写真屋ケンちゃんその後  Havoc × Roy ver.


「ねぇ、大佐。オレちょっといいもん手に入れたんスけど」
 夕食が終わってソファーで寛いでいるとハボックが突然そんなことを言い出した。ロイは読んでいた本を閉じてハボックの顔を見る。
「いいもの?」
「ええ、見たいっスか?」
 わざわざ言うのだからロイが見たいか見たくないかにかかわらず、ハボックが見せたいのだろうと思って頷くとハボックはちょっと複雑な顔をした。
「なんだ、見せたいんじゃないのか?」
「見せても怒んないでくださいね」
「それは内容によるだろう?」
「怒んないって約束しないなら見せません」
 見せたそうな素振りをしたくせにそんなことを言うハボックにロイはムッとする。見なくてもいいと突き放してしまえばいいようなものだが、ロイもいい加減興味を煽られて不承不承頷いた。ハボックは立ち上がるとソファーの後ろの隙間に手を突っ込む。袋に入った本を取り出すとロイに渡した。ロイはハボックが差し出したものを手に取るとそのタイトルを声に出して読む。
「ロイ・マスタング官能写真集………はああっ?!」
 慌てて本を開けば開くページ開くページ全てが自分の写真で埋め尽くされていた。部下に訓示を与える真面目くさった顔から会議の時の眠そうな顔、シャワーを浴びた後なのか、滴の垂れる髪を気だるげにかき上げる姿やいつもきっちり軍服を着込んでいるロイには珍しく、白いシャツ一枚で伸びをする姿など、「官能」と言うのは言い過ぎだろうが、それでも一体いつこんな写真を撮ったんだと言う様な本人も全くあずかり知らぬ様な写真のオンパレードだった。
「こっ、こんなもの誰がっっ」
 ふるふると震える手で食い入るように写真を見ながらそう呟けば、ハボックが答える。
「広報部のケン・グラントって知ってるでしょ?アイツが副業でそんなの作ってるんですよ」
「ケン・グラント准尉か!前に広報の取材であったことがある。いつの間にこんなもの…っ」
 肖像権の侵害だっ、燃やしてやるッと発火布を取り出すロイの手からハボックは慌てて写真集を取り返した。
「やめてくださいよ、高かったんスから」
「いくらだ?」
「2万センズっス」
 値段を聞いてロイは顎に手を当てるとフムと考える。それから上目遣いにハボックを見て言った。
「安すぎるだろう、私の写真集としては」
「アンタねぇ…っ」
 俳優でもモデルでもないただの軍人の写真集に2万なんて、とんでもない値段だと思っていたのにそんなことを言うロイにハボックは思わず声を荒げる。だが、本日の論点はそこではないと思い直してハボックは言った。
「この写真集の購入者、9割は女性だそうですよ」
「さもありなん」
 フンとふんぞり返って笑うロイにハボックはムッとする。だがそれ以上に不愉快そうにハボックは言った。
「ってことは後の1割は男が持ってるって事なんスよ」
 言われて見れば当然のことを口にするハボックにロイは「なるほど」と頷く。
「それはあまり嬉しくはないな」
 ロイがそう言った途端、ハボックのまとう空気が益々不穏なものになったことに気づいてロイはハボックを見た。本を見せる前、「怒るな」と言ったハボックの方が怒っているようで、ロイは不思議そうに首を傾げる。
「何を怒ってるんだ、ハボ」
「何を、ですって?」
 ロイに聞かれてハボックは思い切り顔を歪めた。
「アンタの写真を他の男が持ってるんスよ?オレ以外の男がアンタの写真眺めてニンマリしてるなんて、胸糞悪いっ!!」
 心の底から本気でそう言っているハボックをロイはポカンと見上げる。本を紙袋に突っ込んでテーブルの上に放り投げると、ハボックはドサリとロイの向かいに腰を下ろした。煙草を咥えて火をつけようとライターを鳴らすが、ちっとも火がつかないそれにやけになったようにカチカチカチカチと鳴らし続けて、ようやく火がつくと深く吸い込む。不貞腐れたようにロイから視線を逸らしてスパスパと煙草を吸う様子にロイはくすくすと笑い出した。
「なに笑ってんスか」
 ムッとしてロイを睨んでくる空色の視線に、ロイは余計に笑いがこみ上げて止まらなくなる。お腹を抱えて笑うロイにハボックはムカアッとすると灰皿に煙草を押し付けて立ち上がった。そのままリビングを出て行こうとするハボックのシャツの裾をロイは慌てて掴む。
「怒るな」
「アンタが笑うからでしょうっ」
 本気で怒っているハボックにロイは悪かったと言うと、その腰に手を回した。
「妬いてるのか、ハボック」
 上目遣いにハボックを見ながらそう言えばハボックの頬に朱が差す。
「そっ…スよ。わるいっスかっ?女の子達がアンタの写真持ってるのだって嫌だけど、野郎どもがアンタの写真持ってる なんてマジで赦せないっスよ。アンタのあんな顔やこんな顔の写真…っ」
「でも、私がその写真をソイツらに渡したわけじゃないんだぞ。妬くなんておかしいだろう?」
「妬くって言葉がヘンならムカツクんですっ!くそっ!」
 そう言ってそっぽを向くハボックをロイはうっとりと見つめた。こんな風に言われて嬉しくないと思うヤツがいるだろうか。ロイは嬉しそうに笑うとハボックの頬を撫でる。
「あんな写真集に載ってる写真なんて大したもんじゃないだろう?」
 そう言ってロイはハボックの頭を引き寄せるとその耳元に囁いた。
「お前しか知らない顔がたくさんあるんじゃないのか…?」
 ロイはそう囁くとハボックの耳をぺろりと舐める。グイと引き離されてハボックの顔を見れば悔しそうに顔を歪めていた。
「じゃあ、オレしか知らない顔、見せてくださいよ」
 情欲に深く染まる瞳でそう言われればロイは薄っすらと笑う。
「いいとも」
 ロイがそう言った途端、噛み付くように口付けられた。


