看病 その後



 ロイは氷と水を入れた枕と薬やグラスの類いが載ったトレイを手に寝室の扉を開ける。カーテンを引いた薄暗い室内では荒い呼吸が響いていた。音をたてずに近づいたベッドではハボックが眉を寄せて苦しげな呼吸を繰り返していた。
 ロイはハボックの首の下に手を入れるとタオルを巻いた枕を入れてやる。そっと静かに戻してやったものの僅かな振動にハボックが閉じていた瞳を開けた。
「たいさ…」
 熱に擦れた声でハボックがロイを呼ぶ。ロイは優しく微笑むと答えた。
「なんだ?、気分はどうだ?」
 そう聞けばハボックはぼんやりとロイを見る。
「よくわかんないっス…」
 小さな声で呟く様は子供のようで大柄なハボックを幼く見せていた。汗に濡れた髪をかき上げてロイは尋ねる。
「何か欲しいものがあるか?」
 ハボックは肌に触れるロイの指の感触を追っていたが、名を呼ばれてロイを見上げた。
「冷たいものが食べたいっス…」
「アイスクリームでいいか?」
 そう聞けばハボックが微かに頷く。
「ちょっと待っていろ」
 ロイはそう言うとハボックを残して部屋を出ていく。冷凍庫から取り出したアイスクリームをガラスの器に移すと部屋にとって返した。ベッドサイドのテーブルにトレイを置いてハボックの体を起こしてやり、寄り掛かりやすいよう背中にクッションを入れてやる。ガラスの器を手に取るとスプーンで掬ってハボックの口元に差し出した。
「自分で…」
「いいから」
 そう言ってスプーンを差し出せばハボックが口を開ける。口中に差し入れたスプーンからハボックの舌と唇がアイスクリームを取り去った。ちらりと覗く舌先にロイはぞくりとしてハボックの口元を凝視する。それに気付かずハボックはロイが差し出すままに二度三度とアイスクリームを食べた。その冷たさにホッと小さく息を吐く。上目遣いにロイを見ると嬉しそうに笑った。
「うまいっス…」
 熱に白い肌を上気させ空色の瞳を潤ませるハボックはまるでロイを誘っているように見える。ロイはハボックの唇に付いたクリームを指を伸ばして掬い取ると舐めた。ぽやんとした顔で見つめてくるハボックを押し倒したい衝動を押さえ込んでロイは引きつった笑みを浮かべると言う。
「もっと食うか?」
 そう聞けばハボックは小さく首を振った。その拍子に頬を汗が流れるのを見てロイが言う。
「汗を拭いてやろう。一度着替えた方がいい」
 ロイはそう言うと器を置いてクローゼットから着替えを取り出した。部屋を出ると洗面所から熱い湯を張った入れ物とタオルを持って戻ってくる。ハボックのシャツを脱がせると絞ったタオルで汗に濡れた肌を拭いてやった。
「…っ」
 タオルを持ったロイの手が触れるたびハボックの体が揺れる。ハボックは熱に潤んだ瞳でロイを見上げると言った。
「たいさぁ…」
「なんだ?」
「たいさがさわると…ドキドキする…」
「っっ!」
 紅い顔で無邪気に笑って告げられる言葉にロイの心臓が跳ね上がる。バシャンと湯の中にタオルを落としてしまい、飛んできた湯の熱さに悲鳴を上げた。
「おま…っ、な、なんでタオルで拭いてやってるだけなのにドキドキするんだっ!」
 病気のハボックに邪まな気持ちを抱いているのを見抜かれたろうかとビクビクしながらロイがそう聞けば。
「だってたいさの手ってエッチなんスもん…」
「私の手のどこがエッチなんだっ!!」
「エッチっスよぉ…長くて綺麗で…オレ、いっつも思ってましたもん…」
 そう言ってふにゃと笑うハボックの言葉に、今現在の不埒な想いを見抜かれたわけではないらしいと、ロイはほんの少しホッとする。そんなロイの気持ちなど知りもせずにハボックが言った。
「たいさ…なんかすげぇ顔がポッポするんスけど…」
 息を弾ませてそう言うハボックの額に手を触れれば燃えるように熱い。
