責められて全身を快楽に染め上げられていった。
「あふ……やぁっ……ハボっ……あっ…イっちゃうっ」
 ロイはポロポロと涙を零しながら熱を吐き出す。その途端更に奥を犯されてロイは嬌声を上げた。
「やっ……ダメッ……そ、んなにしたら……っ」
 死んじゃう、と泣きじゃくるロイに構わずハボックはロイを攻め立てる。
「たいさ……かわいいっ」
「あひ……やんっ……はぼぉ…スキ……っ」
「オレも……オレも、たいさっ」
 ロイはハボックに縋りつきながら腰を振りたてた。ハボックは噛み付くようにロイに口付けると言った。
「中に……いい?」
 耳元に囁く声にロイはがくがくと頷く。
「欲し……来て……ハボっ」
 濡れた声で強請るロイにハボックは笑うと一際強く突き上げた。ぶるりと震えるとロイの最奥へと熱を叩きつける。
「アッアアア――――ッッ!!」
 びくびくと震えながらロイも熱を吐き出した。
「あ……ハボ……っ」
「たいさ……っ」
 ぎゅうと互いを抱きしめあって二人は深く深く口付け合ったのだった。


2007/7/24


やっぱり我慢できずに書いてしまいました。ハボロイは「誘い受け」です。やっぱりスキかも、こういうの(笑)