女体3


 寝室の扉を開けたハボックは髪の長い女性がベッドに腰掛けているのを見てギョッとする。まさかロイが連れてきたのだろうかと軽いショックを受けたハボックは、物音に振り向いた女性の顔を見て目を見開いた。
「大佐っ?」
 振り向いた女性の顔はロイのもので、ハボックはまたロイがなにやら妙な薬を錬成したのかと眉を下げる。そんなハボックの顔を見てロイが言った。
「これはカツラだ」
 そう言ってロイが頭にやった手で髪を掴めば、長い髪がずるりと取れてロイの艶やかな黒髪が現れた。
「なんだ、驚かさないでくださいよ」
 ロイのガールフレンドかと思って一度驚き、妙な薬を錬成したかと二度驚き、心臓に悪い事この上ないと文句を言うハボックをロイは睨む。
「色々と失礼な奴だな。私はただ考えていただけだ」
「考えてたって何をっスか?」
 ハボックがロイの隣に腰を下ろしながら尋ねればロイが答えた。
「………と思って」
「え?」
 ロイには珍しく小さな声でもごもごと言う言葉をハボックは聞き取れずに聞き返す。そうすればロイはそっぽを向けた顔を赤らめて早口に繰り返した。
「お前の目が私以外の人間に向かないようにするにはどうしたらいいかと思ったんだっ」
 そう言ってしまって開き直ったのか、ロイは一つため息をついて続ける。
「お前、ボインの女性や脚の綺麗な女性が好きだろう?でも、私には残念ながらお前が喜ぶようなボインはついてない。それなら錬成すればいいかと思ってやってみたけどお前は喜ばない。だったら私はどうすればいい?」
「大佐……」
 言ってまっすぐに見つめてくる黒曜石の瞳をハボックは目を見開いて見返す。それからフッと笑みを浮かべて言った。
「別にオレはボインや綺麗な脚が好きって訳じゃないっスよ」
「でも、そう言った女性を見かけるといつも鼻の下伸ばして見てるじゃないか」
 ムッと唇を歪めて主張するロイにハボックは苦笑する。
「鼻の下なんて伸ばしてないっスよ」
 そう言っても不服そうに睨んでくるロイの髪に手を伸ばしてハボックは言った。
「そりゃオレも男っスからボインや綺麗な脚の女性が側を通ったら目が行くっスよ?でも、そんなの通り過ぎちまえばそれまでっス。オレがいつだって見てるのはアンタだけっスよ、大佐」
「でも……」
 ハボックはロイが何か言う前にその細い体を引き寄せて抱き締める。
「ボインよりも何よりも、オレは今のままの大佐が一番好きっス。目を離せない」
「ハボック」
「だからもう変な薬は錬成しないでください。もしそのまま戻らなくなったらどうするんスか。おっぱい付きの大佐なんてまっぴらっスよ?」
「私はそんなヘマはしないぞ」
 ちょっとずれたところに文句をつけるロイにハボックはクスリと笑った。
「とにかく、もう薬の錬成はなしっス」
「このままの私でいいのか?」
「そのままの大佐がいいんス」
 助詞を強調してハボックが言えば、ロイの黒い瞳が僅かに見開く。ポスンとハボックの胸に顔を押しつけて言った。
「そうか」
「そうっスよ」
 優しい声音に顔を上げれば空色の瞳が自分を見つめている。強請るように目を閉じれば降ってくる口づけを、ロイは笑みを浮かべて受け止めたのだった。


2010/02/09