彗星  ブレダver.


 建物の扉をくぐると冷たい空気に身を竦めた。
「ハボ、今日、お前も来るだろ?」
 オレは隣でタバコを咥えたまま両手をポケットに突っ込んでいるハボックに尋ねた。
「んー」
「ファルマンがうまい酒持ってくるって言ってたしな。最初は寒いかも知れないけど飲んでるうちにあったまって来るだろ」
「んー」
「何だよ、ハッキリしねぇな。お前、好きだろ、こういうの?」
「まあな」
 いつもなら張り切ってこういうイベントに参加したがるはずなのに、今日はどうもはっきりしない。いぶかしげなオレの視線を感じたのだろう、苦笑して頭を掻いた。
「でも、ほら、アレだし」
 と言って振り向いて今出てきた建物をを振り仰ぐ。一瞬何のことだかわからなかったがすぐピンと来た。
 黒髪の上司は今夜は夜勤だと言っていた。当然「彗星を見ながら酒を飲む会」には参加できない。
「ほっとくと拗ねるからな」
 と言って笑う顔は幸せそうで。
 一体いつだっただろう、この二人がそういう関係にあると気がついたのは。
 いくら美人でも男じゃないかと最初は思ったが、一緒に居る時の二人はとても自然でくつろいでいるように見えた。横暴な上司にコイツときたらとことん甘くて、どんなに酷い事をされてもちっとも怒りやしない。見ているこちらの方が腹が立ってよっぽど言ってやろうかと思ったこともあったけれど。
 でも、それが素直でない上司の精一杯の甘えなのだとわかった時、なるべくしてこうなったのだと思った。
 コイツらのバカップルぶりには辟易させられることも度々だけど、それでも仕方ないかと思えるほどには受け入れられて。
 今日は一緒に酒を飲めそうにないと、背の高い同僚を見上げながらオレは思った。


2006/05/01


「彗星」を書いた後、なんとなく浮んだこの話。でもブレダから視点の2人ってスキなんで。これを読んだ友達からは「ハボって理解のある親友持って幸せだね」と言われました。