光神王国 年甫編


 年の初めともなれば諸侯がこぞって宮殿に挨拶に押しかけてくる。今年も王への挨拶とこの一年の幸運を願って玉座の前に長い列が出来ていた。
 ごく小さい時はこのような年中行事を免除されていたハボックも、今年は王や王妃と共に玉座に腰掛け諸侯達の挨拶を受けていたのだが。
「若
 後ろに控えていたティワズが諸侯の入れ替わりの合間を縫ってハボックに声を掛ける。だが、声を掛けられた王子は玉座にだらしなく体を預け、くうくうと寝息を立てていた。
「若ッ」
 今度はもう少し大きな声でティワズが呼ぶ。だが、相変わらず返ってくるのが寝息ばかりである事に王子の教育係である赤毛の青年がほとほと困り果てた時、王の声が聞こえた。
「ティワズ」
「はいっ、陛下」
「それを部屋に連れて行ってくれ。示しがつかん」
「はっ、申し訳ございませんっ」
 ティワズは冷汗をかきながら玉座の前に回ると己の主であるところの少年の体に手をかける。
「若、しゃんとなさってください」
 そう言いながら少年の体を抱えあげようとしたティワズの目が一瞬大きく見開かれた。それでも何事もなかったようにハボックの体を抱えあげると一礼して大広間を辞した。
 ティワズは王子の体を大切に少し離れた小部屋へと運び込む。そっと椅子に下ろすと低い声で言った。
「狸寝入りですか?若」
 そう言えば空色の瞳がパッと開く。ハボックはにっこりと笑うと言った。
「上手いもんだろ?父上もすっかり騙されてた」
「若」
 睨んでくる紅い瞳にハボックは唇を尖らせる。
「だって、年始の挨拶なんてみんな同じ事しか言わないし、すっごい退屈なんだもん」
「ですが、それも王族としての務めです。こういった挨拶の中でも相手の考えは知れてくるのですよ」
「父上が聞いてるんだからいいじゃん。あんな事よりオレはティやブレダと一緒にグルトップで出かけたいんだ」
 ハボックがそう言った時、扉が開いてブレダが顔を覗かせた。
「おー、ハボ。やっと抜け出せたか。馬の準備できてるぜ」
「あ、うん。ありがと、ブレダ」
「ブレダ様あなたまで」
 ハボックの従兄であり、自らも将来国を担うべき立場である少年の言葉にティワズはガックリと肩を落とす。
「ねぇ、ティ、いいでしょ。年初めの遠乗りに行こう」
「そうそう、ジジイたちの挨拶聞いてるよりこっちの方が断然楽しいって」
 そう言って誘われればやはり年若いティワズとしても少年達の言葉の方がずっと魅力的に感じてしまう。
仕方ありませんね。今更戻るというわけにも行かないでしょうし」
「やった!」
「その代わり明日からはきちんと勉強して頂きますからね」
「判ってるって。行こう、ブレダ、ティ!」
「おうっ」
 釘を刺して言った言葉がどれ程の効力を発したのか多少の疑問を抱きながら、ティワズは飛び出していった少年達の後を追ったのだった。



09/01/03