the day before


「あー、疲れた…」
 ハボックはどさっとソファの上に体を投げ出した。先日起きたビルの崩落事故の瓦礫の撤去作業のためここ10日ほどはひたすら肉体労働の連続だった。それでもようやく目途がついて、明日は久しぶりの休日だ。ロイも明日は休みだと言っていた。多分自分の休日にあわせてむりやりもぎ取ってきたのだろう。中尉の顰め面を背に必死に仕事に励むロイの姿が思い浮かんでハボックは笑みを浮かべた。
(明日は天気いいって言ってたよな。洗濯溜まってたから朝からそれやって、それから買出しにも行かないと…。あ、それより大佐が帰ってくる前にまず食事の用意しなくちゃ…)
 起きないと、と考えているうちハボックはいつの間にやらソファに凭れたまま寝息を立てていた。


 家に戻ってソファにへたり込んでいるハボックを目にしたロイは一瞬ギョッとしたが、ただ眠ってしまっているだけだと気づいてホッと胸をなでおろした。ここ暫くは殆んど司令部にも顔を出さず、現場と家とを往復するような生活を送っていたハボックに不満がなかったと言えばウソになる。だが、それも仕方がないと我慢してきたのだ。明日はハボックが休日をとると知って、我慢してきた自分にご褒美とばかりに休日をもぎ取ってきた。おかげで今日一日かなりハードではあったが次に待つ楽しみを思えばどうということもない。ロイはソファに腰を下ろすとすうすうと寝息を立てるハボックの髪をそっと撫でた。外での仕事が多いわりにその髪は思いのほか柔らかい。
「ハボック」
 髪を撫でながら呼んでみるが小さく開いた唇からは静かな寝息が漏れるばかりで返事はない。ロイは髪を撫でていた指先をそっと滑らせていく。額、頬、そして唇と触れていってもハボックが起きる気配はなかった。そんなハボックにロイの悪戯心が頭をもたげ始めた。そっと手を滑らせるとハボックの軍服のボタンを外していく。上着の前を寛げズボンのベルトを外しジッパーを下ろした。インナー代わりの黒いTシャツを胸元まで捲り上げるとその胸の飾りに舌を這わせて行く。もう一方を指で捏ね回しながら空いた手をズボンの中へと滑り込ませた。ハボック自身をそっと握りしめ擦り上げて行けば意識のない体の中でそれだけが別の生き物のように僅かに硬度を増していくのに、ロイはくすりと笑みを零した。


