小さな暴君とお人好しな騎士の話


「もういい加減認めちゃえば?適当なところで諦めるのも大事だぜ、少尉」
 そんな事言う金目の少年をハボックは睨む。だが、自信満々で絶対に拒まれることなどないと信じ切っている彼を、小憎らしいと思うと同時にたまらなく愛しいと想っているのも事実だった。
「で?認めたらどうなるわけ?」
 ハボックは自宅の小さなソファーにだらしなく寄りかかって尋ねる。そうすればエドワードは目を輝かせて圧し掛かってきた。
「決まってんだろ。恋人同士になるんだよ、俺ら」
 エドワードはそう言ってハボックの脚の間に自分の体をねじ込むようにしてハボックの頬を両手で挟む。ちょっと垂れてはいるが、綺麗な空色の瞳を見つめてうっとりと笑った。
「恋人同士ねぇ……」
 正直10歳近くも年下の少年とそんな関係になるなんて考えられない。これ以上自分の気持ちを誤魔化すことはできないが、だからと言って15歳の少年を恋人だと言って抱き締めるには大人の矜持とモラルが邪魔をした。
「なんだよ、気に入らないのか?」
 何となく気が乗らない様子のハボックにエドワードは唇を尖らせる。その子供らしい表情にハボックは笑って言った。
「一応こっちは大人だからな。いろいろあんのよ」
 ピコリと咥えた煙草を跳ね上げて笑うハボックの唇からエドワードは煙草を取り上げる。右手でギュッと握り潰すとハボックの頬に手を添え、至近距離から空色の瞳を覗き込んだ。
「大人だから?そんなの関係ねぇだろ」
 不満そうに言ってエドワードは金色の目を細める。唇が触れ合わんばかりまで顔を寄せて言った。
「言えよ、少尉。俺が好きって」
「……大将……」
「認めろって。それとも今更俺のこと拒むわけ?」
 そう言う金色の瞳にハボックは飲み込まれそうな錯覚に陥る。思わずキュッと目を瞑れば柔らかい唇が押し付けられた。
「……ッッ!」
 ビクッと震えてハボックはエドワードを押し返そうとする。だが、エドワードは体重をかけるようにして深く唇を合わせた。息苦しさに唇を開けばすぐに少年の舌が入り込んでくる。口内を熱い舌で弄られて、ハボックは甘く鼻を鳴らした。
「少尉……?」
 唇を離して少年が呼ぶ。ハボックは腕で紅くなった顔を隠して言った。
「ああもうっ、判ったよ!認めればいいんだろっ、認めればッ」
 ヤケクソのように叫ぶハボックにエドワードはにんまりと笑う。紅く染まった頬を撫でて囁いた。
「言って?少尉……」
 低く囁く声にハボックはゾクリと身を震わせる。それからうっすらと開いた瞳で少年を見て言った。
「好き……だ、エド」
「………俺も」
 漸く引き出した言葉にエドワードは満足そうに笑うと、ハボックに深く口付けた。



09/09/25