加加阿菓子


 司令室の扉を開けた途端フュリーの机の周りに群がる部下たちの姿が見えてロイは眉を顰める。たいていの場合、彼らがああやって群れている時はろくなことをしていないと判っていながら、ロイは好奇心に負けてその群れの中に顔を突っ込んだ。
「何を騒いでいるんだ?」
「ああ、大佐」
 ひょっこり顔を出した上司にフュリーがニコニコと答える。
「バレンタインメーカーって言うゲームなんですけど」
「バレンタインメーカー?」
 そう言えば今年はまだチョコを貰ってないぞとチラリとハボックの顔を見れば空色の瞳がさり気なく逸らされる。そちらへの追求は後でするとして、ロイはフュリーの顔を見て続きを促した。
「送り手と貰い手の名前を入れるとどんなチョコレートを送るかが判るんです。大佐もやってみます?」
「面白そうだな、是非やってみてくれ」
 フュリーの言葉にロイが嬉々として答えれば空色の瞳が嫌そうに歪められる。ロイはそれに気付かぬフリでフュリーにやってくれと促した。
「ええと、ロイ・マスタングから……ハボック少尉、ですよね?」
「当然だ」
 何でわざわざ聞くんだという顔をするロイにフュリーは慌てて名前を入力する。そうすれば現れたチョコレートに皆の目が吸い寄せられた。
   ジャン・ハボックへ
         大 本 命
            ロイ・マスタング
「おお、素晴らしい!まさしくそのとおりだッ!!」
 現れたチョコを見てロイが満足げに頷く。ニヤニヤとブレダに「よかったなぁ」とつつかれて複雑な顔をするハボックにフュリーが言った。
「ハボック少尉の分もやりましょうか?」
「えっ、いや、オレはいいよ」
 やってみたら絶対ろくな事にならない気がする。そう思ったハボックが慌てて手を振ったがその手を押さえてロイが言った。
「頼むよ、フュリー曹長」
「いいってば、フュリー!」
 二人の違う言い分を聞いて、だが身の保全を考えたフュリーは当然ロイの願いを聞き入れる。さっきと差出人と受取人の名前を入れ替えて入力すれば現れたチョコに一瞬皆が凍りついた。
   ロイ・マスタングへ
        あなたの家柄が好きです。
              ジャン・ハボック
「ハボックそういうことだったのか?」
「ちょっ、たいさっ、遊びでしょ、これは!」
「いや、お前の潜在意識がパソコンに影響してだな」
「んなわけあるかッ!!」
 たかが遊びに目くじら立てて迫ってくるロイに、やっぱりろくな事にならなかったとゲンナリするハボックだった。



09/02/14