重陽その後


 ゆっくりと近づいてくる男が纏う物騒な空気に、ロイはソファーの上を端へと逃げる。背中がソファーの袖に当たった瞬間、バッとソファーから飛び出すように逃げようとしたロイだったが、瞬発力では数段上のハボックには敵わなかった。
「逃げようったってそうはいかないっスよ、大佐」
「ハボック……」
 ロイの足首を掴んでハボックが低く言う。どう言って言いくるめようと頭を巡らせていたロイは、いきなりグイと足を引っ張られて悲鳴を上げた。
「うわわっ!」
 ズズッとソファーの上を引っぱって引き戻したロイの体にハボックは圧し掛かる。まん丸に見開く黒曜石を覗き込んでハボックは言った。
「アンタ、知ってました?あの食料品店のレジの男、そっちの趣味だったって」
「い、いや、知らなかった」
「ホントに?」
「ホントだッ」
 必死に訴えるロイにハボックはフゥンと鼻を鳴らす。ハボックはロイの頭に手を伸ばすとサラリとした黒髪を指に絡めて言った。
「オレ、もうちょっとで350センズで買われちまうとこだったっスよ」
「そっ、それはいくら何でも安すぎるなっ」
「それ、もっと高かったら買われてもいいって事っスか?」
「そう言う訳じゃッ!」
 ロイは慌てて首を振って声を張り上げる。じっと見つめてくる空色に、ロイはひきつった笑みを浮かべて続けた。
「万一お前がうっかり買われでもしたら私が買い戻してやるからッ」
「はあッ?」
 なんとかハボックの怒りを静めようと言った言葉にハボックが目を吊り上げる。
「やっぱオレが買われてもいいってことじゃないっスか」
「いやだからそうではなくて……」
 しどろもどろになるロイを無表情にじーっと見つめていたハボックは、その唇の端を上に引き上げた。
「判ったっス。いいっしょ、そう言ってくれるならちゃんと買って貰えるようにアピールしておきましょうかね」
「えっ?いや、そんなことして貰わんでもちゃんと買い戻すしッ」
「まあ、そう仰らず。ひとつじっくり味わって、オレの事買い戻す値段、決めてください」
 そう言ってハボックはにんまりと笑って、ロイの髪をかき上げた。


