光神王国 勉強編


 パタパタと駆け寄ってきた王子がティワズの服の裾を握り締めてじっとその顔を見上げる。ジーッと見つめてくる空色の瞳にティワズは首を傾げて跪くと王子に問いかけた。
「どうかしましたか?若」
 そう尋ねれば子供は益々ティワズの顔を食い入るように見つめる。一体なんなんだと困りきったティワズがもう一度同じことを尋ねようとした時、王子が漸く口を開いた。
「どうしてオレの瞳の色は空色なのにティの瞳は紅いの?」
「え?」
 そう聞かれてティワズは自分の知識を総動員する。以前読んだ書物の中に書いてあった内容を探し当てると答えた。
「目の色は体の中にある遺伝子と言うもので決まるのです。 遺伝子の中にある茶色、黄色、青の3つの色のどれが多いかによって色が決まるんですよ。でも、私のような紅い瞳はどの色も極端に少ないので紅い色になるんです」
子供はティワズの言っていることを理解したのか出来ないのか、不思議そうにティワズの瞳をじっと見つめていたが、パッと身を翻すと駆け出していってしまう。
 最近王子は何かにつけて「どうして」と聞くようになっていた。それは自然の事であったり、しきたりの事であったり内容は様々だったが、ティワズはそのどれにもなるべく丁寧に答えるようにしていた。ティワズが言うことをその時の王子が全て理解できているとは思えないが、だからと言っていい加減に済ませることは出来ないとティワズは考えていた。
(今は判らなくてもいつか判る時がくるはずだから)
 もっとも説明の途中で飽きて遊びだしてしまう事も度々だが、それはそれでいいと思っている。いずれにせよ王子に「どうして」と聞かれたときの為に、ティワズは自分自身が日々色々な事を学ぶ努力をしていた。
 そして今日も王子はティワズに「どうして」を連発する。
「ねぇ、ティ。空はどうして青いの?」
「それは太陽の光が大気の中を通ってくる時、その中の青い光が一番大気の中にあるものにぶつかって跳ね返りやすいから、私達の目には青色が一番多く見えてくるのです」
「じゃあどうして夕方になると紅く見えるの?」
「それは夕方になると太陽は地平線近くまで沈むでしょう? そうすると太陽の光が大気の中を長い距離進むので青い光は全部散らばってしまって残った紅い光が見えるからです」
ハボックはティワズの説明を眉間に皺を寄せて聞いていたが、ティワズの体に寄りかかるようにして空を見上げた。
「昼間の空はオレの瞳の色でしょ?夕方はティの色。そうしたら夜の色の瞳の子もいるのかなぁ」
「そうですね、どこかに夜の色の瞳を持った子もいるかもしれません」
「会える?」
「会えるといいですね」
 ティワズが微笑んでそう言えば、「うん」と頷いてハボックはティワズにしがみ付いた。

2008/11/01