ポケモン


「あの、前から気になってたんスけど…」
 前を歩くハボックが肩越しに振り向いて言う。
「なんだ?」
 ロイが黒い瞳をひたと向けて問えばハボックは言いづらそうに口を閉ざした。
「なんだ、言いたいことがあるならはっきり言え」
 そう言って睨みつけるロイはパッと見た感じは人間によく似ているが、苛々と振り回した尻尾が彼が人間ではないことを告げていた。
「んー。生まれ故郷を離れたこんな場所までアンタを連れてきちゃってよかったのかなって…」
 そう答えたハボックは新米のポケモンレンジャーだ。数週間前、ハボックはクロッカトンネルの落石を取り除くというミッションの際、偶然出会ったロイの力を借りたのだった。普通ならキャプチャしてポケモンの協力を仰ぐ所なのだが、どうしてもロイをキャプチャできなかったハボックに、ロイが仕方なしに協力してくれたのだ。その後、本来ならハボックはロイに別れを告げて次のミッションに備えるべくレンジャーベースに帰らねばならないのだが、一目惚れ同然に恋に落ちてしまった二人は結局一緒に旅をすることを選んでしまったのだった。
「…迷惑なのか?」
「まさかっ!」
 淋しそうに言うロイにハボックは慌てて否定する。そうして立ち止まるとロイの体をそっと抱きしめた。
「ホンネを言えばオレはずっとロイと一緒にいたい。でも、それがアンタにとっていい事なのかと言われたらよく判らない…」
 ハボックはそう言うとロイの目をじっと見つめた。
「このままベースに帰ったら、きっとアンタ、珍しいポケモンだって言われて嫌な思いするに違いないし…」
 ポケモンの研究者達は今までみたこともないポケモンであるロイに目の色を変えて、検査だのなんだのとやりたがるだろう。
「それでも私はお前といたい」
 ハボックをまっすぐに見つめてそう言う黒い瞳にハボックは息を飲んだ。そしてロイをぎゅっと抱きしめるとその耳元に囁いた。
「オレが守るから、だからずっと一緒にいよう」
 ハボックの言葉に嬉しそうに頷くロイの唇に、ハボックはそっと口付けた。


2007/02/06