| びっちょり |
| カッと窓の外が真っ白に輝いて、その数瞬後にドオーーンという大きな音が響き渡る。ハボックは大判のタオルを数枚出すと窓の外を心配そうに見た。 「すげぇ雷雨!どっかで雨宿りしててくれりゃいいけど…」 そう呟いてハボックは棚から厚手のレインコートを取り出す。珍しく散歩に行ってくると言って出て行ったきりのロイを迎えに行こうと取り出したものを抱えて玄関に行こうとした時、ガチャガチャと鍵の回す音とバンッと扉が開く音がした。 「たいさっ?」 バタバタと玄関に走り出てみれば、そこには全身ずぶ濡れのロイが立っている。 「アンタ、雨宿りもしないで帰ってきたんスか?」 ハボックが呆れたようにそう言えばロイがギロリと睨んできた。 「お前、雨が降るならどうしてそう言わないっ?!」 頭から湯気が出そうなほど怒りまくってそう言うロイにハボックは困ったように目尻を下げる。 「ンなこと言ったって天気予報でそんな事言ってなかった…」 ハボックはそう言いながら改めてロイの姿を見てドキリとした。ぽたぽたと滴の垂れる前髪の間から覗く怒りに輝く黒曜石の瞳。雨の滴が滑らかな頬を滑って艶やかな唇へと流れていく。走ったせいか、はたまた怒りの為か白い頬はほのかに桜色に染まっていた。薄いシャツはぐっしょりと濡れて肌に貼りつき、透けて見える胸の飾りは直接見るより数倍もいやらしかった。 「わ…」 ごくりと喉を鳴らすハボックにはまるで気づかず、ロイは濡れた髪をかき上げる。 「もうサイアクだ。二度と散歩なんて行くもんかっ!」 ブツブツと文句を言うロイを食い入るように見ていたハボックがにっこりと笑った。 「濡れたままじゃ風邪引きますよ、大佐」 「だったらタオルの一枚も持って…」 至極当然のことを言い出すハボックに、判っているなら何をぐずぐずしているのかと言ってやろうとしたロイは、やけににこやかなハボックの顔に思わず黙り込む。ハボックはそんなロイの手を取るとグイと引っ張った。 「風呂入りましょう。濡れた服は脱ぎにくいだろうからオレが脱がしてあげますから」 「は?服くらい自分で――」 「まあ、遠慮せずに」 そう言ってにーっこり笑うハボックに悪寒を感じたロイはハボックの手を振りほどこうとするが、ガッチリ掴まれた手首はびくともしない。 「ほら、早く早く」 「いや、ハボック、風呂なら自分で…っ」 ジタバタともがくロイをものともせず、ハボックはロイを浴室へと引きずり込むとバタンと扉を閉めたのだった。 2007/07/30 → 「びっちょりその後」(R20) |