気分転換


 バンッと勢いよく司令室の扉が開く。無言のまま靴音も荒く入っていたロイの様子にハボックを初めとする司令室の面々は首を竦めた。
(う…わ、益々機嫌悪くなってる……)
 ハボックは執務室の扉に向かうロイの横顔をこっそり伺いながら思う。今日、ロイは朝から機嫌が悪かった。季節外れの寒波で春だというのに真冬のような寒さに加え、雪になりそうなほど冷たい雨が降っていたことと、そんな寒さの中出たくもない屋外での式典に参加させられた事。更に加えておべっかの応酬ばかりで会議とは名ばかりの意味のない会合に出席させられた事でロイの不機嫌はピークに達していた。切れ長の黒い瞳を更に吊り上げたロイは一緒に戻ってきたホークアイを振り返る。執務室の扉に手を伸ばしながら言った。
「次の会議は何時だ?」
 苛立ちと不満が鬱積した声にホークアイは首を傾げる。ほんの少し考えてから言った。
「一時間後です、大佐」
「一時間後?」
 聞き返してロイは壁の時計を見る。朝聞いたスケジュールでは式典が延びたこともあって、確か後10分も間がなかった気がする。そう思ったのが顔に出たのだろう。ホークアイが笑みを浮かべて言った。
「会議の時間を遅らせて貰いました。リフレッシュなさって下さい」
 そう言う副官をロイは目を見開いて見つめる。次の瞬間ニヤリと笑っていった。
「なるほど、気の利く副官で助かるよ」
「根の詰め過ぎは作業効率を下げますから」
 にこやかに言うホークアイに頷いて、ロイは成り行きを息を潜めて伺っている部下たちを見渡し、金色の頭に視線を止めて言った。
「ハボック少尉、コーヒーを頼む」
「イエッサー!」
 かかった声にハボックはガタンと立ち上がる。急いで給湯室に向かう背を見送ってロイは目を細めて執務室に入った。


「コーヒーお持ちしました」
 珍しくハボックがきちんとノックをしてから入ってくる。そうでなくても悪い機嫌をこれ以上損ねないよう、警戒しているのだろうと思えば、ロイの唇に笑みが浮かんだ。
「どうぞ」
「ありがとう」
 コトリとカップを机に置くハボックをロイはにっこりと笑って見上げる。そう言ったままカップに手を伸ばしもしないで見つめてくる黒い瞳に、ハボックは居心地悪そうに身じろぎして言った。
「今日は朝から大変っしたね」
「まだまだ終わらんがな」
「はあ、お疲れさまっス」
 ハボックは上目遣いにロイを見た視線を左右にさまよわせる。
「じゃあ、一息入れてくださいね」
 そう言って逃げるように執務室を出て行こうとするハボックをロイは引き止めた。
「ハボック、ちょっと」
「……なんスか?」
 チョイチョイと指先で呼ばれてハボックは扉のところから戻ってくる。「なに?」という風に首を傾げるハボックにロイは言った。
「飲ませてくれ」
「は?」
 言われてキョトンとするハボックにロイはコーヒーを指差し自分の唇を指差す。ロイの言わんとしていることを察してハボックは真っ赤になった。
「何言ってるんスか、んなもん、自分で飲めばいいっしょ!」
「一息入れさせてくれるんだろう?」
「だからってねぇッ」
「ハボック」
「ッッ!!」
 笑みを浮かべて甘えるように名を呼ばれてハボックは絶句する。こんな風に呼ばれると弱いと知っていてすれば、ハボックは紅い顔を茹で蛸のようにして言った。
「……今回だけっスからね」
 ハボックはそう言うとカップを手に取りコーヒーを口に含む。目を閉じそろそろとロイの方へ顔を近づければロイの唇が迎えた。
「ん……ふ……」
 送り込まれたコーヒーをロイはコクリと飲み込む。僅かに唇を離して言った。
「もっと」
 薄く笑って強請れば怒ったような照れたような表情でハボックはもう一度コーヒーを口に含む。同じように唇を合わせた途端、今度はグイと引き寄せられてハボックは目を見開いた。
「ンッ?!ン―――ッッ!!」
 深く唇を合わせてロイは抱き込んだハボックの体を机に押さえ込む。真上からハボックを見下ろして言った。
「と言うわけで、リフレッシュにつきあってくれ」
「はあっ?!何言って…ッ?!」
「せっかく中尉が気を利かせてくれたんだ。有効に使わんとな」
 ロイはそう言うと素早くハボックのボトムを寛げる。スルリと入り込んできた手にハボックが慌てた。
「ちょ…ッ!どこに手入れて…ッ!……ヤッ、あ、アアッ!!」
 柔々と竿を扱かれてハボックが身を捩る。もがくハボックを押さえ込んでロイは言った。
「こら、暴れるな。時間がないんだ」
「だ、だってアンタここどこだと思って……ッ!」
「大丈夫だ、一時間だけなら中尉も目を瞑ってくれる」
「ッ?!」
 その言葉にハボックは先程の二人の会話を思い出す。
「ア、アンタたち…ッ!」
「そう言う訳だ」
 ロイはニヤリと笑ってハボックのボトムを下着ごと引きずりおろした。長い脚を胸に押し付けるようにして大きく開けばハボックが悲鳴を上げる。
「ヤダッ!たいさッ、止めてッ!」
「大きな声を出すと外に聞こえるぞ」
 そう言ってやればハボックがピタリと口を噤んだ。そんなハボックにロイはクスリと笑って開いた脚の間に顔を埋める。
「イイコだ、ハボック」
 ロイは囁くように言って双丘の狭間に舌を這わせた。ヒクつく蕾をねっとりと舐めまわせばハボックが胸を仰け反らせて喘いだ。
「あ……ヤダぁ…ッ!」
 真っ昼間、扉の向こうには同僚達がいるという状況で体を開かれるのは恥ずかしくて仕方ない。それでもそうやって触れられれば愛されることに慣れた体は瞬く間に蕩けて言った。
「たいさァ…ッ」
「待て、今挿れてやる」
 焦れたように甘く呼ぶ声にロイは笑って体を起こす。たぎる自身を押し当てるとズッと押し入れた。
「アッ、アア―――ッッ!」
 花開くように迎え入れていく蕾にロイはうっとりとため息を零す。一気に突き入れた楔をズルリと引き抜き再び突き上げればハボックの体が跳ね上がった。
「アアッ!……ヒィィッ!た、いさァ…ッ!」
 甘い悲鳴を上げて悶えるハボックをロイは容赦なく攻め立てた。


 締め切った執務室から甘い啼き声が漏れ聞こえてくる。
「リフレッシュは上手くいっているようね」
 誰もが居たたまれずに顔を赤らめて仕事に没頭するフリをする中で、ホークアイは平然として呟いた。
「これならこの後もきっちり働いて貰えそうだわ」
 ホークアイはそう言って満足そうに笑ったのだった。


2010/04/15