 ベッドの上に横たえられて服を脱がされていく。「灯り」と訴えればハボックがにんまりと笑った。
「オレしか知らないアンタの顔、見せてくれるんでしょ?灯り消しちゃったら見えないじゃないっスか」
「…っっ」
 いくら暗くても顔が見えないほどではないないのに意地悪くそういうハボックにロイは頬を染める。だが、それ以上は言わずにハボックが服を剥ぎ取るのに身を任せた。
「たいさ…」
 服を脱ぎ捨てて圧し掛かってくるハボックの男くさい顔にぞくりとする。ハボックは額にかかるロイの髪をかき上げると口付けて来た。
「ん…ふ…」
 唇を舐め甘く唇を噛むと舌先が歯列を割って侵入してくる。歯茎を舐め口内を好き勝手に動き回った舌にきつく己のそれを絡め取られて、ロイはハボックの肩に縋った。深々と交わした唇をようやく解かれた頃にはロイの息はすっかりと上がってしまってロイは恨めしげにハボックを見る。ハボックはロイの頬を撫でると言った。
「ふふ…いい顔」
 そんな風に言われると余計に頬に血が上る。ハボックは紅く染まったロイの頬にチュッと唇を落とすと、ロイの乳首に手を這わせた。キスだけでもう堅く尖ったそこをくりくりとこね回されてロイの唇から零れる息が熱を上げる。指の腹でこねたかと思うとキュッと摘み、今度は爪の先で引っ掻き、指先で弾く。そうして指で弄ぶ間にも、ハボックはロイの顔をじっと見つめ続けていた。
「んっ…くっ…あんっ…あ…っ」
 胸から沸き上がる快感に素直に声を上げていたロイはふとあげた視線の先で自分を見つめるハボックと目が合って思わず息を飲んだ。ハボックの顔を両手で覆ってその視線を遮る。
「み、るなっ!」
「約束が違うデショ」
 ハボックはくすりと笑うとロイの両手を右手でまとめて頭上に押さえつける。胸を弄っていた左手を滑らせて、ハボックはロイの中心をキュッと握り締めた。
「ああっ!」
 仰け反るロイを押さえつけて、ハボックはロイの中心を嬲る。棹を扱き袋を揉みしだけばロイが身を捩った。
「あっ…ああんっっ…んっんっ…」
 とろとろと零れる蜜がハボックの手に擦られていやらしい水音を立てる。先端の穴を指先でくりくりとこねられて、ロイはブルブルと体を震わせた。
「ひっ…いああっ…あふ…はあっ」
 顔を紅く染め、眦に涙を滲ませて、荒い息を零すロイはたまらなく艶やかだ。この顔は間違いなく自分だけが知っているものであり、ハボックは自分だけのロイの顔をもっともっと見たくてロイを追い立てる手の動きを早めた。
「んっんっ…あっ、ハボォ…も、でる…っ」
「いっスよ…オレの手、アンタの蜜でびちょびちょにして…」
 ハボックはそう囁くと一層きつくロイを扱く。
「あっあっ…アッアア―――ッッ!!」
 ロイはびくびくと体を震わせると高い悲鳴を上げて身を仰け反らせた。涙に濡れた黒い瞳は大きく見開かれ、悲鳴をあげた唇はひくひくと震えながらその口の端から涎をたらしている。その顔を食い入るように見ていたハボックはロイの涙を唇で拭った。
