「待て、ハボック。今日は何の日か知ってるか?」
 さあ、これから、と圧し掛かろうとしたところで待ったをかけられて、ハボックは眉を顰める。それでも一応年上の恋人への礼儀でもって体を起こすと、ベッドに座り込んで答えた。
「今日?今日って6月8日っスよね」
 日にちを確認してハボックは考える。公式な行事のある日でも、ましてや何か二人の記念日でもなく、ハボックは首を傾げて答えた。
「すんません、判らないっス」
 知ったかぶりをするよりも判らない事は判らないと素直に言った方がいいのは長いつきあいでよく判っている。案の定、ハボックがそう答えればロイは怒るでなく口を開いた。
「今日はロイハボの日だ!」
「は?ロイハボの日?」
 きょとんとして鸚鵡返しに聞けばロイが重々しく頷く。
「そうだ。そしてだな、この場合左に名前がある方が攻めになるんだっ」
「………はぁ?」
 拳を握り締めて言うロイをハボックは肩を落として見つめた。また妙な事を言い出したと思いつつ、それは顔には出さずに言う。
「ってことは大佐がオレを抱きたいってことっスか?」
 そう言ってじっと見つめればロイが顔を赤らめながらも頷いた。ハボックはベッドに正座して自分を見上げてくる白い顔を見つめていたが、やがて肩を竦めて言う。
「ま、いいっスけどね。大佐がそうしたいって言うなら」
「ホントかっ?」
 ハボックの答えにロイがパッと顔を輝かせた。その可愛らしい表情を見ればどう考えてもそっちが抱かれる側だろうとハボックが思っていれば、いそいそと圧し掛かってきたロイが言う。
「おい、さっさと押し倒されろ」
「え?ああ、はいはい」
 肩に載せられた手をしがみついてきたのだと思っていたが、どうやら押し倒そうとしていたらしい。こりゃ失礼、と自分からベッドに仰向けに倒れたハボックにロイはフンと鼻を鳴らして圧し掛かる。だが、それ以上何もしてこないロイにハボックが不思議そうに尋ねた。
「どうしたんスか?まさかヤり方が判んねぇとか言うんじゃないっしょ?」
「そっ、そんな筈ないだろうッ、今シようとしてたところだッ」
 ムキになって言い返してくるところを見ればどうやら図星だったらしい。ええと、と呟いて遠慮がちに触れてこようとするロイの手を取ってハボックは言った。
「大佐、襲い受けって知ってます?」
「お、襲い受け?」
「そ、受けの方が襲うんスよ」
 そう言われてロイはキョトンとしてハボックを見る。どうやら全く知らないと察して、ハボックはにっこりと笑って言った。
「襲い受けなら受けの方が積極的にスるっスから、攻めの大佐はなんもせんでいいんです」
「そ、そうなのか?」
「そうそう、だから大佐は大船に乗った気持ちで」
 と言いながらハボックはロイと体を入れ替える。
「安心して襲われてて下さい」
 そう言って圧し掛かってきた男に、ロイは良いように乱された挙げ句、結局いつもと変わらず美味しく戴かれてしまったのだった。