| secret wedding |
| もうそろそろ時計の針が明日へと差しかかろうとする頃、玄関の扉が開く音がして、ハボックが帰ってきた。 「たいさ〜〜、ただいまかえりましたぁっ」 友人の結婚式に出ていたハボックは酒も入って、かなり上機嫌だった。 「おかえり、ハボック」 読んでいた本を脇に置いてハボックを見上げれば、ハボックは着ていたコートを脱ぎ捨てて、ソファーに座っている私に抱きついてくる。 「たいさあ…」 酔いの所為で幾分体温が高くなっているハボックの吐く息からは、かなりアルコールの匂いがした。 「どうした、上機嫌だな」 しがみ付いて来る背中をそっと擦ってやれば、気持ちよさそうに目を閉じる様子が大きな犬のようで笑える。 「どうだった、結婚式は?」 そう言うとハボックは私の耳元でふぅとため息をついた。 「そっスね…。綺麗な花嫁さんでしたよ。アイツには勿体無いくらい綺麗な…。二人ともすげぇ幸せそうで…正直羨ましかったっス…」 途切れ途切れに伝える声に、思ってもみない言葉が零れる。 「お前も綺麗なお嫁さんが欲しくなったか?」 自分で言った言葉につきりと心が痛んで。 帰ってきた言葉にさらに痛みが大きくなった。 「オレも結婚したいなぁ…」 自分達の関係が間違っているとは思わないが、世間一般的に受け入れられるものではないことくらい、判っている。それでも、誰よりも大切で側にいたくて、こうする事を選んだのだけれど。 ハボックにしてみれば、ほんの一時の戯れ、私が抱えるのと同じ想いをハボックが持っていないとしても、それを咎める権利は私にはないのだ。胸の痛みにハボックの背に回した手が微かに震える。ハボックがこの手を離したいと思うのなら、その時は何も言わずに離してやるべきなのだ。そんな事を考えていた時。 「たいさ、オレと結婚しません?」 「…え?」 ハボックはしがみ付いていた体を離すと、私の手を取って言った。 「たいさ、オレと結婚して…」 まじまじと目を見開いてハボックの顔を見つめる。 「何、言ってるんだ。綺麗なお嫁さんが欲しいんだろ?」 そう言って手を離そうとすれば、ハボックがぎゅっと手を握り締める。 「ここにこの世で一番綺麗な恋人がいんのに、なんでお嫁さんが欲しいんスかっ」 心底怒ったように目を細めてそう言うハボックに返す言葉がみつからない。 「アイツらの結婚式見てて、オレもたいさと結婚したいなぁって本気で思ったんスよ。」 だって、そんなこと、叶うわけないじゃないか。 「バカな事を…」 熱の籠った空色の瞳を見られなくて目を逸らしてそう呟けば、ハボックが悲しそうに言った。 「それって、オレじゃアンタに不釣合いって事っスか?あ、それともオレみたいなアンタより階級も年齢も給料も下の奴とは結婚できないってこと?」 「そんなんじゃ…っ」 「じゃあ、どういうことっスか?」 畳み掛けるように聞かれて、震える唇を噛み締める。だって、だって。 「だれも認めてくれないだろう、男同士の結婚なんて…」 吐き捨てるようにそう呟けば、ハボックが私の顎を掴んで顔をハボックの方へ向けた。 「誰にも認めてもらう必要なんてないじゃないっスか」 そう言うハボックを言葉もなく見つめる。 「オレとアンタと神様だけが知ってればいい事でしょう」 囁く声に目を見開いて。空色の瞳が優しく微笑んだ。 「ね、結婚しましょう。オレとアンタの誓いの言葉を神様に聞いてもらいましょう」 ねぇ、いいでしょう、と甘える声に胸の痛みが癒されていく。ハボックは私の手を引くと立ち上がらせた。その大きな掌に私のソレを包み込んでじっと見つめてくる。そうして徐に口を開くとゆっくりと言葉を吐き出した。 「オレ、ジャン・ハボックはロイ・マスタングを生涯の伴侶とし、幸せや喜びは共に分かち合い、悲しみや苦しみは共に乗り越え、病める時も健やかなる時も永遠に愛する事を誓います」 迷うことなくハボックはそう言いきって、私の言葉を待つように空色の瞳を向けてきた。あんまり綺麗なソレを見ているのが辛くて、そっと瞳を伏せる。あまりに率直なハボックの言葉に、返す言葉が出てこない。だってこんなことをしたところで何も変わりはしないのは判りきっているから。 「たいさ…?」 甘えるように囁く声に、必死に強がろうとする心がなす術もなく熔かされて。 ハボックの指が、頑なに閉ざされた唇に触れてその縛めを解いていく。 気がついたときには言葉が唇から零れ落ちていた。 「私、ロイ・マスタングはジャン・ハボックを生涯の伴侶とし、幸せや喜びは共に分かち合い、悲しみや苦しみは共に乗り越え、病める時も健やかなる時も永遠に愛する事を誓います…」 そういい終えた途端、ハボックがぎゅっと抱きしめてきた。まだアルコールの匂いの残る唇に私のソレを塞がれて深く口付けを交わす。ぴちゃりと音を立てて唇を離すと、ハボックが照れたように笑った。 「急だったから指輪も用意してないっスけど、今度ちゃんと渡しますから」 「別に、そんなもの…」 「貰ってほしいんです」 きっぱりとそう言うハボックに顔に熱が上る。上った熱が瞳から溢れてくるのを見られたくなくて、ハボックの胸に顔を埋めた。ハボックはそっと抱きしめると宥めるように背中を撫でてくれる。 「たいさ…だいすき…」 耳元に吹き込むように囁かれてぴくんと体が震える。ハボックが嬉しそうに微笑む気配がして、唇を合せながら囁いてきた。 「ねぇ、いいっスか…?」 ハボックの手がするりと双丘の狭間を撫でて、思わずハボックに縋りついた。もう、何度も肌を合せているのに、何を今更慌てることがあるというのか。それでも、ドキドキと高鳴る心臓を押さえられずにいる私の返事を待たずに、ハボックはふわりと私の体を抱え上げた。 「ちょっ…、ハボックっ」 思わずあげた抗議の声をハボックの唇が飲み込んでいく。言葉も呼吸も全て奪い取られて気がついたときにはベッドの上に縫いとめられていた。 「ハボ…っ」 「今日はイヤはなしっスよ」 新婚初夜なんだし、と嬉しそうに言うハボックに顔から火が噴いたような気がした。 「バカっ、何を今更…っ」 「気持ちの問題でしょ」 ハボックはそう言うと頬をなでてきた。 「愛してますよ、たいさ…。未来永劫、変わることなく」 「そんなこと…っ」 あるわけない、意地を張ってそう続けようとした言葉を、シャツの中に滑り込んできた手が封じてしまった。 「今夜はそれをじっくり教えてあげます…」 そう言ってゆっくりと覆いかぶさってくる体を、逃げることも出来ずに受け入れていった。 2006/12/11 |
なんだかなぁ、自分で書いててものすご〜く未消化です。ただ何となくハボとロイの結婚式を書きたかっただけなんですけど。もっと甘々になる予定だったのになぁ。うむむ、すっきりしない…。というわけで続きます(←え?) |