もみじ


「ゴメン、でもオレ、アンタのこと好きにはなれないから」
 そう答えた途端、思い切り頬を叩かれた。


「お〜お、見事な紅葉だなぁ。どうしたよ、ソレ」
「新しく受付に来た女の子にヤラレタ…」
 ブレダの問いにハボックが答える。
「すげぇな、真っ赤だぜ」
「付き合えないって言っただけなのに…」
 机に突っ伏してシクシクと泣きをいれるハボックを見てブレダはため息をついた。
(どうせまた、無表情で告げたんだろうが)
 コイツがあの黒髪の上司一筋なのは知っているが、もう少し上手に断れないもんかといつも思う。
(まぁ、別にオレが痛い思いする訳じゃないからいいけどな)
 そう思いながら視線を上げるとロイが入ってくるのが見えた。
「何をしているんだ?」
 机に突っ伏しているハボックに声をかけるが顔を上げたハボックの頬をみて目が据わる。
「…なんだ、ソレは」
「ふられたそうです」
 間髪をいれず答えたブレダに「違うだろっ!」と騒ぐハボックの向こうでロイが目を細めるのが見えた。ブレダが、あ、と思った瞬間。
 スナップを効かせた平手打ちがハボックの頬に綺麗に決まっていた。


「…っってぇ〜〜っ!!」
 頬を押さえてうずくまるハボックをそのままにロイは執務室に入ると扉を閉めてしまった。
「…オレが何したって言うんだ…」
 さっきまでも結構赤かったソレは、今やすっかり腫れあがってかなり痛そうだ。
(やっぱり…)
 そんなハボックに同情しながらも、ブレダはわかっていた展開にため息をついた。
「お前さ、なんで殴られたかわかってんの?」
 そう尋ねるブレダを見上げるハボックの顔には大きく?マークが書いてある。
(大佐もかわいそうに)
 ロイのハボックへの独占欲は傍から見てもはっきりわかるほどだ。今回もきっと自分以外の人間がハボックの頬に痕を付けたのが気に入らないのだ。でも、当のハボックにはそれがまるでわかっていない。そこまで自分がロイに想われていることが理解できないらしい。
(誰が見たってバレバレじゃんよ)
 その時、執務室の扉が開いてロイが顔を覗かせた。
「ハボック、コーヒー」
 それだけ言うとすぐ引っ込んでしまう。
「はいはい」
 まったく自分勝手なんだから、とぶつぶつ言いながらもハボックは立ち上がって給湯室へと向かった。暫くして両手にマグを持って戻ってくると、行儀悪く足でノックしながら器用に扉を開けて中へ入っていく。
(どうせ、これから紅葉をネタにいちゃつくんだろうな…)
 パタンと閉まる扉を見ながらブレダは思った。
(仕事しろよ、仕事。中尉に怒られても知らないぜ)
 ペンを持ち上げて書類に向かう。
(まぁ、オレには関係ないけどな)
 そう考えて、ブレダは中のバカップルのことを頭から閉め出した。


2006/5/6


ハボにマーキングするロイの話ってことで。うちのロイはハボにメロメロなんです。ブレダから見た2人ってのもスキだったり。