光神王国 湯浴編


「王子さまっ、お待ち下さいっ!」
 部屋の扉を開けた途端、女官の叫び声とバタバタと走り回る音がしてティワズは目を丸くして立ち止まる。目の前を素っ裸の王子がテトテトと走り抜けていくのを見て、その赤い瞳をますますまあるくした。
「王子さまっ」
 大きなタオルを広げた女官が困ったように王子を呼ぶのにティワズは尋ねる。
「どうしたんですか?」
「あ、ティワズさま」
 少年の声に漸くティワズがいる事に気付いた女官が王子を追っていた足を止めて振り返った。
「それが、湯浴みをしてさし上げようと思ったのですが嫌だと仰られて
 そう言う女官の声に答えるように、カーテンの影に逃げ込んでいたハボックが叫ぶ。
「イヤーッ!湯浴み、嫌いーッ!!」
「王子さまっ」
 その声に女官がタオルを手に再び王子を追い始める。ちょろちょろと逃げ回る王子に手を焼く女官の姿を目で追っていたティワズは、目の前を小さな体が走りぬけるタイミングに合わせて腕を広げた。
「若」
「やんっ、ティ邪魔ッ!」
 逃げ道を遮られ、その腕に抱きとめられて王子はポカポカとティワズの胸を叩く。勢いよく打ち付けられる拳をよけて顔を背けながらティワズは言った。
「若、私と一緒に湯浴みをしましょう。私が流してさし上げますから。それでも嫌ですか?」
「ティと?」
「ええ」
「それなら湯浴み、するっ」
 パッと顔を輝かせる王子に笑って、ティワズは王子の手を取ると布で仕切られた奥へと進む。申し訳なさそうな顔をする女官に自分の分の着替えも用意するよう頼むと、服を脱ぎ捨てた。別の女官が差し出した布で王子と自分の汚れを軽く落とすと湯を張った桶の中へと入った。
「ティっ」
 その途端、王子に抱きつかれてよろめいた拍子にバシャンと湯を跳ね上げてしまう。それに喜んだ子供がバシャバシャと湯を跳ね上げて遊びだすのをティワズは慌てて押し留めた。
「いけません、若!湯を無駄にしてはダメです」
「なんでー?つまんない、そんなの」
 ムゥと頬を膨らませる王子の肩に手で掬った湯をかけてやると言う。
「これだけの量の湯を用意するのは大変なんですから。遊ぶのはまた別のもので遊びましょう。さあ、かけますよ」
 ティワズはそう言うと手桶で湯を掬いハボックの髪にかけ始める。そうすれば王子が途端に頭を振って嫌がった。
「イヤーッ!これ、嫌いッ!!」
「若。目をお瞑りなさい。お耳も押さえて。そうすれば大丈夫ですから」
 むずかる子供の手を押さえてティワズは手早く湯をかけてしまう。どうにかかけ終え、髪と体の汚れを洗い流すと出る為に湯桶の中で立ち上がった。
………
 かかってくる湯が止まったのに気付いてハボックはそっと目を開く。その時丁度立ち上がったティワズの股間が目に入って、何も考えずに手を伸ばすと脚の間で揺れるものをギュッと握り締めた。
ッッ!!〜〜〜〜〜ッッ!!!」
 いきなり力任せに掴まれてティワズは声にならない悲鳴をあげる。傍で見ていた女官が慌てて声をかけた。
「王子さまっ、いけませんっ」
「ほえ?」
 子供はポカンとしたままパッと手を離す。その途端ティワズがヘナヘナと座り込んだ。
「どうしたの?ティ」
 湯の中に手をついて倒れ込むティワズを子供は不思議そうに見る。ティワズは暫くの間声もなく震えていたが、やっとの事で顔を上げると言った。
「若ッ……ソコは絶対に掴んじゃいけませんッ」
「どうして?」
「男の大事なところだからですッ、掴むなら二度と一緒に湯浴みはしませんッ」
 その言葉にブスーッと顔を膨らませる王子と必死に笑いをこらえている女官達の姿にティワズはガックリと脱力する。その後、湯浴みの度に面白がって引っ張ろうとする王子から必死に股間を守るのが日常になろうとは、流石のティワズも思ってもいなかった。



2008/10/30



ファイアーズ・プラン」の古賀さまに以前描いて頂いたステキ絵に合わせて錬成したssですv