究極神話8


「なにしてるんだ?ハボック」
 ロイはそう言いながらハボックに近づいていく。輝くクリスタルに支えられた世界を見上げていたハボックは、振り返らずに答えた。
「考えてたんス、色々あったなぁって」
 そう言う少年の顔を隣に並んでロイは見つめる。
「パージに巻き込まれて母さんが死んでルシにされて…… あの頃はなんでオレがって思ってばっかりいたけど」
「ハボック」
 その言葉を聞いてロイは秀麗な顔を僅かに歪めた。彼の母親の死には自分にも責任の一端がある。もしあの時に戻れたらもう少し違う道を見つけられただろうか。返す言葉を見つけられずに黙り込む男の気持ちを知ってか知らずか、ハボックは陽の光を受けて輝くクリスタルを見上げたまま続けた。
「今はこれまであった事は全て意味のあることだったんだって思うっス。色んな事があって今のオレがあるんだって」
 ハボックはそう言ってロイを見る。
「だから後悔してないっス」
 そう言って笑う少年の顔は幼さが消え、随分と大人びた。意志の強ささえ伺えるその顔を眩しそうに見つめながらロイは言った。
「お前には随分助けられたな。お前がいたから私達はここまでこられた」
 迷う大人たちに少年が告げた真っ直ぐな言葉。それがどれほど強くロイ達の心に響いたか、彼は気づいているのだろうか。
「よく判んないっスけど」
 案の定ロイの言葉に小首を傾げるハボックにロイは笑う。細い少年の肩を引き寄せてロイは言った。
「判らないならそれでもいいさ。まだまだ先は長いんだ。これからもよろしく頼む」
「そうっスね、まだまだこれからっスよね」
 世界を守るという誓いを果たし、彼女たちはクリスタルになった。皆を繋ぐ烙印は消えたけれど心の繋がりは一層強くなったに違いない。
「この世界を守り育て、私達は生きていくんだ」
 そう言って笑えば返される微笑みに、ロイはハボックを引き寄せるとそっと口づけたのだった。


2010/03/05