平行世界 聖夜編2


「ほら、ジャン。これ、美味いぞ」
「そっちよりこれ!これが美味いって」
「何を言っている。ジャン、私のを食べろ、な?」
 4人で仲良く(?)イルミネーションを見た後、予約していたレストランが同じだった事が判明して4人は一緒に食事をとっているところだった。4人がそれぞれに好きなメインを頼んだはよかったが、ジャンが一言「そっちも美味そうッスね」などと言ったから堪らない。今、ジャンの皿の上には自分が注文したメインの肉料理の他に魚料理だの違う種類の肉料理だの付け合せの野菜だのがこんもりと載っていた。
「ええと気持ちは嬉しいんスけど、こんなに食えないっていうか
 コース料理なので1人分でも最初から全部食べればそれなりの量になる。それを3人が先を争うようにして自分のメイン料理の大半をジャンの皿の上に載せるのだからさすがのジャンも困りきってしまったのだった。
美味いから食べさせたいと思ったんだが、こういうのは好きじゃなかったか、ジャン」
「ボリュームだけじゃなくて、味も最高なんだ。ひと口で悦いから食べてみろよ、ジャン」
「そんなのより絶対こっちが美味いんだ!こっちを食え、ジャン」
 3人が3人とも自分の料理が一番だと勧めながらズイと身を乗り出してくる。その迫力に押されてジャンは顔を引きつらせて笑うと言った。
………いただきます」
 そうして口にした料理は流石にそれぞれが勧めるだけあって美味しいもので、結局ジャンは自分の分も含めて完食してしまう。この調子でデザートまで勧められ、食事が済むころにはジャンは詰めた食べ物が口からはみ出そうなほど腹がいっぱいになっていた。
「も、ダメちょっと限界かも」
 そう言って口元を手で押さえるジャンに今度は3種類の胃薬が差し出される。
「ははは」
 流石にどの薬も選ぶわけに行かず、ジャンは自分の胃腸の消化力に頼るしかなかった。
 そうして。
 名残りは尽きなかったけれどそれぞれの家に引き上げて。

「久しぶりに会ったけど、やっぱりジャン、可愛かったっスね」
「ああ。あのクソオヤジには本当に勿体無い」
 ハボックが抱き締めたロイの髪を撫でながら言えば、ロイが実に不満そうに唇を突き出して言う。
「一緒に連れて帰ってくればよかった」
 半ば本気で言うロイにハボックが苦笑した。
「オレも連れて帰って来たい気もしましたけどね」
「なんだ、だったら連れてくればよかったじゃないか」
 なんでそうしなかったんだと文句を言うロイにハボックが困ったように言う。
「ジャンのことは可愛いっスけど、オレ、嫉妬深いんスよ」
「なんだ、それは」
 言っている意味が判らんぞ、と眉を顰めるロイを上から組み敷くようにして見下ろしながらハボックが言った。
「だって、ジャンが来たらアンタ、ジャンにかかりっきりになっちまうじゃないっスか。オレのことは二の次で」
 それはそれで悔しいのだと複雑な表情を浮かべるハボックにロイは一瞬目を丸くしたが、くすりと笑うと腕を伸ばす。
「世話の焼ける犬だな」
「しかたないっしょ。アンタのことが好きなんスから」
 そう言って笑うハボックをロイはそっと引き寄せた。

 そしてもう一方。

「ンッアッアアッ、たいさっ」
 ベッドに座り込んだロイに背を向ける形で跨ったジャンはその身の奥深くにマスタングを受け入れていた。ガツガツと下からきつく突き上げられて背を仰け反らせるとマスタングの脚に爪を立てる。熱く熟れた内壁を容赦なく掻き回され突き入れられて、ジャンは息も絶え絶えに涙を流した。
「ヒアッ!た、いさっ、な、に怒ってんの?」
 一言も発する事なしにジャンを犯すマスタングに、怒りのオーラだけを感じてジャンは縋る事も出来ずにボロボロと泣きじゃくった。
「たいさっ、なんか言って……アアアッ!!」
 きつく突き上げながら背後から肩口に噛み付き、胸の頂を千切らんばかりに捏ね上げる。そうすれば熱を迸らせるジャンにマスタングはうっそりと笑った。
 つまらない嫉妬だとは判っている。それでもジャンの全てを独占したいマスタングとしてはジャンが自分以外の誰かに笑いかけるのが赦せないのだ。
 マスタングは繋がったままジャンをベッドに押し倒しながら体勢を入れ替える。熱い内壁を猛った楔でぐりりと抉られてジャンは悲鳴をあげた。それでも漸く顔の見えたマスタングに安堵の表情を浮かべると腕を伸ばして縋りつく。
「たいさたいさっ」
 涙に濡れた空色の瞳に自分だけを映し出すジャンにマスタングはうっとりと笑った。



08/12/26