「たいさの手、冷たくてキモチイイ…」
 ハボックはそう呟くとロイの手に顔をすり寄せた。無防備にロイに擦り寄ってくるハボックからロイは慌てて身を引くと早口に言う。
「さっきより上がってるな」
「…え?」
 離れてしまったロイを不満そうに見上げてくるハボックから目を逸らしてロイは考えるように指先を唇に寄せた。
「座薬を使うか」
 そう呟いたロイの言葉が理解できずぼーっと見つめてくるハボックを見返すとロイはハボックの頬に触れる。安心させるように笑うと言った。
「大丈夫だ、すぐ楽になるからな」
 そう言って笑えばハボックも安心したように笑う。無邪気な笑みを浮かべるハボックの頬に口付けるとロイはハボックの肩にシャツをかけてやってから「待っていろ」と言い置いて出ていく。冷蔵庫から座薬を取ってくるとハボックに言った。
「これを使えばすぐに下がる」
「なんスか、それ…」
 首を傾げるハボックに笑うとロイはハボックの腕を引く。きょとんとしているハボックの体をベッドに横たえた。
「たいさ…?」
 包みのまま手で薬を温めていると不安そうに呼んでくるハボックの背を安心させるように撫でてやり横向きに寝かせた体の脚を抱えるような体勢にさせる。座薬の包みを開けるとハボックのズボンを下着ごと引きずり下ろした。
「た、いさっ?」
「大丈夫だ、じっとしていろ」
 びくんと震える体を押さえ付けるとワセリンを塗った座薬を蕾にグイと押し入れる。
「ヒ…ッ」
 ギクリと強ばる体に構わず薬を更に押し込めばハボックが短い悲鳴を上げた。
「ヤッ…ヤダッ…」
 逃げようとする体を引き戻して指の第一関節が入るところまで押し込むとそのまま押さえておく。薬が落ち着いた頃を見計らって指を引き抜けば、ハボックがロイにすがり付いてきた。
「やだ…っ、たいさ、コレ…とって…っ」
「大丈夫だ。これですぐ熱も下がって――」
「こんなので熱下げなくていいっス…っ」
 熱があるせいか、子供のように聞き分けのないハボックに、それでもロイが言い聞かせようとすれば。
「オレの中に入っていいのは…たいさだけっスもん…」
「…っっっ!!!」
 縋りついてくるハボックにそう囁かれてロイは血管が数本ぶち切れたように感じる。それでも飛び散りそうな理性の欠片を必死にかき集めてハボックを引き離そうとした。
「ハボっっ、おま、ちょっ、熱あるなっっ」
 判りきっていることを叫ぶロイをハボックが涙で潤んだ瞳で見上げて言う。
「これ、ヤダ…とってっ」
「無茶言うなっ、座薬が取り出せるわけ――」
 ロイがそう言いかけた時、ハボックはベッドに座り込むと脚を大きく広げた。座薬が埋め込まれた蕾に指を差し入れるとなんとか取り出そうとする。
「ハ、は、ハ、ハボっ、はぼっく…っっ」
「んっ…はあっ…と、れない…っ、たいさぁ…とれないっス…。」
 ハボックは己の蕾をかき回しながらロイに訴えた。中途半端にズボンと下着だけを下肢に纏わり付かせた状態で、紅い顔に熱で瞳を潤ませて、脚を大きく開きその奥の蕾をかき乱すハボックのあられもない姿に、もうロイの理性も抗う術を持とう筈もない。むしろここまでよく我慢したと己を褒めてやりたい気持ちいっぱいでロイはハボックを押し倒した。
「あ…?」
 ぼんやりと見上げてくるハボックの指を蕾から引き抜けば切ない声が上がる。ロイはハボックの脚を抱え上げると滾る自身を押し当て一気に貫いた。
「ヤアアア――ッッ!!」
 ハボックの唇から悲鳴が上がり、背が反り返る。逃げようとずり上がる体を強引に引き戻してロイは乱暴に突き上げた。
「ヒッ…ヤッ…いた…っ、た、いさぁ…っ」
 ボロボロと涙を流してのたうつ体をロイは組み伏せ強引に抜きさしする。ハボックが圧し掛かるロイの胸を拳で叩いた。
「やだ…や、めて…っ」
