secret wedding 2


「オレも結婚したいなぁ…」
 大佐にしがみ付いたままそう呟けば、抱きしめた体がびくりと震えた。自分で「綺麗なお嫁さんが欲しくなったか」なんてとんでもない事を言い出したくせに、いざオレがこう言えば酷く傷ついてしまうんだ。オレの背を抱く指が僅かに震えて力が入るから、この人の心の動きなんてバレバレで。
 いつだってこの人は矛盾している。オレを好きだと思っているくせに好きじゃないと言う。側にいたいと望むくせに側にいちゃいけないと考えてる。誰よりもオレを縛る権利を持っているのにそんな権利はないと言う。
 どうしたら、この人をそんな矛盾だらけの思考から引っ張り出せるんだろう。どうしたら安心させてやれるんだろう。
「たいさ、オレと結婚して…」
 言葉にして誓えば、少しは変わるような気がしてそう言ってみた。実際、アイツらの結婚式を見て、オレも大佐と結婚したいと思ったから。
「何、言ってるんだ。綺麗なお嫁さんが欲しいんだろう」
 ああ、全く。どうしてこの人は。オレにとってアンタほど綺麗な人なんていやしないのに。
「ここにこの世で一番綺麗な恋人がいんのに、なんでお嫁さんが欲しいんスかっ」
 オレにはアンタしかいないってどう言えば判ってくれるの?
「アイツらの結婚式見てて、オレもたいさと結婚したいなぁって本気で思ったんスよ」
 結婚って言葉でこの人を縛れるわけじゃないけど。でも、誓いたい。オレのこの気持ちをアンタの存在に。知って欲しい、オレの想いの深さを、アンタ自身に。
「バカな事を…」
 そう言って逸らす瞳が不安に揺れてる。何がそんなに不安なんだよ、こんなにスキだって言ってるのに。
「それって、オレじゃアンタに不釣合いって事っスか?あ、それともオレみたいなアンタより階級も年齢も給料も下の奴とは結婚できないってこと?」
 詰るようにそう言えば途端に否定の言葉が返ってくる。
「じゃあ、どういうことっスか?」
 アンタが不安に思ってることって何?
「だれも認めてくれないだろう、男同士の結婚なんて…」
 それこそバカな事じゃないか。他の誰にも認めてもらう必要なんてないんだから。
「誰にも認めてもらう必要なんてないじゃないっスか」
 言葉もなく見つめてくる黒い瞳を見返して。
「オレとアンタと神様だけが知ってればいい事でしょう」
 それだけで十分なんだって判ってよ。
「ね、結婚しましょう。オレとアンタの誓いの言葉を神様に聞いてもらいましょう」
 甘える声で強請れば、ゆらゆらと黒い瞳が揺れる。オレは大佐の手を包み込むと誓いの言葉を口にした。
「オレ、ジャン・ハボックはロイ・マスタングを生涯の伴侶とし、幸せや喜びは共に分かち合い、悲しみや苦しみは共に乗り越え、病める時も健やかなる時も永遠に愛する事を誓います」
 大佐は辛そうに息を吐いて瞳を伏せる。ほらまた、何も変わらないって思ってるでしょ。でも、違う。そう口にする事できっとアンタは変わっていけるから。だから言って。
「たいさ…?」
 名前を呼べば、緩やかに表情が解けて。頑なに閉ざそうとする唇の縛めを解くように唇に触れる。そうすれば、大佐の唇から言葉が零れた。
「私、ロイ・マスタングはジャン・ハボックを生涯の伴侶とし、幸せや喜びは共に分かち合い、悲しみや苦しみは共に乗り越え、病める時も健やかなる時も永遠に愛する事を誓います…」
 大佐の言葉を聞いた途端、ぎゅっと抱きしめていた。形の良い唇を自分のそれで塞いで。誓いのキスだって、判ってるのかな。ぴちゃりと音を立てて唇を離すと、大佐に笑いかけた。
「急だったから指輪も用意してないっスけど、今度ちゃんと渡しますから」
 そう言えば、そんなものは欲しくないようなことを呟くから。ホント、アンタってへそ曲がり。
「貰ってほしいんです」
 きっぱりと言いきれば、綺麗な顔に朱がのぼった。黒い瞳が潤んで、それを見られまいとするようにオレの胸に顔を埋める大佐はやっぱり可愛くて。そっと抱きしめると宥めるように背中を撫でた。
「たいさ…だいすき…」
 耳元に吹き込むように囁けばぴくんと体が震える。ああ、ホントになんて可愛くて愛しいんだろう。今すぐにこの人の全部が欲しくて唇を合せながら囁いた。
「ねぇ、いいっスか…?」
 双丘の狭間をするりと撫で上げると、驚いたように縋りついてくる。ちらりと顔を窺えば耳まで真っ赤になって視線を彷徨わせていた。オレは大佐の返事を待たずに細い体を抱え上げる。抗議の声を上げる唇を唇で塞いで黙らせると寝室へと大佐を運び、その体をベッドの上に縫いとめた。
「ハボ…っ」
「今日はイヤは なしっスよ」
 ホントはシテ欲しいくせにいつだってイヤって言うんだ。特に今日は新婚初夜なんだからそんな事言わないでよ。