 瞬く間に裸に剥かれてロイは必死に身を縮める。だが、ハボックはいとも容易くロイの手足を掴むと、四肢を広げてその細い体をソファーの上に縫い止めた。
「ダメっスよ、ちゃんと躯伸ばしてくれないと。よく見えないと何処をどうしたらいいか判んないっしょ?」
「ハボ……ハボック!」
 明るいリビングの灯りの下、ロイは全てを曝け出されて羞恥に頬を染める。ハボックはロイの手足を押さえ込んだまま躯を寄せると、ロイの首筋をぺろりと舐め上げた。
「ひゃ……ッ」
 肌に触れる濡れた感触にロイは首を竦める。そうすればいきなり歯を立てられてロイの唇から短い悲鳴があがった。
「痛ッ」
 唇を離すと白い肌に赤い血が滲む。その傷口をチュウと吸われてロイはビクビクと躯を震わせた。
「痛いの好きなんスか?」
「違……っ」
 耳元に囁かれる声にロイは首を振って否定する。だが、傷口を吸われる度背筋をゾクゾクとした感触が走り抜け、ロイは無意識に腰を揺らめかせた。ハボックはロイの白い肌に幾つも花びらを散りばめながら唇を下へと這わせていく。胸を飾る果実に辿り着くとハボックはプクリと膨らむそれを唇に含んだ。
「やっ……!」
 ビクッと震えて背を仰け反らせるロイに構わずハボックは含んだ果実を舌で(ねぶ)る。もう一方は指でグリグリと押し潰せばロイの唇から甘い吐息が零れた。
「あっ……ん、ふぅ……ッ」
 初めてハボックに抱かれた時にはただ擽ったいばかりだったそこも、今ではほんの少し弄られただけでも感じてしまう。片方を強く吸われ、もう片方を摘んで引っ張られてロイは胸を突きだして喘いだ。
「んあっ!」
「なに?もっと強くシて欲しいの?」
「違……ひゃあんッ!」
 止める間もなく抓るように乳首を引っ張られてロイは甘い悲鳴を上げる。ズキズキとした鈍い痛みは快感に縁取られてロイは荒い呼吸を零して喘いだ。
「ふふ……ヤラシイっスね、大佐」
 ハボックは笑いながら堅く尖った乳首を指で弾く。今では熟れて真っ赤になったそこを弾かれ、ロイは息を弾ませて涙ぐんだ。
「ここもこんなにして」
 ハボックはそう言ってロイの股間に手を伸ばす。腹に着くほどそそり立った楔をキュッと握られて、ロイはビクビクと震えた。
「や……ッ、アアッ!」
「すげ……トロトロ」
「やめ……ッ」
 蜜を零す先端を太い指で捏ねられてロイはゆるゆると首を振る。男の手の動きを止めようと伸ばしてきたロイの手を掴むと、ハボックは捏ねていた楔を握らせた。
「ほら、トロトロっしょ?」
「やっ、ヤダっ!!」
 イヤラシく蜜を垂れ流す自身を握らされてロイは慌てて手を引こうとする。だが、ハボックに手ごと楔を握られてどうすることも出来なかった。
「離せッ、ハボック!」
「いいから……ほら、扱いてみて」
 ハボックはそう言ってロイの手ごと楔を扱く。瞬く間に追い上げられて、ロイは空いている方の手でハボックの腕を掴んだ。
「ダメだっ、も、イくッ!離せッ!」
「いいっスよ、イって」
「ハボっ!!」
 ロイは楽しそうに言うハボックの声に目を瞠る。やめろと言う間もなく己の手ごと激しくこすられて、ロイはビクビクと震えた。
「や……ッ、あ、あ……ヤダっ、イくっ、……アア───ッッ!!」
 ロイは嬌声と共にビュビュッと白濁を迸らせる。腰を突き出して弓なりに仰け反った躯が弛緩してソファーに沈み込めば、ハボックは荒い息を零す唇を乱暴に塞いだ。
「ん……んんっ」
 呼吸を奪われてロイは力なくもがく。執拗なキスに唇が離れた時にはロイは半ば朦朧としてソファーに横たわっていた。
「カワイイっスね、大佐。やっぱアンタ今日出かけなくて正解だったかも」
 今日のようなとんでもない日にロイが外へ出かけてちょっかいを出されては堪らない。ハボックはぼんやりと宙を見上げる涙に滲んだ黒曜石に優しくキスを落とすと、投げ出された細い脚を押し広げた。
「こっちも、可愛がってあげます」
 ハボックは言って双丘の狭間でヒクヒクとヒクつく蕾に舌を伸ばす。指で押し広げるようにして中に舌を潜り込ませれば、ロイの躯がビクンと跳ねた。
「やっ……ヤアッ!」
 ぼんやりとしていた意識がはっきりすると同時に、恥部をそんな風に舐められる羞恥にロイは股間に顔を埋めるハボックの髪を引っ張る。
「ヤダっ、ヤッ!ハボック!!」
「イテテっ!……もう、乱暴っスね」
 ハボックはそうぼやきながらロイの楔を握った。
「ヒャッ!!」
「今、もっと悦くしてあげるっスから、おとなしくしてて」
 そう言って楔を扱きながら蕾に舌を這わされて、ロイは喘ぐ。たっぷりと蕾を濡らすと、ハボックは漸く顔を上げた。
「ふふ……じゃあイイモンあげるっスね」
 ハボックはうっとりと笑ってロイの脚を押し上げる。胸に着くほど躯を二つに畳まれて、ロイは苦しい体勢に呻いた。
「ハボ……ッ」
 目を見開いてロイはふるふると首を振る。そのどこか幼い表情にハボックはゾクゾクとして己を蕾に押し当てた。
「あ……」
 グッと押し入ってくる熱にロイは息を飲む。次の瞬間一気に奥まで貫かれて、ロイは高い悲鳴を上げた。
「アッ、アアアアアッッ!!」
 狭い器官を男の凶暴な熱で押し開かれ貫かれて、ロイは無意識に逃げをうつ。だが、グイと引き戻すと同時に突き入れられた熱に奥まで抉られて、ロイは悲鳴を上げた。
「ヒィィィィッッ!!」
「大佐ッ」
 ハボックは容赦なくガツガツと突き上げる。熱くねっとりとまとわりついてくる蕩けた肉壁が堪らない。ハボックは細い脚を抱え直すと更に奥を抉った。
「ひゃああんッッ!!」
 ガツンと突き上げられてロイは背を仰け反らせる。それと同時にそそり立った楔からびゅくりと熱を吐き出した。
「んんあああッッ……ああ……ッ」
 ビクビクと震えながらロイは咥えた楔をキュウウッと締め付ける。甘い締め付けにハボックは眉を顰めて噛みつくようにロイに口づけた。
「んんんッッ!!」
 キスと同時に叩きつけられる熱に躯の奥を焼かれる。その熱さに目を見開いてガクガクと躯を震わせたロイは、フッと意識を失った。


 その後もいいように貪られてロイはぐったりとソファーに身を横たえる。優しく黒髪を撫でてくる男を恨めしげに見上げれば、ハボックが楽しそうに言った。
「で?オレを買い戻す為の値段、決めました?」
 自信満々に言うハボックをロイはジロリと見る。プイと顔を背けてロイは言った。
「お前なんて350センズでも高い」
「ええっ?なんでっ?アンタ散々悦んでたじゃないっスか───イテテッッ!!」
 思い切り耳を抓られてハボックが悲鳴を上げる。
「煩いッ!お前なんて買い戻してやらんッ!!」
「えええっっ?!そんなぁッ!!」
 プイと背中を向けてしまったロイの顔をハボックは必死に覗き込む。
「ええと、じゃあもっと気持ちよくしてあげるっスから!」
「私を殺す気かッ?」
 今ですら腰が重くて自分のものではないようなのにこれ以上やられたら堪らない。キーッと牙を向けばハボックが情けなく眉を下げた。
「大佐ぁ」
 優しく抱き締めて顔中にキスを降らせてくるハボックにロイはため息をつく。
「オレのことちゃんと買い戻してくださいね」
「その前に買われるな、バカ」
 フンと鼻を鳴らして言えば、笑いながらキスをしてくるハボックをロイは抱き締めてキスを返した。