光神王国 決意編


「報告によりますとこのウルドとの国境付近の村や町でかなり被害が出ていると」
 地図を指差してティワズが言う。一緒に地図を見ていたブレダが顎を撫でながら言った。
「今、ウルドは継承者問題で揉めてるからな。一部脱走した兵が野盗化してるって話だし」
「揉めんのはウルドの勝手だけど、そのとばっちりでハイムダールの民が傷つけられるのはごめんだ」
 ハボックは空色の瞳に怒りを漲らせて言う。ハボックは両手を地図の上にバンッとついてテーブルの周りに集まっているティワズ達を見回した。
「国境警備の兵の増強を。人選はアグナル卿に任せる。それと、オレ、一度様子を見に行ってくるから」
「……言うと思いましたけどね」
 すぐに飛び出していきたがる王子の性格を嫌と言うほど知っているティワズがゲンナリと言う。言い出したら聞かないこともこれまた嫌と言うほど知っていて、王子についていく兵の部隊長を呼び寄せようとした時、ずっと傍らで聞いていたロイが口を開いた。
「私も行く、ハボック」
 その声に部屋にいた男達が一斉にロイを見る。一瞬目を見開いたハボックは優しく笑うとロイに言った。
「アンタはここで待ってて下さい」
「何故?私がついていったら何か不都合でもあるのか?」
 ムッとして言うロイをハボックはじっと見つめる。その顔から笑顔を拭い去って言った。
「ハイムダールに来てまださほど経ってないアンタは土地勘もなければオレ達のやり方にも慣れてない。はっきり言って足手まといっスから」
「な…ッ」
 ハボックはキッパリそう言ってからふわりと笑う。
「ここで待ってて下さい。別に戦に行くわけじゃないっスから、すぐ戻りますよ」
「戦じゃないなら私が行っても問題ないだろうッ?」
「どんな状況か判んないっスから。アンタの面倒まで見てられないんで」
 ハボックはそう言うともうロイに話す事はないと言うようにロイから目を逸らした。
「ティ」
「30分で出られます」
 そう答えるティワズに頷くとハボックはマントを翻して部屋を出て行く。その背を睨むように見送るロイにティワズは言った。
「言い方はきついですが、若は貴方の事を心配しておられるのですよ、ロイ様」
 そう言うティワズの紅い瞳をロイは思い切り睨む。
「どうしてお前はよくて私は駄目なんだッ」
「理由は貴方が一番知っておられるでしょう?」
 サラリと言われてロイは目を見開いて息を飲んだ。ギュッと唇を噛むと低い声で言った。
「後半年もしたらアイツの隣に並んでるのはティワズ、お前じゃなくて私だからな」
「では、それまでの間命に代えても若をお守りしましょう」
 優雅にお辞儀をして言えばフンッと背を向けるロイにティワズは薄っすらと笑う。そうして主の後を追って部屋を出て行った。



09/04/24