光神王国 真冬編


「さっむーい!」
 子供はそう呟くと厩の中に入り込む。真冬の寒さの外とは違って、何頭もの馬が繋がれた厩の中は馬達の息遣いと体温で随分と暖かかった。子供はきちんと手入れの行き届いた馬の首に幼い腕を回してしがみついた。
「ふふあったかいね、お前」
 王子は空色の瞳を細めてそういうと、綺麗な茶色の毛並みに頬を擦り寄せる。子供は暫くの間馬にしがみついて暖をとっていたが、やがてぶるりと体を震わせた。
「背中が寒いや」
 ハボックは不満そうにそう呟くと馬から腕を離して辺りを見回す。隅にこんもりと盛った干草の山に目を向けると嬉しそうに顔を綻ばせた。
「これ、もーらいっ!」
 子供はそう叫ぶとボスンと干草の山に飛び込む。ブワッと飛び散る干草に迷惑そうな顔をした馬に向かって言った。
「ねぇ、こっちおいでよ。一緒にぬくぬくしよう!」
 そう言って誘う幼い主に馬は困ったように鼻を鳴らしたが、ゆっくりと近づくとハボックの顔に鼻面を押し付ける。
「ふふふ、あったかーい」
 王子はそう言って笑うと長い馬の顔を抱き締めた。
 そうして。
「ここで寝ちゃいけないと何度言ったら判るんです、若」
「だってあったかいんだもん」
「ここは馬の寝床であって人間の寝床じゃありません。間違って馬に踏みつけられでもしたらどうするんですか」
 どこに消えたのかと探し回った挙句、厩の干草の中で眠るハボックを見つけたティワズは何度も繰り返した小言をまたもや繰り返した。子供は不服そうに頬を膨らませていたが、やがていい事を思いついたと言うようにパッと顔を輝かせる。
「じゃあさ、ティ一緒に寝よ」
「は?」
「だって寒いんだもん。ここで寝ちゃダメなら一緒に寝て、ティ」
「それとこれとは話が
「ティが一緒に寝てくれないならコイツと寝るっ」
 そう言って馬の首にしがみ付く子供にティワズはため息をついた。
今夜だけですよ」
「やった!ティ、大好きっ」
 そう叫んでしがみ付いて来る体温にティワズは内心微笑む。結局その夜から暫くの間、まだ王子が極小さい頃にしていた添寝をするはめになってしまったティワズだった。



08/12/28