アフ・チュイ・カック 〜 their childhood 〜
「…あった、あれだ!」
金髪の少年は崖の途中に生えている花を見上げて呟いた。自分の背丈よりずっと高い場所にあるそれに、少年は
どうしたものかと辺りを見回す。だが役に立ちそうなものを見つけることが出来ず、仕方なしに崖肌に手をかけた。
ほんの少しの出っ張りを見つけては少しずつ登っていく。チラリと足下を見てしまい、もうかなりの高さまで来ていた
ことに気付いて息を飲んだ。
「見ない、見ない…。」
言い聞かせるように呟いて登り続け、伸ばした手の指先が目指すものに触れ、少年は目を輝かせる。
「ん〜〜っっ」
必死に手を伸ばしてグイと引いた花が、すぽんと根ごと抜けた。
「やった…え?あ、うわぁっっ!!」
抜けた勢いでバランスを崩した体が崖から離れて宙に浮く。ふわりと浮いた体が重力に引かれて真っ逆さまに落ちた。
「わああああっっ!!」
悲鳴を上げて落ちる体が地面に叩きつけられる寸前、下から見えない手が受けとめたかのようにふわりと浮き、
ゆっくりと地面に横たえられた。
ショックで気を失った少年の金色の髪を誰かがそっと撫でる。怪我がないことを確かめた黒い瞳が柔らかく微笑んで、
それから気配がフッと消えた。しばらくして気が付いた少年は落ちてきた筈の崖と、そして怪我一つしていない自分の
体を見て首を傾げる。
「なんで?」
不思議そうに瞬いた空色の瞳が辺りを見渡し、そして彼は小さな声で呟いた。
「精霊さまが守ってくれたのかな…。」
祖母が話してくれた精霊の話を思い出して、彼は空に向かって叫んだ。
「ありがとう、精霊さまっ」
そうしてペコリと頭を下げると、少年は大事な幼なじみに誕生日のプレゼントを届けるべく、山を駆け下りていったのだった。
2007/10/7