「うわっ、雨!」
今にも泣き出しそうに垂れ込めていた空が、いよいよ耐え切れずに大粒の雨を零す。ハボックは買い物袋を抱えて慌てて軒下へと駆け込んだ。
「しまった、傘持ってこなかった。」
ハボックはそう呟いて灰色の空を見上げる。狭い軒下で濡れないように身を縮めていると、ふと いつかのことが頭に浮かんだ。降り出した雨に今の自分と同じように軒下で雨宿りしていたロイの姿。降りしきる雨の向こう、まさかそんなところで会えるとは思いもよらず考える前に声を掛けてしまった。傘がなくて困っているロイに家に来ないかと傘を差し出した時の自分を思い出してハボックは目を閉じる。叶わない恋だとそう思い続けていたあの頃。願うことすら赦されないと思っていたのに、今自分を包むのは紛れもなく幸せと呼ぶもので。
「ハボック。」
呼ぶ声にハッとして顔を上げれば傘を差したロイの姿。ロイはニッと笑うと言った。
「そこで雨宿りしててもやまないぞ。天気予報見てないだろう。今日はこれからずっと雨だ。」
そう言って面白そうにハボックを見る瞳は、ロイもあの時のことを思い出しているのだと告げている。思わず嬉しくて笑みを浮かべればロイが傘を差し出した。小走りに軒下を飛び出して隣に並べばロイが肩を抱くようにして傘を差しかける。
「何を笑ってるんだ?」
そう聞くロイも笑っているからハボックは答えた。
「マスタングさんと同じっスよ。」
そう言えば僅かに見開いた黒い瞳が嬉しそうに細められる。傘に隠れるようにして口付けを交わすと、雨の中寄り添って歩き出したのだった。


2008/04/14