究極神話7


「あ、チョコボ!」
 広々とした平原を歩いていると、少し先に大きな黄色い鳥の姿を見つけたハボックが嬉しそうな声をあげて走っていく。傍までいくとその背に跨る少年を見てロイが眉を顰めた。
「なんだってアイツはあの鳥が好きなんだ?」
「子供はみんなチョコボが好きですよ」
 誰に言うともなしに言ったロイの言葉にブレダが答える。それを聞いてロイが益々眉間の皺を深めた。
「あの強烈な匂いはたまらん」
 ハボックがチョコボとじゃれた日は湯を使うまでは流石に抱く気になれない。今日もこの先体を洗う泉がなければ、あの子供はチョコボと同じ匂いをさせたままでいるのだろう。そんな事を考えているとハボックの弾けるような笑い声が聞こえる。声がした方を見れば、チョコボが首を振り向けて背中に乗せたハボックに顔をすり付けているところだった。
「何をやってるんだ、あの鳥はっ」
 鳥にヤキモチなど大人気ないと思いつつも声が不機嫌になるのを止められない。それを聞いてずっとハボックの様子を見ていたらしいブレダが言った。
「ハボックがチョコボの首を撫でてやっていたんですよ。気持ちよくて喜んだんでしょう」
 仲のよい一人と一羽の様子を大人達が見ていると、不意にチョコボが一声鳴くと同時に走り出す。ロイとブレダは顔を見合わせると慌てて追いかけた。
「おい、ハボック!どこへ行くんだっ?」
「判んないっス!でも、お宝があるみたい!」
「「えっ?」」
 その言葉に慌てて追いかけるが足の速いチョコボのこと、あっと言う間に行ってしまう。漸く追いついたときには、背中から降りたハボックがチョコボに手を振って別れを告げているところだった。
「ハボック!」
「ロイ、ブレダさん」
 呼びかけに振り向いたハボックの手に小さな光る物を見つけてロイが言った。
「何を見つけたんだ?」
「指輪っス。ほら」
 そう言ってハボックは手のひらに載せた物を見せる。虹色に輝く指輪を見て、ブレダが言った。
「精霊の指輪だ」
「精霊の指輪?」
 首を傾げる子供にブレダが説明する。
「六属性の耐性がアップするんだ。凄いじゃないか、そんなもの掘り当てるなんて」
 言われてハボックは嬉しそうに指輪を翳した。
「せっかく見つけたんだ、つけておこう」
 だが、ハボックが指輪をつける前にロイが横から取り上げてしまう。取り上げた指輪をつけるでなく、ポケットに突っ込んでしまうロイにハボックが言った。
「何するんスかっ、せっかくチョコボが見つけてくれたのにっ」
 返して、と伸ばしてくる子供の細い腕を掴んでロイが言う。
「歩くのが嫌なら私がおぶってやる、指輪なら買ってやる。あんな鳥、放っておけ」
「は?アンタなに言って───うわッ?!」
 いきなり担ぐようにしてロイはハボックの細い体を背負う。凄い勢いで歩き出すロイと、訳が判らず男の背中で騒ぐハボックをブレダは見送ってため息をつく。
「チョコボにヤキモチかよ……」
 ワァワァと騒ぐ二人の姿にげんなりと肩を落とすブレダだった。


2010/03/01