寒い その後
ロイの額のタオルを絞りなおしてそっと載せてやれば、ロイが薄っすらと目を開いてハボックに腕を伸ばしてくる。
「ハボ、寒い…」
そう呟くロイの額は燃えるように熱くて、ハボックは眉を顰めてロイの手を握り締めた。
「さっき解熱剤飲んだから、もう少ししたら楽になりますよ。」
ハボックはそう言って宥めるようにロイの手を擦る。だが、熱にうかされたロイは嫌々と首を振るとハボックに向かって
言った。
「寒い、ハボ…凍えそう…」
普段は強い光を湛えるその瞳が弱々しく瞬くのに、ハボックはギュッと胸を締め付けられる。ハボックはブランケットを
まくるとロイの隣りに潜り込んでその体をギュッと抱きしめた。
「たいさ…こうしたら少しはあったかいっスか?」
そう耳元に囁けばロイが体を摺り寄せてくる。
「ハボ…ハボ…」
「ここにいますよ。」
うわ言のように囁くロイに優しく答えてハボックはロイを抱きしめた。寒い、と呟く声にハボックは眉を顰めた。
(こんなに熱いのに…)
発熱しているロイの体はハボックの体よりよほど熱くて、それでも寒いというロイが可哀相でハボックは抱く腕に力を
込める。これ以上どうしてあげることも出来ない自分が歯痒くて、ハボックはロイの体を抱きしめてその髪に顔を
埋めた。
「たいさ…オレの熱、全部持ってっていいっスよ…」
そう囁けばロイが安心したようにハボックに摺り寄る。ハボックの胸に頬を寄せるとホッとしたように呟いた。
「ハボ…あったかい…。」
普段なら確かに体温の低いロイに比べてハボックの体はずっと温かい。冬の夜など湯たんぽ代わりにハボックを使って
要ると言っても過言ではないほどだ。きっとその記憶だけで温かいと感じているのだろうとハボックはロイの髪をそっと
撫でた。
「あったかいっスか?」
そう聞けばこくりと頷く。ロイは薄っすらと目を開けるとハボックを見て言った。
「ハボ…ギュッてして…」
子供のように強請るロイにハボックはくすりと笑うと答える。
「いいっスよ、こうっスか?」
そう言ってギュッと抱きしめればロイが満足そうに笑った。
「もっと…もっとギュッて…」
舌足らずにそう言うロイの願いを聞き入れてハボックはもう少し力を込める。安心して長い息を吐くと、ロイはハボックの
胸に顔を埋めて眠りに落ちていった。
コチコチと時計の音が響く部屋の中、まだ少し荒いロイの息遣いが聞こえる。ハボックは汗に濡れたロイの髪をかき
上げると、タオルを取ろうとロイから身を離そうとした。だが、ベッドから起き上がろうとハボックがした途端、ロイの顔が
泣きそうに歪んでハボックに向かって腕を伸ばす。その様子に慌ててロイの横に戻れば、ロイはホッと息を吐いて
ハボックの胸に顔を寄せた。
「たいさ…」
そう呼べばロイの顔が僅かに綻ぶ。そんなロイをじっと見つめていたハボックは情けない顔をして天井を見上げた。
「参ったな…」
摺り寄ってくるロイは目を閉じていることもあってやけに幼く見え、その可愛さはいつもの3倍増しだ。その上、熱で桜色
に染まった頬と荒い息遣いはまるでコトの最中のロイのようで、ハボックは浮んでくる不埒な思いを首を振って慌てて
打ち消した。
「う…ん…」
首を振った拍子に僅かに離れてしまった体が不満だというように、すりすりと頭をこすり付けるロイにハボックは顔を
歪める。
「だからそれはヤバイって…」
病人に欲情してどうする、とハボックは少しでもロイから身を離そうとするが、そうすればする程ロイがハボックに擦り
寄ってくる。いつの間にかベッドから落ちそうなほど端に寄ってしまった体をグイとベッドの真ん中まで戻すと、ハボック
はため息をついた。
「も、理性焼け切れそう…」
さっきまでは辛そうなロイを可哀相だと思う気持ちだけだったのに、今自分はロイを抱きたくて仕方がなくなっている。
「ここでこの人抱いたりしたら後で燃やされるよな…。」
自分を戒める為にそう呟いてみたものの、それでもいいから抱きたいと思ってしまう。
「うわ、オレってケダモノ…。」
ハボックが情けなくそう言ったとき、ロイがパチリと目を開いた。黒い瞳にヒタと見つめられて、ハボックは心を見透かさ
れたようでギクリとする。
「た、たいさっ?」
そう名を呼べばロイはとろんと目を蕩かしてハボックに言った。
「ハボ…シテ…」
「ええっ?!」
ホントに心を読まれたのかとギョッとするハボックにロイは縋りついてくる。
「ハボぉ…」
くたんとしなだれかかってくるロイの体を抱きしめて、ハボックはその熱さにハッとした。
(ダメダメダメッッッ!!!)