「ここに入っていいのは私だけなんだろう…っ」
「あ、あ…や、だって…っ」
 熱に浮かされた体は普段とは違う快感の拾い方をする。ぞわぞわと全身を快感が這い回るような感触にハボックは弱々しく首を振った。
「ヤアッ…変に、な、る…っ」
 ハボックはそう言うと必死に身をよじる。ロイは身を捩るハボックの動きに合わせて体勢を入れ替えた。背後から組み敷く形になったハボックの腰を持ち上げると四つに這わせ思い切り突き入れる。
「ヒャアアッッ!!」
 ガツガツと突き入れれば反り返っていたハボック自身が弾けて熱を撒き散らす。その拍子にキュンと窄まる蕾を乱暴にかき乱せばハボックの唇から嬌声が上がった。
「ヤアアッ…た、いさぁっっ」
 ハボックは涙を零し、喘ぎながら頬をシーツに擦り付ける。ロイが抜きさしする度解けた薬が繋がった部分から零れてハボックの白い脚を伝って流れた。
「ヒ…ッ、イ、くッッ」
 ぶるりと体を震わせてハボックが再び熱を吐き出す。粘性のあるそれが、ハボックの胸や顔を汚しとろりと零れた。
「う…ふあ…っ」
 己の熱に汚れてハボックはうっとりとため息を零す。顔にとんだそれを指で掬うとぷっくりと膨れ上がった胸の頂にこすりつけた。
「ん…ああ…ああんんっ」
「ハボ…っっ!!」
 いやらしいハボックの姿に埋め込んだロイの嵩が増す。凶暴に猛る熱でハボックの奥深くを突き刺せば、その唇から悲鳴を上げて、ハボックは立て続けに熱を放った。
「あっ、あっ…キモチ、イ、イ…っ」
 ロイは囁くように言うハボックから一度己を引き抜く。嫌々と啼くハボックの体を引き起こすとロイはベッドに座った己の上にハボックを向かい合わせにひき下ろした。
「ンアアアアアッッ!!」
 深々と突き刺されてハボックの唇から悲鳴が上がる。首を反らせて喘ぐハボックの空色の瞳から涙の滴が宙に舞った。
「ヒャウッ…たい、さっっ」
 切ない声で自分を呼ぶハボックを引き寄せてロイはその唇を塞ぐ。舌を絡めながら小刻みに突き上げれば感じ入ったハボックが背にまわした手でロイのシャツを握り締めた。
「アッ…ヒ…たいさ…たいさっ」
「ハボック…っ」
 いつになく熱い襞がロイに纏わりつく絶頂へと導く。ロイはハボックを強く抱き締めるとその最奥へと熱を叩きつけた。


「体がギシギシするっス…」
 ハボックはベッドに身を投げ出したまま掠れた声で呟く。
「喉もいてぇ…。」
 ため息混じりにそう言うハボックの首の下に手を入れるとロイはハボックの体を少し起こし、口移しに水を飲ませた。ホッと息を吐くハボックの体を横たえてその額に手を触れれば先ほどまでの燃える様な熱さはなくなっていた。
「座薬と運動のおかげだな」
 しれっとしてそう言うロイをハボックは睨みあげる。
「オレの体、好き勝手しやがって…っ」
 恨みがましくそう言えばロイが澄まして答えた。
「お前が誘ったんだろう?」
「いつオレが誘ったんスかっ!」
「ここは私の物だって」
 ロイはそう言うとハボックの蕾をスルリと撫でる。途端、真っ赤になって蹴りを入れて来るハボックの攻撃をかわしてロイは言った。
「これからも熱が出たらこの方法で下げてやるからな」
「二度とごめんですっ」
 紅い顔で睨んでくるハボックにロイは楽しそうに笑うと口付けていった。


2008/3/21


解熱の為の座薬を使った方から「後になってロイハボ萌えをしてしまった」なんてお話を伺って、思わず私が萌えてしまいました(苦笑)ハボは高熱の為にちょっとおかしくなっております。しかし、座薬挿れてナニも挿れて大丈夫なんだろうか…(殴)ちなみに私自身は座薬を弄ったことがありませんので細かいツッコミはなしでお願いいたしますー。突っ込んでいいのはハボのしr…(殴打)…イカン、私の方が熱があるかもしれませんー(汗)