eternal green beginning


「今日会うヤツはな私の親友、というか悪友だな。アクの強いヤツだからそのつもりでいろよ」
「はあ」
 セントラルに出張のロイについてきたハボックは司令部の廊下を歩きながらロイの言葉を聞いていた。
(アクが強い人なら大佐で鍛えられてるもんなぁ)
 でも自覚ないよね、この人、などと思いつつ、ロイに続いて扉をくぐる。
「ヒューズ」
「おう、ロイ。久しぶりだな」
 ロイに答えて机の向こうで立ち上がった人物にハボックは目を向けた。
「お、そいつか。お前の護衛になったって少尉殿は」
 ハボックはそう言われて慌てて敬礼をする。
「ジャン・ハボック少尉です」
「俺はマース・ヒューズ。よろしくな」
 そう言って手を差し出してくる人の瞳を見たハボックは小さく「あ」と声を上げた。
 幼い頃、父に怒られたり友達と喧嘩をしたりするたび潜り込んでいた繁みの中。ぽっかり空いた空間に横たわって上を見上げれば、重なり合った葉のむこうから陽が射し込んで、キラキラと輝く緑色がとても綺麗だった。その緑はいつもハボックの心を慰め包み込んでくれたのだ。
(あの緑とおんなじ色があるなんて…)
 思わず呆けたように見つめてしまったハボックは、いきなり握った手をグイと引っ張られてギクリとした。
「どしたよ、気分でも悪いのか?」
 間近から覗き込んでくる瞳に心臓が跳びはねる。
「やっ、なんでもないっス!」
 慌てて身を離せばヒューズが笑って手を離した。
「そうか」
 そう言うとロイの方を向いて話し出すヒューズをハボックは見つめる。
(いきなり近づかないでくんないかな)
 大好きだった緑が目の前に広がって懐かしいような、離れてしまった手が淋しいような、色んな想いが突然沸き起こってきてハボックはそれらを振り払うように首を振った。
(なんなんだよ、一体…)
 ハボックは一つ息を吐くと、笑いながら話をするヒューズとロイをじっと見つめていたのだった。


2007/07/16