究極神話5


「うわ、チョコボがいっぱいいる!」
 狭い谷間の道を通り抜けて山間の泉のほとりに出れば、独特な匂いと共に黄色い鳥の群が目に飛び込んでくる。人間の背より遙かに大きい大型の鳥に駆け寄っていくハボックの姿にロイが苦笑した。
「まったく…子供だな」
 そう呟けばそれを聞きとがめたホークアイが言う。
「子供ですわ、それをここまで連れてきてしまった」
 仕方のない事とはいえ、まだ十四にしかならない子供を戦いに巻き込んでしまった罪悪感がないと言ったら嘘になる。そんな大人たちの思いなど知りもせず、ハボックは一際大きなチョコボの傍に行くとその背を撫でた。
「ふふ……ふかふかだ」
 ハボックは言ってチョコボの首に手を伸ばす。膝を屈めてジャンプすると、その背に跨った。
「行くよ」
 そう鳥の耳元に囁いて軽く首を叩けば、チョコボが長い脚で走り出す。
「う、わ……速いっ!」
 クンと後ろに引っ張られるようになって、ハボックは慌てて鳥のふかふかの羽毛にしがみついた。長い脚を生かして風のように走る鳥の背でハボックは楽しそうに笑う。はしゃぐ子供にロイが声をかけた。
「おい、気をつけないと振り落とされるぞ」
「平気っスよ!……とと、えっ?うわあッ!」
 言った途端鳥の高い背中から振り落とされてハボックが悲鳴を上げる。バシャーンと派手な音を立てて泉の浅い淵に落ちたハボックに、ロイが呆れた声を上げた。
「言わんこっちゃない」
 ロイはそう言いながら近づくとハボックに手を差し出す。唇を歪めて、だがハボックは言った。
「平気っス」
「強がるな」
 そう言われても暫くは水の中に座り込んでいたハボックだったが冷えてきたのだろう、ブルリと体を震わせると差し出された手に己のそれを伸ばした。グイと引っ張られてロイの腕の中に飛び込んだ途端ハボックがクシュッとくしゃみをする。ロイがコートを脱いで細い肩にかけてやればハボックが言った。
「平気っス」
「強がるなと言ったろう?」
 言えば尖らす唇にロイはチュッと口づける。
「わ」
 真っ赤になって口を押さえる子供にロイがニヤリと笑った。
「幾ら言っても聞かないからだ」
「……もっと甘えるようにするっス」
「そうしろ」
 言って目を細める男にハボックはギュッと抱きついた。


2010/02/17