光神王国 添寝編


「若、眠いのでしたら先にお休みになられた方が」
 ティワズは走らせていたペンを止めると椅子の上で膝を抱えてうつらうつらしている子供にそう声をかける。するとその途端パッと顔上げてハボックが言った。
「ヤダ、ティと一緒に寝るのっ」
「ですがまだ時間かかりますし」
「へいき。ティ、早くやっちゃって!」
 いつもなら王子をベッドに寝かしつけたところで自室に下がるティワズだったが、「今夜は絶対ティと寝る!」と言って聞かない王子がティワズの部屋に押しかけ今のような状況になっているのだった。
 普段、王子の世話を焼き、その教育の一端を担うティワズではあったが彼自身まだまだ勉強中の身。王子が眠った後もまだまだやることはあるのだ。
 ティワズは椅子の袖にもたれて本格的に寝入りだした子供をやれやれと言うため息をついて見つめるとペンを置いて立ち上がる。
「若」
 軽く肩を揺すりながら声を掛けたが返ってくるのが寝息ばかりなのを確認すると、ハボックの体を抱き上げた。ベッドに下ろしてブランケットをかけてやると愛しげに髪を撫でる。
「おやすみなさい、若」
 そう囁いて離れようとした時、するりと伸びてきた腕が前屈みに王子に体を寄せていたティワズの首に巻きついてその体を引きとめた。
「えッ、若?」
 目が覚めたのかと声を掛けたが子供は眉を顰めて「うーん」と唸るとティワズの首を抱き締めたまま寝返りを打つ。
「うわっ……ちょっッ」
 王子の上に圧し掛かりそうになってティワズは慌てて手をついて体を支えた。その上で子供の腕を外して逃れようとしたが、腕は外れるどころかギュウギュウとしがみついてくるばかりでどうにもならない。そのうち子供はティワズの体に脚を絡めると抱き枕よろしくしっかりと抱きかかえてしまった。
………本当に寝てるんですか?若」
 しっかりと抱き締められてティワズは眉間に皺を寄せてそう囁く。だが、子供はくぅくぅと寝息を返すばかりで、暫くの間何とか腕から抜け出そうともがいていたティワズは体の力を抜くと履いていたサンダルを脱ぎ捨てた。
「たまにはいいか
 そう呟くと自分からも王子の体を抱き締めてそっと目を閉じる。優しい温もりに瞬く間に眠りに落ちてしまったティワズと、ティワズを抱き枕に穏やかな眠りを貪る王子の微笑ましい寝姿に、女官が笑みを零すのはまだもう少し経ってから。


08/11/26