「バカっ、何を今更…っ」
「気持ちの問題でしょ」
 真っ赤な顔をして言う大佐にそう言うと滑らかな頬を撫でた。
ねぇ、たいさ。
さっき誓ったでしょ。
だからやっぱり今日は特別な日なんスよ。
「愛してますよ、たいさ…。未来永劫、変わることなく」
 そう言えば否定の言葉を吐き出そうとするこの人の唇を快感で塞いで。
「今夜はそれをじっくり教えてあげます…」
 囁くと同時にゆっくりと覆いかぶさっていく。潤んだ黒い瞳を見つめているうちに何となく判ってしまった。この人の嘘も矛盾も強がりも、全部ぜんぶ不安だからだ。それってオレを信じてないの、って気もするけど、だったらそんな不安、全部取り去ってあげるから。
 何度だって誓うし、何万遍でも好きだって言ってあげる。不安に思う暇もない程愛してあげる。オレ以外の何も感じることが出来なくさせてあげるよ。
「たいさ…」
 耳の後ろにキスをひとつ。きつく吸い上げれば紅い花びらが散って。ぴくんと震える体が愛しくて、いくつもいくつも花びらを散らしていく。シャツをくつろげ胸元にもキス。薄い色合いの乳首を舌でぐりゅとこねれば大佐の唇から熱い吐息が零れた。しつこく舌と指で愛撫すれば果実が熟れるように色を濃くしてぷくりと立ち上がる。
「あ、も…そこ、ヤダ…っ」
「どうして?弄るたびに気持ちよさそうな声が聞こえるのに…」
「ばかっ…ああっ」
 きゅうとつねり上げると喉を仰け反らせて喘ぐ。黒い瞳からぽろぽろと涙が零れてとても綺麗だ。
「イヤ…もう…ツライっ」
 感じすぎて辛いのだと必死に訴える大佐に、流石にかわいそうになって指を離した。途端にほっとしたように弛緩する体を押し開いて奥まった蕾を曝け出した。ひくつくそこに舌を這わせると悲鳴のような声を上げる。唾液を流し込みながら指を押し込んだ。
「んんっ…あ、はあ…っ」
 ぐちぐちとかき混ぜながら棹に舌を這わせ根元からそっと舐め上げる。蕾をかき回すたびにとろりと零れてくるのが大佐の快感を如実に伝えていてたまらなかった。
「あんっ…ハボ…」
 前と後ろを同時に弄られて、大佐は腰を揺らめかせながら喘いだ。棹をじゅぶじゅぶと擦り上げると後ろに差し入れた指がきゅんと締め付けられる。オレはそれを自分自身で感じたくて指を引き抜くと大佐の脚を抱え上げた。
「挿れますよ、たいさ…」
 ぐっと押し入れば強張る体を宥めるようにそっと撫でた。
「あ…ハボ…っ」
 きゅっとしがみ付いて来る大佐を抱き返してゆっくりと体を進めていく。みっちりと埋めて、眉間に皺を寄せてぎゅっと目蓋を閉じている大佐の目元にキスをした。
「愛してますよ、たいさ…」
 そう囁けばゆっくりと目蓋が開いて、大好きな黒曜石の瞳が覗いた。その瞳を見た途端、自分の中で何かが切れる音がして、乱暴に大佐を突き上げた。
「ひあっ…ああっ」
 突然の事に、大佐が悲鳴を上げる。それに構わずガンガンと突き上げればオレの背に回された大佐の手が爪を立てた。
「たいさ…たいさっ…すき…ッ…だいすきっ」
「ああっ…ひうっ…ハボ…クッ」
 ぐちゅぐちゅと粘着質な水音が部屋の中に響き、その上を大佐の喘ぎ声が流れていく。これでもかと最奥を突き上げれば大佐がびゅるりと熱を吐き出した。
「んあああっ…ああっ…や、まって…っ」
 登りつめた体を情け容赦なく突き上げれば、大佐が泣きながら縋ってきた。そうだよ、そうやって、オレだけに縋っていてよ。
「たいさ…かわいいっ…絶対、離さないからっ」
 だからオレだけを見て。オレだけを信じて。
「ハボ…っ、あっ…ぁア―――ッ!!」
 どくどくと熱を吐き出す体を飽くことなく抱きしめて。何度も好きだと囁いた。
「たいさ…オレの…オレだけの…」
「ハボ…す…き」
 殆んど聞き取れないような声で囁かれた言葉は、でも、確かにオレの耳に届いて。
「たいさ…っ」
 泣きたくなるくらい嬉しかった。

 何度も求めて求められて。ぐったりと力の抜けた体をそっと抱きしめる。寝乱れた黒髪をそっと梳いてやれば、気持ちよさそうにオレに体を寄せてくる大佐が愛しかった。
「ねぇ、明日一緒に指輪買いにいきましょうか」
 耳元にそう囁けば真っ赤になって、それでも大佐は微かに頷いた。たったそれだけの事が堪んなく嬉しくて、寄り添う体をぎゅっと抱きしめる。
 ずっとずっと、たとえ何が起きても絶対に離さない。オレの命の尽きるその瞬間まで、繋いだ手は離さないから。
 だからアンタもオレの手を離さないで。
 そう誓って、ゆっくりと唇を重ねた。


2006/12/13


「secret wedding」の続きです。前の話でどうもすっきりしなくて書いてみたのですが、なんか結局撃沈したような…。もっとラブラブな話にしたかったんですけどー(汗)