ハボックはブンブンと首を振るとロイの体を引き離す。そうしてその瞳を覗きこむと優しく囁いた。
「元気になったらたっぷりシテあげますから…。今は休んで、ね?」
そう言うとロイの顔が悲しそうに歪む。
「私がキライか、ハボ…」
じんわりと滲んでくる涙にハボックは慌ててロイを抱きしめた。
「や、そうじゃなくてっ…アンタ熱あるんスからっ」
そう言ってもロイは聞いていないのかポロポロと涙を零す。ハボックは困りきってロイを抱きしめると言った。
「じゃね、気持ちイイコトしてあげるから…それでいいデショ?」
「気持ち、イイコト…?」
「そう、たいさのことスキだからするんスよ。」
ハボックはそう言うとロイのズボンの中に手を入れる。ロイの中心をキュッと握り締めるとロイの体がびくりと震えた。
ゆっくりと扱き始めればロイの表情がとろんと融けてハボックの胸に頭を預けてくる。熱の所為か、快楽の為か、熱い
吐息を零すロイの姿にハボックはごくりと喉を鳴らした。
(我慢っ!我慢だ、オレっ!)
段々と追い上げられてロイは小さく首を振る。
「あん…ハボ…はあん…」
甘い吐息を零しながらロイはふるりと震えるとハボックの手の中に熱を吐き出した。くたりと力の抜けたロイの体を抱き
締めてハボックはロイに囁く。
「たいさ、大好きですよ…だから今はゆっくり休んで…」
そう言えばロイは安心したように笑って眠りに落ちる。さっきより幾分落ち着いてきた呼吸にホッと息をつくと、ハボック
はロイをそっと抱きしめたのだった。
パチリと目を開けるとロイはあたりを見回す。ベッドの上に体を起こした時、扉が開いてハボックが寝室に入ってきた。
「あ、目覚めたんスか?」
ハボックは持っていたトレイを置くとロイの額に触れる。
「よかった、熱下がったみたいっスね。」
ハボックはそう言うと水の入ったグラスをロイに渡した。そっと口を付ければ乾ききった体に染み入るようでロイはホッと
息をついた。その時、ふとハボックを見上げたロイはやけに疲れた様子のハボックに眉をひそめる。
「ハボ、お前、なんか疲れてないか?」
そんなに看病が大変だったのかと申し訳ないと思ってそう言えば、ハボックが乾いた笑いを洩らした。
「いや、別にいいんスよ、別にね…」
よろりとよろめいて部屋を出て行くハボックをロイは不思議そうに見送ったのだった。
2007/10/1
「寒いと毛布にくるまってもやっぱり寒いというロイを温めるハボ」って妄想を頂きましたらうっかりその後が…。ケダモノになりきれないハボでした(笑)