「あ…ハボ…」
 強請るように差し出される舌を絡め取ってハボックは深く口付ける。それから耳の中に舌を差し入れてぬめぬめと嘗め回しながら言った。
「もっとイイ顔、みせて…」
 ハボックはそう言うとロイの熱に濡れた指をその奥まった蕾へと差し入れる。ぐちぐちとかき回せばロイの唇から熱い吐息が零れた。
「ん…ふ…うんっ…ハボ…」
「気持ちイイっスか…?」
 そう囁けばロイが素直に頷く。うっとりと蕩けた表情にハボックはもうたまらなくなって指を引き抜くとロイの脚を抱えあげた。滾る自身でロイの入口をクチクチと弄ればロイが切なげに眉を寄せる。焦らすように先を少し入れては抜いていると、ロイがハボックの背に回した手に力を込めた。
「ハ、ボ…っ…はやくっ…」
 切なげに眉を寄せてロイは腰を押し付けてくる。欲に溺れた表情にハボックは笑うとグイと腰を突き入れた。
「アッア―――――ッッ!!!」
 ずぶずぶと沈められる熱にロイは白濁を迸らせる。びゅるびゅると熱を吐き出しながら、後ろを牡でかき回される快感に、ロイの顔は呆けたようになっていた。ただ快楽を貪ることだけを追いかけるその表情は、普段の怜悧なそれとはかけ離れており、一体誰がロイのそんな表情を思い浮かべることが出来るだろうと言うほど、いやらしいそれだった。
「あんッ…あっ…ハボっ…もっとぉ…」
 自ら腰をくねらせハボックをより一層深くに迎え入れようと脚を開く。ハボックの腹に勃起した己を擦り付けて快感を得ようとするその顔は、娼婦よりいやらしく淫らだった。
「オレの…オレだけの…」
 ハボックはそう呟いてロイが望むまま深くを犯してやる。嬌声を上げて熱を撒き散らすロイの最奥に、ハボックもまた熱い飛沫を叩きつけたのだった。


 ハボックの厚い胸に頬を寄せてロイはため息を零す。優しく髪を撫でるハボックにロイは言った。
「満足したか?」
「今のところは、ね」
 そう言うハボックにロイは思わず身を離そうとする。そんなロイを腕の中に封じ込めてハボックは言った。
「もっともっと見たい…オレしか知らないアンタの顔…オレもまだ知らないアンタの顔…」
 そう言って見つめてくる紺青の瞳にロイは息を飲む。
「もっと乱れさせてもっと悶えさせて、もっとオレのこと強請らせて、もっともっと…」
 自分を見つめる情欲に染まった瞳にロイはごくりと喉を鳴らすと腕を伸ばした。
「お前にならいくらでも見せてやる…」
 ロイはそう囁くとハボックに口付けていった。


2007/9/14


ハボの写真がこっそり裏で流れていると言うネタから始まった話だったのですが、実はロイの写真もハボが知らないうちに密かに流れているって言われたのでつい…。ハボにバレてますけどね(苦笑)