技能五輪ロイハボその後 パラレルの場合


夜もだいぶ更けた頃、来客を告げるベルが鳴ってハボックは眉をひそめる。
「こんな時間に誰っスかね?」
そう言って玄関に向かう背を見送って本に視線を戻したロイは、聞こえてきた素っ頓狂なハボックの声に顔を
あげた。
「ジャンっ?」
扉を開けたそこに立っていたのはハボックと同じ顔をしたジャンだった。
「どうしたんだよ、ジャン?!」
本来なら来られるはずのない時空を飛び越えてやってきたもう一人の自分にハボックは聞く。だが答えない
ジャンにハボックが重ねて尋ねようとした時、奥から出てきたロイが言った。
「いいからこっちにおいで、ジャン。そんなところにつっ立ってたら風邪を引く。」
ロイの言葉に初めてその事に思い至ったハボックがそっと背中を押せばジャンがロイの方へと歩いてくる。ロイは
近くに来たジャンの肩を抱くようにしてリビングに入るとジャンをソファーに座らせた。
「ハボ、何か温かい飲み物を。」
言われてハボックが慌ててキッチンへと入っていく。ロイはジャンの顔を覗き込むようにして髪を撫でると言った。
「よく来たね、ジャン。元気にしてたかい?」
ロイはそう言って髪を撫でていたがハボックが持ってきたココアのカップを受け取るとジャンに差し出す。
「どうぞ、暖まるから。」
そう言って差し出されたカップをジャンは黙ったまま受け取り両手に持った。何も言わないジャンにハボックが口を
開こうとした時、カップに小さな波紋が広がる。ハッとしたハボックがそれがジャンの涙の所為だと気付いて声を
かけようとしたのをロイが押しとどめた。
「大佐が…」
ポツリと呟くような声に二人は耳をそばだてる。
「オレがフュリーと浮気してるって…」
「はあっ?」
「誘惑して挿れてもらったんだろうって、散々…」
ジャンの言葉にハボックが声を荒げた。
「なんだよ、ソレっ!そんなことあるわけないだろうっ!あのバカ大佐、言うに事欠いて何を…っ」
ポロポロと涙を零すジャンの頭を抱き寄せてロイも表情を険しくする。
「ジャンを泣かせるなんて…同じロイ・マスタングとして許せんっ」
ロイはそう言うとジャンの蜂蜜色の髪にキスを落として言った。
「よく私達のところに来てくれたね。もう何も心配することないよ。」
「ロイ…っ」
ロイは同じように怒りの表情を浮かべるハボックを見る。
「あのバカ者のところには帰さんっ」
そう言ってハボックと頷き合うとロイはジャンをぎゅっと抱き締めたのだった。


2007/11/18