煙草2


「少尉、ちょっといいかしら」
 外から戻ってきた所を執務室から顔を出したホークアイに呼ばれてハボックは煙草に火をつけながら執務室に入っていった。
「なんスか、中尉」
 中に入ると困ったような笑みを浮かべたホークアイと不機嫌に顔をゆがめるロイに迎えられる。
「体調が悪いようなの。これ以上ムリして悪化させるより今日は帰って体調回復に努めてもらおうと思って。悪いけど、送り届けてもらえるかしら。今日はそのまま上がってもらってかまわないから」
 ホークアイがちらりとロイの方を見やりながらハボックに言う。そう言われてハボックがロイの方をみるとふんっと顔を逸らした。
「了解っス」
 ハボックは敬礼を返すとロイのコートを持ってきた。
「ほら、帰るっスよ」
 ロイを急き立てて立ち上がらせると後ろからコートを羽織らせてやる。
「じゃあ中尉。失礼します」
「お願いね」
ハボックはロイの背を押して部屋を出た。


「体調悪いってどうあるんスか?」
 後ろに座れといっても頑として助手席に滑り込んで譲らないロイに諦めて、ハボックは運転席に座ると車を出した。返事をしないロイにちらりと視線を投げるとぶすっとして前を見つめている。
「大佐?」
 黙ったままのロイにこれは返事をする気がないなと放っておこうとハボックが思った時。
「お前のせいだろうが」
 そう答えたロイの声はものの見事にしゃがれていた。
「大佐、声…。」
 あまりのしゃがれ声にハボックがびっくりしてまじまじとロイの顔を見つめた。
「ハボック、前」
「あ、はい」
 運転中だったことを思い出してハボックは前を向きなおす。
「お前がうつしたんだろうが」
「うつしたって…。―――あ」
 何のことだと思った次の瞬間、そう言えば昨日、風邪が治るまでと煙草を取り上げられた腹いせにこの人に散々キスしたんだっけと思い出した。
(そういや、すっかり治ったな、風邪)
 なんとなく納得したハボックをロイが思い切り眉を顰めて睨みつけた。そんな様子に思わずハボックは苦笑いをこぼす。
「あー、まぁ、ちゃんと看病させてもらいますんで」
それを聞いてロイは当たり前だとボソッと呟いた。


「ホントに医者によってこなくて良かったんスか?」
「医者なんかより早く治る方法がある」
「はぁ?何スか、ソレ」
 また訳のわからんことを言い出したなと思いつつ、適当に受け流しておいてハボックは冷蔵庫の中身を覗いた。
「夕飯、なにがいいっスか?喉に優しいものがいいっスよね」
 リクエストによっては買出しに行かないととハボックが思っていると徐にロイが近づいてきた。なんだろうと冷蔵庫のドアを閉じてロイを見下ろせば、いきなり襟首を掴まれて引き寄せられる。
「えっ、ちょっ…」
 次の瞬間にはロイに口付けられていた。
「何するんスか、大佐?」
「返してやる」
「はあっ?」
 訳がわからず混乱するハボックにロイは微笑んで
「お前から貰った風邪だからな、返してやる」
 そう言って再び口付けてきた。
(えっと、それってつまり…)
 ハボックは目の前のロイの長い睫を見ながら考えた。
(昨日の仕返しっスか…?)
 なんて負けず嫌いな、と呆れると同時に
(でも、大佐のほうからキスしてくれるわけだし)
 と考える。
(結構おいしいかも)
 そう結論付けて、ハボックは積極的にロイのキスに答えだした。


2006/5/14


そして更にありがちな展開だったり。いいの、二人がラブラブなら。