 ゆっくりと覚醒していく意識の中、自分の体に籠る不可解な熱にハボックは眉を顰めた。それが何だかわからないまま浮上していく感覚にいきなり飛び込んできた快感にハボックはぎょっとして目を見開いた。視線をやった先、自分の胸元にロイの黒髪が揺れるのが映り、次の瞬間股間と胸の辺りから湧き上がる快感にあっという間に眠気が吹き飛んだ。
「ちょ、ちょっと、アンタっ!な、な、何やってるんスかっ?!」
 慌てて覆いかぶさるロイの肩に手をあてて引き剥がそうとするがその瞬間自身をぎゅっと握られて息を呑んで身を竦めた。
「なんだ、起きたのか」
「お、起きたのかじゃありませんよ!一体何やって…っ」
「腹が減ったんだ」
 ハボックが慌てて言い募るのにロイは小さく笑って答えた。
「お前があんまり美味そうなので喰ってた」
 そう言ってハボック自身を煽る手に力を込める。
「は…っ、何言って…っ、ちょっと、大佐、ま、待って…っ!」
「うるさいな、少し黙ってろ」
 ロイはそう言うとハボックのズボンを引き摺り下ろし既に頭をもたげていたそれを口に含んだ。
「たいさっ」
 体をずり上げて逃れようとするのを強引に引き戻して深くくわえ込む。舌で括れをなぞり強く吸い上げハボックを育てて行く。そうしておきながらロイは自分のズボンの中に手を入れると後ろをゆっくりと解し始めた。
「た、いさ…っ」
 ロイを引き剥がそうとその肩に手を当てていたハボックはロイの痴態に息を呑んでそれと同時に中心にどくりと熱が籠るのを感じた。目を逸らすどころか瞬きさえ出来ずにロイの姿を凝視する。ハボックの視線を感じたのかロイが目を上げてハボックを見やるとうっすらと微笑んだ。そうして身動きの出来ないハボックから一度体を起こすとズボンを脱ぎ捨てて横たわるハボックに跨るとその中心にゆっくりと腰を下ろしていく。息を詰めて見つめてくるハボックに挑戦的な笑みを向けると滾るハボック自身を受け入れていった。
「ふ…っ、んんっ」
「あ、たいさ…」
 ロイの中にゆっくりと沈み込んでいく感覚にハボックは思わず息を詰める。全部受け入れるとハボックの鍛えられた腹の上に手を置いてロイは一瞬呼吸を整えた。それからハボックの目を見つめながらゆっくりと腰を動かし始める。湿った水音とロイの浅い呼吸にハボックは自分の中で何かがぶち切れる様に感じ、次の瞬間ロイの腰を掴むと下から激しく突き上げていた。
「ああっ」
 堪らずロイが背を反らして喘ぐのにも構わず何度も激しく突き上げる。耐え切れずにロイが体を倒してくるのを抱き込んで体を入れ替えるとロイの上に圧し掛かった。ロイの足を抱え上げて深く突き入れればロイの口から嬌声が上がった。
「やぁっ、ハ、ハボック…っ」
 もっとゆっくり、と喘ぐロイにしかしハボックは手加減してやることが出来ない。むしろそうして涙の滲む視線で訴えられればなおさら煽られて歯止めが利かなくなっていく。ハボックはロイの体を抱え込むと思うまま自分の欲望を叩きつけた。


「アンタって、どうしてそう、時々盛りのついた猫みたいになるんスかね…」
 熱が冷めればどうしようもない自己嫌悪に陥るハボックだった。久しぶりに肌を合わせるのだ、本当はきちんとベッドの上でもっと優しく抱いてやりたかったのに気づけば狭いソファで貪るように抱いてしまった。上等なソファは目も当てられない状態だし、狭い場所で強引にことに及んだせいで体のあちこちに小さな擦り傷のようなものも出来てしまった。それでもロイは満足げに目を細めてハボックの首に腕を回してきた。
「お前が私を放っておくのが悪いんだ」
 そう言ってハボックの唇にキスを落とす。啄ばむようなキスを大人しく受け止めてだがハボックは小さくため息をついた。
「そんな事言ったって…」
 転寝している間にロイにすっかり煽られて挙句の果てにあんな乱暴な抱き方をしてしまった。自分がロイに対してどれほど飢えていたのか見せ付けられたようで居心地が悪い。
「気に入らなかったのか?」
 黒く濡れた瞳で覗き込まれて背筋がぞくりとする。
「まさか」
 そう言って軽く口付けた。
「たっぷり堪能させていただきました」
 ハボックのその言葉にロイが眉を顰める。
「私はまだ足りないぞ」
 そう言いながらハボックの足の間に体を割り込ませてくるロイにハボックは慌てて体を起こした。
「待ってっ!!ちょっと待ってくださいっ!」
 情けなく声が上ずるが構っていられない。
「まずは腹ごしらえしましょうっ!帰ってからシャワーも浴びてないしっ、夜は長いしっ」
 このまま また相手のペースで振り回されるのは御免こうむりたい。焦るハボックを見て一瞬きょとんとしたロイだったがにやりと笑うと
「明日は休みだしな」
と言った。そんなロイにハボックはかあっと顔に血が上るのを止められなかった。


2006/6/1


あー、いや、こんな話書いたの、すっかり忘れてました。コメントのしようがないわ(汗)積極的なロイと押されぎみのハボでございます。とりあえず続きます…。