| 光神王国 折紙編 |
| 「よく頑張りましたね、若」 苦手な建国史のテストで漸く合格点を貰えたハボックは、ティワズにそう褒められて目を輝かせる。返してもらった答案を嬉しそうにギュッと胸元に握り締める王子にティワズは笑うと言った。 「じゃあ、頑張ったご褒美にいいものをあげましょう」 そう言うとティワズは戸棚の抽斗から金色と青の紙を持ってくる。椅子に腰掛けたままティワズの動きを目で追っていたハボックの向かいに腰掛けると丁寧に折り始めた。 「何やってるの?ティ」 「いいから見ていて下さい」 そう言われて子供はワクワクとしながらティワズの手元を見つめる。ティワズは2枚の紙を器用に折り曲げて組み合わせると綺麗なメダルを作り上げた。 「どうぞ、若。頑張った印です」 差し出された折り紙のメダルを受け取って子供は目を輝かせる。満面の笑みを浮かべると言った。 「ありがとう、ティ!凄い、紙2枚でどうやって作るの?作り方教えて!」 「いいですよ」 キラキラと空色の瞳を輝かせて言う子供にティワズは笑って答える。抽斗から折り紙を数枚持ってくると王子の前に置いた。 「好きな色をどうぞ」 「じゃあ…これ!」 子供は色とりどりの折り紙の中から紅とオレンジを取り出すとティワズに見せる。ティワズの真似をして自分の前に並べておくと紅い瞳を見上げた。 「では私のやる通りにやってください。まずはこう折って」 一つ一つ手順を示しながらティワズは形に折り上げていく。それを追って同じように折り紙を折っていた王子だったがムゥと唇を突き出すと言った。 「上手くいかない…」 「角をきちんと合わせて折らないとだめです。あと、きっちり折り目をつけて」 ティワズに言われて何度も折りなおすもののどうしても綺麗に出来ず、子供は泣き出しそうな顔をする。ティワズはムキになって折り続けようとする手をそっと握ると言った。 「これは随分折り紙を折ったことがある人にも難しいですから、若にはまだちょっと無理かもしれません」 また今度ゆっくりやりましょう、と優しく笑うティワズの手を振り解くと、子供は部屋を飛び出して行ってしまう。ティワズはその後を追うことはせず、一つため息をついた。 それから暫くして。 「若?」 部屋の隅でコソコソとなにやらしている子供を見つけてティワズが声を掛ける。その途端、ハボックの肩がピクリと震えて、ゆっくりと振り向いた。 「何をやってらっしゃるんです?」 「なんでもないっ!」 ティワズの問いかけに子供は大声でそう答えるとダッと部屋を飛び出していく。 「若っ?」 目を丸くするティワズはハボックが座り込んでいた場所に目をやるがそこには何も残されておらず、幼い王子が何をやっていたかは判らなかった。 「何をしてらしたんだろう…」 首を傾げて考えるものの検討もつかず、ティワズはそれ以上何も出来ずに一つ息を吐いた。 最初の1度目、2度目はともかく、そう言ったことが何度も続くと流石のティワズも気になって仕方なくなる。尋ねてみても返ってくる答えはいつも「なんでもない」で、逆にティワズにはなんでもないとは思えなくなっていった。 「まさか変な遊びでも覚えたとか…」 ふとそんな考えまで浮かんで、ティワズは慌てて首を振る。今度同じ場面に出会ったら、絶対に何をしていたか問いたださなくてはと決心したある日。 「若」 またしてもコソコソとなにやらやっている背中を見つけてティワズが声をかける。今日は逃がさないぞと身構えるティワズに反して、子供は今度は逃げはせず、振り向くとにっこりと笑った。 「はい、ティ。これ、オレからティに」 そう言って手のひらの上に置かれたものを見ればそれは紅とオレンジの折紙でできたメダルで。 「いつもオレに色んなこと教えてくれるから、だからティにあげる」 そんな言葉と共に渡されたメダルはとても上手に出来上がっていて、ティワズは言葉もなくそれを見つめる。 「上手く出来なくて折り紙いっぱい無駄にしちゃった」 ヘヘヘ、と笑って言う王子の顔を見つめてティワズは言った。 「ここの所ずっとやっていたのはこれだったんですか」 「うん。ティにどうしてもあげたかったの」 そう言ってにっこりと笑う王子の手を取るとティワズは跪いて唇を押し付ける。 「ありがとうございます、若。大切にします」 笑ってそう告げるティワズに、王子は嬉しそうに笑ってギュッとしがみ付いた。 2008/11/23 |