アフ・チュイ・カック Chi's view
「こんにちは、カイおじさん。」
カランとドアベルが鳴って、店の扉が開いた。顔を覗かせた金髪の子供に商品を並べていたカイが優しく微笑む。
「やあ、ジャン。買い物か?」
「うん。今日の晩御飯のおかず。」
子供はそう答えると棚の中から野菜と調味料をいくつか取り出す。よっこいしょとそれをレジまで運ぶとカイに言った。
「あと、鶏肉を100グラムください。」
「鶏を100だな。」
カイはそう言うと奥の冷蔵室から肉を持ってきて切り分ける。
「ばあちゃんの調子はどうだ?」
「今日はね、随分具合がいいみたいなんだ。食欲もありそうだし、ばあちゃんの好きなもの作ってあげようと思って。」
そう言って嬉しそうに笑う子供の金色に輝く頭をカイはワシワシとかき混ぜた。
「そうか、じゃあサービスしとこうな。」
「えっ?いいよ、そんな。」
悪いから、と遠慮がちに俯く子供にカイは笑う。
「いいから、ばあちゃんに精のつくもの作ってやれ。」
そう言えば子供はにこりと笑って頷いた。
「それから、これも。」
カイはそう言いながら他の荷物の上に梨を二つ載せる。
「えっ?ダメだよ、お金足りないし。」
「これは頑張ってるジャンへのご褒美だ。ジャンは偉いな、いつもばあちゃんの面倒見て。」
カイの言葉に子供は顔を紅くすると言った。
「だって、オレ、ばあちゃんダイスキだし。早く元気になって欲しいから。」
「ジャンが一生懸命看病してるんだ、すぐ元気になるさ。」
そう言うカイに子供の表情が真剣みを帯びる。
「ホントにそう思う?ばあちゃん、元気になるよね?」
子供の言葉にカイはハッとしてその幼い顔を見た。不安に揺れる空色の瞳にカイは胸を突かれると子供の体を
抱きしめる。
「勿論だとも。元気になるさ。」
そう言いながら子供の柔らかい頬に自分のそれを寄せれば子供がくすぐったそうに笑った。
「カイおじさん、髭が痛いよ。」
「おお、すまんすまん。」
カイは子供の体を離すと肉や野菜の入った袋を手渡す。
「重いから気をつけて。」
「うん、ありがとう、カイおじさん。」
そう言って出て行こうとする子供の背中にカイは声をかけた。
「ジャン。何かあったらすぐ俺を呼ぶんだぞ、絶対だ。」
カイの言葉に空色の瞳を僅かに見開いた子供はにっこりと笑うと頷いて、重い荷物を抱えて出て行く。この村を
守る為死力を尽くした彼の祖母が、もはやそう長くは持たないであろう事を、カイは薄々感じていた。既に両親の
ない子供が、たった一人の肉親をなくしてただ一人取り残されることへのやるせなさに、カイはそんな未来が
少しでも遠いことをただ祈るしかなかった。
2007/9/2
→ カイと子ハボの素敵イラスト