光神王国 湯浴編2


「でも、王子さま、それではお世話が
「いいのっ、オレがするからっ!だからみんな出ていって!」
 ハボックは小声でそう言うとティワズ専属の女官達を追い出してしまう。仕切りの衝立ての向こうで聞こえる衣擦れの音に年若い王子は胸を高鳴らせた。

『一定以上の年齢になったら、そういうのは恋人とか……愛人とかとするものですよ』
 一緒に風呂に入ればいいのにと言った王子にティワズがそう答えたのは王子の15の誕生日の夜。成人を迎えた王子がいつか同性の伴侶をめとった時に恥をかかぬよう、その為のレッスンをした時のことだった。その時は正直一緒にお風呂よりずっと刺激的な経験にそんな事などすっかり頭から抜け落ちていた王子だったが、先日自分の湯浴みの世話をしてくれるティワズの紅い睫毛を見ていたらふとあの時言われた言葉を思い出したのだ。
「ティが『大人になったら好きな人とお風呂を入ったりする』って言ってたから、オレはその時の為に練習するんだもん!他の人とでなんてできないから、ティと大人の遊びをするんだもん!」
 ハボックは両手の拳を胸元に握り締めて言う。あの日以来、ハボックからのアプローチにはさっぱり見向いてもくれないティワズに自分はそんなに魅力がないのかと落ち込み気味のハボックだったが、ここでまた一歩大人へと、ティワズへと近づいてやるとその意気込みは並大抵のものではなかった。
 衝立ての後ろでハボックは手早く衣服を脱ぎ捨てると、ぱちゃんと水音のした衝立ての向こう、布を捲くった湯桶のある場所に踏み入った。
「若っ?」
 一糸纏わぬ姿で仁王立ちになる主の姿にティワズは目を丸くする。ハボックは何も言わずに湯桶の淵を越えて中に入るとティワズにググッと顔を寄せた。
「ティっ」
「はい」
「大人になったら好きな人と一緒に風呂に入るんだって言ったよね?」
「ええ、まあ
 ティワズはそう答えながら頬を赤らめて迫ってくる王子に嫌な予感を覚える。何となく次のセリフがティワズの頭に浮かんできた時、ハボックが勢い込んで言った。
「じゃあ、そのやり方教えてッ!オレと大人の遊びしよう、ティっ!」
……若」
 やっぱり、とティワズは額を押さえる。一つため息をつくと言った。
「確かに私は大人になったら好きな相手と入るものだとは言いましたが
「そうだよねっ、だったらオレと大人の遊びしようっ」
 ハボックはそう言うとティワズの腕を掴む。躊躇う紅い瞳を下から覗き込むと言った。
「ティがしてくれないなら他の人に頼むけど」
「若」
 じっと見つめてくる空色の瞳にティワズは呆れたため息をつく。
「まったく若は私を扱うのが上手い。お小さい時からいつもそうだ」
 そう言って笑うティワズに彼が自分の願いを聞き入れてくれたのだと察してハボックも笑った。
「仕方ありませんね。でもこの間のように一度に両方のパターンと言うのは勘弁してください。のぼせてしまいますから」
「じゃあまた次もあるってことだね、ティ」
 フフフと楽しそうに笑う王子に、ティワズは手を伸ばすとそっと引き寄せた。

2008/11/02